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260620 インド、それから下ってオーストラリアへ

今日のプレイ・リストから 608
"India And On Down to Australia"
ローリー・アンダーソン
ヴォーカル:アノーニ
ギター:マーク・リボー
パーカッション:ケニー・ウォレセン
ベース:トニー・シェール
ヴィオラ:マーサ・ムーク、ナディア・シロタ
ヴァイオリン:ロブ・ムース
チェロ:ガブリエル・カベサス
オーケストラ:フィルハーモニー・ブルノ
指揮:デニス・ラッセル・デイヴィス


今朝の読売新聞に2026年度の京都賞が発表されていました。驚きました。思想・芸術部門はローリー・アンダーソンですよ。昔から髪を逆立てている近所のパンクな先輩が受賞したみたいに思われて、かなり嬉しい。

いや、冗談ではなく、ブライアン・イーノが2023年にヴェネツィア金獅子賞に選ばれたのと同じぐらいのインパクトがあります。40年ほど前は、メシアンやジョン・ケージ、クセナキス等、現代音楽の巨人が立て続けに受賞しています。京都賞はノーベル賞のように世界に認知された権威のある賞です。

  ☆

本作は2024年に発表された最新作"Amelia"から選びました。実在したアメリカの女性飛行士アメリア・イアハートを題材にしたアルバムです。世界で初めて大西洋を横断した女性飛行士の物語を22曲で綴っています。

イアハートは大学を断念せざるを得なかった母親に育てられました。子供のころから冒険心にあふれ、周囲から「変わり者」と思われていました。大学の時に飛行機と出会います。曲芸飛行機に同乗させてもらったとき、「飛べるようにならなくては」と強く思うようになりました。

翌月からレッスンを受け始めました。25歳でライセンスを取得し、世界で16番目の女性飛行士となります。29歳の時にリンドバーグが大西洋単独無着陸横断を成功させました。世の中は冒険飛行に熱狂し、アメリアは渦中の人となっていきます。34歳の時、女性初の大西洋単独横断飛行を成し遂げました。

  ☆

いくつか他にも女性初を果たした後、39歳でついに世界一周に挑戦します。アメリカ→アフリカ→インド→オーストラリア→アメリカと赤道沿いに地球を一周する予定でした。しかし、パプアニューギニアを飛び立った彼女の飛行機は、次の目的地、太平洋に浮かぶハウランド島には到着しませんでした。

曲はその手前、インド→オーストラリアの様子を歌います。最も苦しかった区間です。カラチからコルカタへ、眼下の景色は大きな地図を広げているようです。向かい風がにわかに砂嵐に変わったかと思うと、今度は日が照りつけます。空の天気はくるくると変わります。

インド洋を越えてダーウィンへ着いた時、カラチから11日もかかっていました。ダーウィンで彼女はパラシュートを飛行機から降ろしました。少しでも機体を軽くするためでしょう。いよいよ眼前に太平洋が広がります。外洋には不時着する場所はありません。

89年前の7月2日にラエの飛行場を飛び立ちました。しかし、未だに彼女のロッキード10Eエレクトラは見つかっていません。今、どのあたりを飛んでいるのでしょうか。飛ぶ女性は着地することが許されないんです。

  ☆

アンダーソンもずっと飛び続けています。40年以上前に"O Superman"を歌って飛び立ちました。「スーパーマン」という言葉が肥大する男性性を象徴しているのではないでしょうか。傲慢にふるまう今の「アメリカ」を見透かしていたように思えてなりません。

自分の声をヴォコーダーで処理し、テクノロジーを音楽に導入した女性の先駆者。そんな彼女に、よく京都賞を贈ってくれました。心からお祝いしたい。