なんのはなしですか。【長編小説】15
榎本が本部へ戻ると、宮下が待ち構えていた。
「そろそろかなと思いました」
「だからといってわざわざ入口で待ち構える必要はないだろう」
「榎本さんの足音が聞こえたもので」
「足音で分かるなんて宮下、大丈夫か?」
「心配しないでください。榎本さんだけなので。煩いくらいのすり足」
「あぁ、そうかよ」
宮下はふてぶてしく言う榎本を気にもとめず「これを」と1枚のメモを渡した。
「これは…No.874の情報か」
「はい。どうやらかなりヤバいことが起きている可能性があります」
「ヤバいこと…」
「はい。パンデミック、です」
「なんだと」榎本が目を見開き宮下を見る。
「No.874とはウイルスの事でした。もし原因がこれであるならば、現状、感染拡大が起こっていると考えられます」
そうだ、思い出した。榎本は口元に手を当てた。noteの街の創設初期、確かにそんなニュースが一時的に出回った。しかし、誤報として終息したはず。なぜ今更。そして奴らの原因は薬物ではなく、ウイルスによる症状の可能性があるだと。そうなれば薬物よりも広がるスピードは早い。一刻の猶予もない。下手をすれば、我々さえ感染している可能性がある。
「感染経路はなんだ。それと対策はあるのか」
「それについて情総部で得た情報をメモにまとめています」
榎本はもらったメモに目を通した。なるほど、妄想が主な症状というわけか。読み進めると榎本は目を疑った。
「感染後の症状発症者を見るだけで感染する!?」
そんなことがあってたまるか。そうなれば俺たちは…榎本は言葉を失った。
「はい。ただし潜伏期間があるようで発症までは至って正常のようです」
「なるほど、もし俺たちが感染しているとなれば発症前に片をつける必要があるわけか」
「そういうことになります」
「ウイルスの検査方法はあるのか?」
「特定の方法にて作られたスキャナーで相手の目をスキャンする必要があるようです」
「そのスキャナーはどこで手に入るんだ」
「スキャナーは…メモの情報に沿って作成してもらうしかありません」
「なに?作るだと?」眉を顰める榎本に、宮下は口を結んで頷く。
すると、榎本が何か思い出したように言った。
「そうなれば…あの課か。通称、NHK」
「え?NHK?なんの、はなしです、か?」
「違ーう!そんなわけあるか!」
「それはSWKですね!」
「なんのコントだよ!今はDAIGOしてる場合じゃない!それともお前…」榎本はまるで感染を疑うような眼差しで宮下を見る。
「すみません、ちょっと茶番をしました。で、NHKとは?」
「note発展課。通称、NHKだ」
「えー、そこは、note放送協会じゃないんですか〜?」宮下はまるでつまらなそうに語尾を伸ばして訊いた。
「いや、放送協会でもある」
「え?」宮下が困惑する。「どういう事ですか?」
「NHKはnote発展課であり、その中にnote放送協会も含まれている。教育放送も発展の一環という訳だ」
「なるほど、そこに行けばスキャナーが手に入るんですか?」
「可能性は高い。なんせnoteの発展のために尽力しているところだからな。この街を救うとなると協力は怠らんだろう」
「それは心強いですね」
「あとは、感染後のウイルス駆除についてだ」
「駆除の方法はタグの使用です。あの頃はまだ街の規模も小さかったので自己紹介を促し、ウイルスバスターの仕込まれた自己紹介タグを使用させることで、終息を図ったようです。他にもいくつか人気タグにバスターを仕込んだという記載もありました」
しかし、それにはまず先にスキャナーでウイルスの詳細を特定し、それにあったウイルスバスターを作成する必要があるとの事だった。
「それでも駆除できない場合の残る手段は初期化ということか」
「はい。その時はもう、見つけ次第消すだけです」
「なるほど、俺たちが思う存分暴れていいというわけか」
「そうなりますね」
二人は不敵な笑みを浮かべた。
次へ続く
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