テレビについて(91)フィクションの「あたらしいかたち」かもしれない---テレビ東京『UFO山』。
特に前もって、予告をするわけでもなく、でも、それは自分が見通しているだけかもしれないが、深夜によくわからないテレビ番組に遭遇することがある。
完全に中年のおじさんが、小学生の中に混じって学校に通っているのだけど、周囲の誰もがそれを普通のこととして受け止めていて、それも、おじさんとしてではなく、少年として接しているのを、どうしても納得がいかない小学生の女子が、そのドラマ(?)の語り手だったはずなのだけど、その最終回は見逃した。
他にも、今となっては、本当に実在したのか、自分が夢を見たのを現実と混ぜているだけなのか、といった画面も少なくない。さらには、過去に、確かはっきりと見たはずのCMも、それが本当だったのか、自分の記憶を疑うようなときもある。
その一つが、テレビ東京で、夜中に放送されていたフェイクドキュメンタリー、と言われるジャンルの番組だった。
最初は、人を探している番組を夜中にやっていて、それが、フィクションにも関わらず、この人を知っている、といった情報が寄せられた、というようなインターネット上での噂を目にしていた。
それが、「イシナガキクエを探しています」という番組だった。
テレビ東京は、いつも他局がやらない企画をするイメージがある。
例えば、とても古い記憶だけど、「ダイヤモンドサッカー」という海外のサッカーの試合を放送してくれている唯一のテレビ局でもあったから、当時、サッカー部に所属する人間にとってはありがたい情報源でもあり、それ以降も他のテレビ局ではやらないことをやってくれる、という印象が続いていて、だから、今回も、その番組を見てもいないのに、新しいことをやっている、と思っていた。
(こうして、きちんと分析もしてくれている記事↑もあります)
「飯沼一家に謝罪します」
その後の、「飯沼一家に謝罪します」は、見ることができた。
昔放送した不思議な番組の謎について、それを解き明かそう、という構造が複雑に思えたのは、その番組も、その謎を探すための素材として画面に出ているクイズ番組なども、すべてがフィクションだったからだ。
それは、これまでただの視聴者としてだけど、それでもかなりの時間テレビを見てきたから、デジタル放送以前の画像にもなじみがあり、そうした平凡な視線から見ても、「飯沼一家に謝罪します」で目にした画像は、存在しなかった番組なのに、本当にあったように見えた。
だから、フィクションとわかっていても、まずは、その完成度について、感心するような思いになった。それは、他の人が指摘していたように、テレビの歴史があってこそ可能になったことだから、それ自体がある種のアートを見るときの感触と似ていた。
そして、その不思議な番組の謎については、ホラー的な要素によって、一応の結論のようなものも提示されていたのだけど、それは、十分とは言えず、でも、その余地のようなものが、より本当らしく思えた。
雑誌の片隅の気配
今は、あまりなくなったことだと思うが、道端などに雑誌が落ちていることがあった。そのあまり知らない雑誌の片隅に載っている記事が変で、でも、面白くて、ただ、その雑誌も、あまり目にしたことがないし、廃刊になってしまうことさえあった、と思う。
そうすると、その、自分の読んだ記事さえ、実在したのかどうか、自分の記憶さえ、怪しくなる。
そういう印象と、この「飯沼一家に謝罪します」を視聴したあとの気持ちは、似ていた、と思う。
こういう感じはまた見たいと思いながらも、夜中に視聴するには、ちょっと怖いのではないか、などという気持ちもあったし、次の、このフェイクドキュメンタリーの『魔法少女山田』が、いつ放送されるかについての情報は注意深くしていないとわからなかったから、その一部しか見られなかった。
でも、フィクションと最初に明らかにされているのに、本当かもしれない、と思えるような印象は残った。
それは、あいまいさと、リアルが混じっていて、自分の気持ちをどこに落ち着けたらいいかわからない気持ち悪さがあって、それは癖になることかもしれないと思った。
『UFO山』
情報に弱い自分にとっては、このテレビ東京のフェイクドキュメンタリーは、どうやら月曜日の深夜に放送するらしいと、やっとわかって、見たことがないようなタイトルのときは録画するようになった。
ただ、そうした新しい企画であっても、視聴者のぜいたくな要求とはしても、当たりハズレがあった。
そんな日々を重ねて、やっとフェイクドキュメンタリーの第4弾が放送される日程を知った。
タイトルは『UFO山』。
どちらかと言えばホラーは苦手なのだけど、最近の傾向としてタイトルがそっけないというか、ある意味では雑な方が、リアルに近く感じ、そのことでかえって想像力を発動させてくれて、その奥に怖さがあると感じさせてくれるのは、少しわかってきた気がしていたので、この10年前なら、ダサいと感じたタイトルは、今だと正解なのだと感じた。
放送日は、12月22日、23日、24日、25日。
クリスマスがらみの日に、こうした番組の日程を組むのは、それをわざわざ見ることにちょっとした喜びを持つような視聴者に向けての、放送予定だと思えた。
そして、自分もその一人だった。ただ、怖いのはやっぱり苦手なので、録画して、昼間に見ようとしていた。
事実と、ウソと、信じること
最初は、緊張感のない平和な場面から始まるが、その男性が、北海道の山で、市民登山家なのだけど、不可解な遭難をした、という話から始まる。
そして、その原因について、調査をする、というスタイルなのだけど、そこに直線的に向かっていくだけではなく、さまざまなわかりにくい謎などが出てきてしまい、それに対しても、そこから探究が始まるものの、4回にわたって放送されたが、解決するわけでもない。
気になったので、深夜の放送時間に、やっぱり見てしまったのだけど、時々、ぞくっと怖くなるのは、全体が見えないものの、部分が少しだけ姿を現したときだと思う。
さらには、UFOが目撃されたという山の近くの人たちに、何人もインタビューをしているが、あまりにも知らないことに、逆に、何か隠されているのではないか、などと考えてしまうのは、これまでのこのシリーズを見ていたから、勝手に作動してしまう勘ぐりに近いのかもしれないと思いつつも、その思考を止められない。
全部で4回。しかも、最終回は、クリスマスの深夜。
視聴者としては、最初に提示された遭難事件の原因が、やはりUFOが関係していることが、少しでも明かされるのではないか、というような予想をしていた。
だけど最後は、遭難事件で亡くなった人の息子さんという人物が、あの遭難はUFOのせいではないか、と信じていること自体が明らかになって、終わった。
UFOは影すら見えなかった。
人は見たいものを見る。信じることで、それは存在する。というようなことを示されたような気もして、でも、勝手に期待していた、もっと不気味な、外部に存在するものを見せてくれるわけではなかった。
ただ、人の気持ちの捉えられなさとか、本人でもどうしようもない心の動きなどが伝わってきた気もした。
だから、フェイクドキュメンタリーが、ホラーだけではなく、事実のように見せることで、より伝わることもあるかもしれない、といった可能性自体も示したから、それは、なんだかあたらしいことではないか、と思えた。
(まだ、こうしたまとめサイトが健在であること。そして、自分よりも、詳しく、もしくは深く考察している人がいることも知り、さらに、第2夜に登場した50年間、UFOを研究している人は、実在していると知って、あの説得力は本物だと感じたことを改めて振り返ることができた。あの人にとっては、UFOは存在しているのは、ただの事実のようだった。『UFO山』はフィクションとはいえ、遭難で亡くなった登山家の息子さんが、あのまま年齢を重ねれば、この研究家になる可能性はあるのでは、とも思う)。
あたらしいテレビ
2023年の1月1日にNHKで「あたらしいテレビ」という番組を放送した。
そこには、このテレビが衰退している状態の中でも、テレビ業界で働こうとしているだけではなく、何かあたらしい番組をつくろうとしている若手の製作者が出演していて、その話を聞いていて、全部ではないけれど、ごく一部であっても、テレビには、まだ希望があるのではないか、と思えたことは、覚えている。
民放各局の、当時はディレクターの3人が出ていて、それぞれ違う個性を持っているのは伝わってきたが、以前のテレビ関係者の「イケイケ」な感じがしないことに期待が持てた。
さらには、この中で、個人的には、もっとも注目していたのがテレビ東京のディレクター(当時)だった。
表現が難しいですが、という前置きで、人に吐き気を起こさせるような番組を作りたいと、冷静に語るテレビ東京の大森時生。
ただ、この頃では、この大森氏が、その意欲が、この3人の中ではもっともかたちになっていないように思えた。
それから何年か経って、その大森時生が、『UFO山』などのフェイクドキュメンタリーシリーズのプロデューサーだと知った。
たった3年かもしれないけれど、テレビ局という組織の中で、思い通りにいかないことの方が多そうなのに、こうして「人に吐き気を起こさせる」方向に確実に進んでいるのを感じると、それは、想像以上にすごいことではないかと思った。
このフェイクドキュメンタリーシリーズの公式YouTubeチャンネルを開設したことを知らせるサイトの中で、大森時生氏は、こうしたコメントを残している。
TX Q FICTIONは、嘘の形をした真実だと思っています。
期待というのは、勝手な願望なのだけど、それでも、少なくとも、このTX Q FICTIONの今後は、楽しみになってしまった。なるべく見逃さないように、というのが、恥ずかしいレベルかもしれないけれど、視聴者側としての最低限の努力だと思う。
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