テレビについて(96)「指原千夏」への期待と不安。
4月からは、新しい番組が始まる。
夜中はアニメを多く見てしまうが、ある時期から、バラエティーが増えてきた。
バラバラ大作戦
テレビ朝日のように、30分よりも短い枠で、さまざまな番組で、いろいろな出演者を試すようなことをして、そこで好評だったら、だんだん時間が浅くなっていく、というような方法をとっていたりもする。それは、とにかく人気アンケートを優先した「少年ジャンプ」方式のように思えたが、確かにその中で、面白い番組が生まれている感じはする。
それは、コロナ禍で、重症化リスクのある家族がいるから、より感染が怖く、外出を自粛している頃でもあったので、そうした番組への集中力が高く、余計に面白さを感じられたのかもしれなかったようで、最初は、すごく面白いと思っていたのに、視聴者は勝手なもので、なんとなく見なくなったり、他の番組を見ることが多くなっていった。
そのうちに「ハマスカ放送局」は終わってしまった。
最終回は見たけれど、それも身勝手な感慨かもしれないが、やっぱり寂しい気持ちになった。
時間は流れて、いろいろなものが変わっていく。そんな諸行無常の感覚にも近いのかもしれない。
テレビ東京
その一方で、ずっと以前から独自の企画をずっと続けてきた、という印象があるテレビ東京の深夜も、見逃せないような番組を放送することもある。
なんとも言えない不思議な、悪夢ともいい夢とも言えないような番組を見たこともあって、それは、次の日になったら、あれは本当に放送していたのだろうか、といった気持ちになることもある。
そして、自分が情報に弱いせいもあるのだけど、特にテレビ東京の深夜のバラエティーは突然始めるイメージがあって、最近では、ドキュメンタリーっぽく作るフィクションの、いわゆる「モキュメンタリー」が始まった(?)らしく、それは「TXQ FICTION」と名付けられ、最初はホラーが続いたが、そのうちに、それだけにとどまらない番組になっていて、現時点では、自分の中では見なくてはいけないと思えるプログラムになっている。
最新作は、「神木隆之介」で、どんな展開になるのかわからなかったけれど、子役のときからずっと演技力に定評があり、視聴者としても、どんな役にでもなれると思っている俳優を、モキュメンタリーの「主役」にして、見終わった後も、フィクションであるのは頭では理解できても、あれは本当だったのではないか、というような気持ちになれる番組だった。それは、俳優という仕事の凄さを再認識できるような時間でもあった。
この「TXQ FICTION」は、今度はいつ放送されるかどうかもわからず、だから、夜中のテレビ番組表を見るときに、微妙な緊張感がある時間が続いている。
「指原千夏」での指原莉乃の発言
バブルの頃の価値観を持ち続けてしまった印象はずっとあったのだけど、それが最悪な形で残っていたことが明るみになり、それ以降、坂道を降り続けているように見えるのがフジテレビだった。
それでも、そんな状況だから、これまでだったら制作されないかもしれないような番組を放送するかもしれない、という、これも視聴者の勝手な期待もあって、だから、深夜の番組に対しても、以前よりも気をつけるようになった。
その中の一つが「指原千夏」だった。
指原莉乃と、若槻千夏。
二人は、それぞれアイドルとグラビア出身で、どちらも頭の良さと、タフな精神で、毎日のように人気投票が行われ、そのランキングが激しく上下し、極端に言えば、先月までは人気があったのに、急に仕事がなくなっていくような、見る側にとっても、厳しさがわかる「芸能界」を生き抜いてきた、という印象のある二人だから、話すことはいくらでもあるのではないかと思えた。
東野幸治がゲストの回を見た。
どうしたら「売れる」のか、よくわからない迷いが、テレビを見ている人間にも伝わってくるような状況を経て、今では、まるで視聴者の一人としての感覚を、あれだけのベテランなのに保ち続けたまま、テレビ出演者の一人としてあり続けるような独特の存在になり、年齢を重ねてから「売れる」状況を見せてくれる人になった東野をゲストに呼ぶだけでも、期待は持てた。
その出演者のせいか、指原が、仕事に対して情熱を失っている、といった話を率直にしていて、何だか納得がいってしまった。
AKBという、人気投票を「総選挙」として、毎年のように行うという過酷な負荷をかけられていたアイドルグループに在籍していて、そのMVに数秒しか写っていない、というような自虐的な話をしながら、そうした「総選挙」というシステムを最大限に活用したイメージがあった。
特に、過去の交際が「発覚」(付き合うことを犯罪のように扱う、この世界の不思議さについては、2020年代になっても、まだ価値観が完全に更新されていないのだけど)し、「卒業」まではいかなくても、まるで「左遷」のように、できたばかりの福岡のグループに移籍し、そこで実績を積んで、初めての「総選挙1位」になる、という劇的な状況を実現させたのは、芸能界の中の出来事とはいっても、なんだか戦国武将もののような印象まであった。
そのせいか、指原を支えるファン層は、かなりの年配の男性が多いとされ、その後、その「総選挙」で3連覇するという、誰も真似ができないような実績を積んでから、アイドルグループを「卒業」した。
その後、やはり深夜のバラエティーの「指原の乱」など、意欲的な企画もしていたから、勝手に期待もしていたのだけど、ずっとそうした勢いのようなものを保つのは難しいのか、テレビで見かける指原の言葉も、現状維持の無難なものが多くなったように思えていた。
そうしたポジションを維持することだけでも、この世界ではすごいのかもしれないけれど、ある番組で、これからの不安を話した指原に対して、人気はいつか下がります。でも、いったんはとことん下がっても、仕方がない、というようなことを伝えた人がいて(もしかしたら占い師かもしれないけれど、すみません、記憶があいまいです)、それに納得していたような表情をしていたから、そのことで楽になって、それからは、もっと自分の好きに振る舞い、その上で人気が下がって、場合によっては芸能界を一時期離れるのではないか、と思っていたら、そういう変化もなく、今になっている。
だから、今は、仕事があんまり面白くない。といった発言を指原がしていたのだけど、なんとなく納得がいった。
「指原千夏」と「松本紳助」
この『指原千夏』という番組を見ていて、思い出したのは、古い話になり申し訳ないのだけど、「松本紳助」という深夜の番組だった。
松本人志と、島田紳助の二人のトークが中心となる形式で、ファミレスのようなセットで、ただ二人が話をしているだけで面白かった。当初は、もう仕事に疲れた、というか、飽きた、といったことを語っている島田紳助に対して、松本が、そんなことを言わないでほしい、といったトーンで始まったと記憶しているのだけど、この番組は2000年に始まって、それからタイトルなども変わって約6年続いた。
このトークの中から生まれたのがM-1と言われている。島田紳助によれば、面白いやつは最初から面白い。それは、本質的には教えられるものではない。だから、面白くないヤツは、いくら努力しても、面白くなるわけではない。それで、ずっと、この笑いの世界にいても、売れないと思う。もし、他の仕事を始めるのならば早い方がいいから、そういう人たちに諦めてもらうための大会のようなものができないか。当初の狙いは、そういうものだったようだ。
そういう話も含めて、この二人ではないとできないトークが続いていたから、特に始まってからの2〜3年は欠かさず視聴していた記憶がある。
その人にしかできなくて、しかも、才能もあって、長く芸能界を生き残ってきた人たちが、もちろんテレビ、という制約はあるにしても、なるべく率直に話し合うことで、ただトークをするだけで面白くなる、ということを見せてくれたのが「松本紳助」で、さらに、本当のところはわからないとしても、もう一度、やる気を出すために、島田紳助が、松本人志との番組を望んだのではないか、という噂があって、それもうなずけるような気配はあった。
「指原千夏」という番組が始まって、独自の方法で長く芸能界を生き残ってきた二人が話をする。しかも、そのうちの一人の指原が、仕事が面白くない、ということを、おそらくはかなり本音も含めて話をしているのを見て、あまり強引に重ね合わせすぎるのも、失礼とは思いながらも、「松本紳助」における島田紳助と、指原莉乃が重なった。
若槻千夏の芸能界に関する言葉
東野幸治がゲストのせいもあって、若槻と指原の二人は、ある程度以上、安心して、なるべく正直に話そうとしているように見えた。(もしかしたら、そうでもなくて、そういうストレートに話しているように見せることも、二人ならできそうだけど)。
その話題の流れの中で、かなり唐突に、島田紳助の話題が、若槻千夏から提供された。
島田紳助は、芸人としてスタートし、意識して司会(MC)の仕事を中心にし、その上、番組の企画に関しても尽力し、さらには、番組内でグループをつくって、音楽界にもデビューさせて成功する。そんなことまでしていたから、若槻は、そうした島田紳助のあり方を、自分もタレントの一人として見ていたからこそ、あんな人はいなかった。他に換えが効くような才能ではなかった、と振り返って、強調した上で、それでも、いなくなったら、その不在はウソのように素早く埋まっていった。それを見て、どんな人でも代わりがいるのが芸能界で、島田紳助のような存在でも、他の人が出てくるのだから、自分だって、代わりはいる。そんなふうに強く思うようになった、と語った。
若槻千夏は、2000年代の初頭から、10代からグラビアアイドルとして芸能界にいて、バラエティーにも出演していた。当時はブログが盛んな時代だったから、若槻も文章を書いていたが、それは、とても整理されていて、過度に読者と距離を縮めるわけでもなく、無理に話題を見つけてこようとしているようでもないのに、面白かった。表現力が正確だった印象がある。
途中で若槻は芸能界を休業し、結婚も出産も経験してから、30代で復帰すると、それまで休んでいたのが、ウソのように、またあちこちのバラエティーで姿を見るようになった。それも、年齢を重ねたから怖いものがない、というような感じでもなく、もちろん、若い女の子、という枠でもなく、自分の体験から、独特の視点を提供する人、というポジションを、あっという間に獲得したように見えた。
その若槻が若いころに、一緒にバラエティーに出演していた東野幸治が、若槻のエピソードトークが面白く、感心もしていたら、それが全部、うそ(作り話)だったのを知って、怖くもなった、ということを、笑いも含めて、この『若槻千夏』で語る。
それに対して、若槻は、その頃、グラビアアイドルとして、バラエティーに出演すると、今のように周囲の芸人は優しくなく、(休業も含めると、20年以上、芸能界を知っている強みも、若槻にはある)だから、グラビアの人間が集まって、バラエティー対策をしていたくらい、その現場は怖かった。だから、そのために編み出した知恵のようなもの、その作り話について、自分を守るためのものだった、といったような話をしていた。
昔の話を、ただ、その時代のことだけのように話すのではなく、現在とつなぎ、その違いを明らかにしながら述べていく若槻は、視聴者から見て、やはり才能を持っている人に見えた。そして、その上で、誰にでも代わりがいる、というふかん的な見立てができるのだから、活躍するのも当然だというような納得ができた。
指原莉乃の疲れ
指原莉乃は、今は仕事をしていて、特にMCの役割が、つまらない、と繰り返すように話をしていた印象だった。
それは、おそらくは始めた当初は、そんなことはないのだろうけれど、それを続けることによって、でも、人に興味がないことが自分で明らかになってきて、それで、飽きがきたのではないか、というようにも思えた。
そのことについては、ゲストの東野幸治が、東の上沼恵美子になると思っていたのに、という期待もこめて語っていたが、確かに、そうなる資質はあったのだろうと、視聴者ですら感じるのだけど、もしかしたら、かなり前から疲れていたかもしれない、などと視聴者としては思っていた。
指原は、アイドル時代に、すでにとんでもなく精神をすり減らしていたのだけど、いわゆるアドレナリンが大量に出ていた状態が続いて、本人もその疲労に気がつかないうちに卒業し、それから、しばらくは、大丈夫だった、ということなのだろうか。それとも、そんなありがちな推測を上回るタフさがあって、単に仕事に飽きてしまった、というベテランの悩みのようなものなのだろうか。
もしくは、誰もしないようなことがしたいという欲望が、指原自身にも無意識のレベルで強く持つタイプで、上沼恵美子のような(この人もすごいが)人になりたいし、なれるような思いはあったとしても、すでに、上沼恵美子が存在するのだから、オリジナルではないから、今ひとつ、モチベーションが上がらないのだろうか。
それとも、ただの視聴者の想像が及ばないような質の、成功者の倦怠のようなものなのだろうか。
とても個人的な希望を言えば、それほどファンでもない人間が言うのは、すでに失礼な領域に入っているのかもしれないが、芸能界の外で活動した方がいいのではないだろうか。そのあとの復帰などを考えると、かなり厳しい選択にもなるかもしれないが、どこかで学んでほしい気持ちもある。
すでにロンドンブーツ(当時)の田村淳が大学院まで修了しているから、さらには、他にも同じように学んでいる芸能人はいるとしても、できたら経済学のような、今とダイレクトに結びつくような学問ではなくて、哲学のような、まだ芸能人ではあまり進んでいっていない分野で学んでほしい、というのは、視聴者としての勝手な願望だが、そのことで、今では予想できないような展開を見せられるのではないかと、思ってしまったりもする。
今後の指原がどうすればいいのか。
そのあたりは、おそらくは、指原に対して、どこか似たものを感じている、指原よりも芸能界でも人生でも先輩である若槻が、この番組を通して、明らかにしてくれて、もしかしたら、指原のやる気のようなものを呼び覚ましてくれるのではないか。
そんな期待を抱かせてしまう組み合わせだと思う。
番組の中では、飲食店の個室でヒソヒソと話をする感じを、なるべく放送できたら、面白いかも、というような企画の狙いも語られていたのだけど、少なくとも、若槻には、指原を再生させる狙いもあるのではないか、と見えてしまった。
そうなると、「松本紳助」という番組に似てくるが、その時の二人は、ふっと芸能界の前線から姿を突然消したから、若槻と指原も、そこも踏襲するのではないかとも思ってしまう。ずっと、この世界に無理をして居続けるよりも、嫌になったらやめる、という気配も共有しているように思えるので、そこまでのことも考えてしまった。
「指原千夏」への不安と、それでも持ってしまう期待
番組を見ていて、最初に不安になったのが、AI「指原千夏」の存在だった。
この二人が聞けないこともゲストに尋ねることができる。というような謳い文句を目にした気がしたのだけど、まだ何回かしか見ていないのだけど、少なくとも、そんなことまで聞くんだ、というような驚きはなかった。
データを元にした比較的無難な質問。
申し訳ないのだけど、そんな印象をAI「指原千夏」に抱いてしまっている。
もしも、このAIを有効に活用するのであれば、スタッフにも出演者の二人にも負担がかかってしまうので難しいかもしれないけれど、このAIに対して、指原と若槻が、その育成(?)にもっと関与してほしい、という気持ちになる。
さらに、不安を通り越して、その画面を見るたびに不満に近い思いになるのが、生成AIを使った映像だった。
出演者が話をする。すると、その内容に合わせて、生成AIが作成したであろう映像が、画面の3分の1くらいを占めて流れ始める。
まだ数回しか見ていないけれど、少なくとも現時点では、この生成AIの映像が効果的だと個人的には、ほとんど思ったことはない。説明として必要なこともあるかもしれないが、そうした補助として映像になっていないこともある。申し訳ないけれど、その映像が流れると、そこに注意が向ってしまい、しかも、その映像が、その時点でのトークを上回る表現をしているわけではないので、単にトークの邪魔になっていると思うことが少なくない。
どこかの番組で、最近、バラエティーに出演するようになった人が、話す技術が上手い人としてあげていた名前が、若槻千夏だった。それは、内容にフィクションが多いかもしれないが、表情や声のトーンや身振り手振りも含めての技術だと思うので、その話す姿や声に全面的に集中しないと、おそらくその凄さは分かりにくいはずなのに、その機会を奪われているような気がする。
さらに、視聴者として、まだ未熟なところは多いとはいえ、トーク番組を見る楽しみの一つは、その会話を見聞きすることで、その話されている場面の情景が広がることがあることだ。それこそが話し手のうまさに、こちらの想像力を引き出される、という瞬間でもあるのだけど、それが、生成AIの映像によって、阻まれてしまう。
せっかく指原と若槻という話し手が揃っているのに、もったいない気持ちになる。
今の時点では、制作者側の方が、生成AIを使うことを楽しんでしまっていないだろうか。もしくは、その可能性を広げるために、番組の中で生成AIの試行錯誤の場所にしてしまっているのだろうか。
どちらにしても、「指原千夏」を見ていて思うのは、もっと、指原莉乃と若槻千夏という才能のポテンシャルを信じて、最大限に生かしてほしい、ということだった。この年齢で、これだけのキャリアを積んで、しかも、心身ともに致命的なダメージ(他の人であれば、そうなったはずの深刻なこともあったはずだけど)を受けずに芸能界を生き残ってきた二人の話は、まだ語られていない部分が多いはずなのだから、AIの時代になっていく分岐点の今だからこそ、人間のポテンシャルを見極める、という方向に舵を切ることはできないだろうか。
何も知らない素人の見方に過ぎないのは自覚もしているが、トークだけで番組を構成するとなると、現代であれば『あちこちオードリー』という存在が大きく、それを避けたくてAIの導入もしたのかもしれないが、『指原千夏』というタイトルにした以上、できたらゲストを呼ぶことは最低限にして、基本的には指原と若槻が二人で話すことで、当人たちですら、まだ本当には気が付いていなかった部分のトークにまで発展する可能性があると思う。
だから、繰り返しになるけれど、目指すとしたら『松本紳助』のアップデート版であるトーク番組で、そのためには、できたらAIの使用を控えてほしい、というのが勝手な希望だった。
もし、AIの映像を使うのであっても、気にならないくらい、画面の中の占有面積を小さくしてほしい。
などと、いろいろと視聴者のわがままな要望を並べたくなるのも、今の時代に指原莉乃と若槻千夏の二人で番組を始めた、という企画自体がすごいと思っている前提であるので、それを前提として、なんとか番組の構成自体を、再検討してほしい。
それが、視聴者としての勝手な期待です。
よろしくお願いします。
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