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なんのはなしですか。【長編小説】2

「榎本さん、いったいどこへ…」宮下は訊いた。
「行けばわかる」
 榎本はポケットに手を突っ込んだまま、悶々と何かを考えているようだった。

 行き先はすぐに判明した。このnoteの表通りを直進し、どう見てもヤバイ店名である『月曜日をぶっ飛ばせ』(通称:げっぷ)を曲がった先にある場所。その場所こそが今回の目的地。noteの街の路地裏だ。

「ここで何するつもりですか」宮下は訊いた。
「決まってるだろ、聞き込みだ」
「でも、そうしたらこちらが秘密裏に探っていることがバレるんじゃないですか」
「そこはどうにか上手くやるんだよ」
「そんな、無茶な」宮下は肩を落とし、やや大袈裟に項垂れた。
「奴らは一見正常そうな見た目をしておきながら、話の端々によく分からない話をぶっ込んでくるという特徴がある。適当に世間話でもしながら、そういった奴らを炙り出せばいい。こっちには例のタグがあるだろう」榎本は「行った、行った」と言わんばかりに宮下を顎で使った。

 宮下は首裏をかきながら不満気に一人歩きだした。何か収穫があれば即座に連絡を取り、特に何もなければ午後十時をもって現地解散ということだった。あと二時間か。早く過ぎればいい。そう思いながら「ビールもらえますか」とカウンターに腰掛けた。
 面倒で嫌な時はビールに限る。届いたジョッキを片手に思いっきり喉元へと流し込んだ。「くぅーっ」と思わず声が漏れる。

 宮下がジョッキを置き辺りを軽く見回すと、カウンターの端に座っていた蒔倉まくらがこちらを見ていた。蒔倉はパーカーを着ており、首元にはヘッドフォンをかけている。服装から推測するに二十代だろうか。「どうも」と思わず軽く頭を下げると、蒔倉も用心深そうに、こちらを見ながら軽く頭を下げた。無理もない、変なオッサンが一人隣でビール片手に声をあげていれば引くに決まっている。
 しかし、宮下はこれも何かのチャンスだと思った。そうして迷わず蒔倉へ話しかけた。
「うるさくしちゃってごめんね」

「あ、いえ…」蒔倉は静かにグラスを手に取るとそれを一口飲みながら宮下から軽く視線を逸らした。

「君、よくここにくるの」宮下の目はしっかりと蒔倉を捉えていた。
 宮下がそう尋ねると蒔倉は少し考えた様子で答えた。
「いや、週に1〜2回くらいですかね…」
 蒔倉のグラスは空になろうとしていた。
「そうなんだ、これも何かの縁だし一杯奢るよ。何か飲みたいのある?」宮下がすかさず店員を呼ぶ。

「え、いいんですか。なんか、すみません」蒔倉は申し訳なさそうに恐縮しつつ店員へ注文した。「じゃあ、いつもので」
 店員とはだいぶ顔馴染みのようだ。運ばれてきたそれは黄色く、シュワシュワと炭酸が弾けている。
「いつもそれを飲んでるの」宮下が訊いた。
「そうですね、だいたいはこれですかね」
 これがブツに繋がる手掛かりかもしれない。宮下は思わず唾を呑んだ。

次へ続く


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