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読書感想「琥珀の夏 / 辻村深月」

タイトルの「夏」から、夏に読もうと数年積読していた本。
結局、夏より前に読んだ。カラッとした夏の暑さより、梅雨のじとじとした空気に似合う小説だった。

かつてカルトだと批判を浴びた<ミライの学校>の敷地跡で少女の白骨遺体が見つかった。
弁護士の法子はミカちゃんではないかと胸騒ぎを覚える。

学校での居心地の悪さを<ミライの学校>での夏の合宿では感じなかったノリコ。合宿で出会ったミカちゃんに会いたくて、次の年も合宿へ参加する。
ほんの一時的な友情は、私も身に覚えがあり、共感というより小恥ずかしい感覚。イベントでは仲が良かったけれど、他で会うとうまく仲良く出来ない、みたいな。
辻村深月の小説が好きな読者は、ノリコのような学生時代を過ごした人が多いんじゃないかな……。私もそうだけれど。辻村深月さんの小説は、自分の過去を思い出したり、誰かのことを想像したりして読むことが多い。『琥珀の夏』は特に感傷的になりながら読んじゃった。うまく生きたいのに、閉鎖的な空間でもがくような、あの頃の気持ちを抱きながら、読み進める。

本の帯で書かれたあらすじを読んでから、本編を読むと、あれ、と思う。
<ミライの学校>がとても魅力的にみえるから。カルト集団、って書いてあったけれど、そんなことないな…と。小学生のノリコが体験する非日常な合宿にわくわくしてしまう。
前半はどきどきしながら、中盤になって<ミライの学校>への違和感に気付き、後半では一気読み。
報道されるような「事件」もこんな日常のちょっとしたズレから起こることなんだろうと思い出させる。

『かがみの孤城』のようなフィクションを想像していた。
『琥珀の夏』は現実に近いところにありそう。その分、クライマックスが苦しかった。こちらの方が、ひりひりする。

『かがみの孤城』の主人公は中学1年生の13歳。
『琥珀の夏』のノリコは小学4年生のころに夏合宿へ参加し、40歳になったころに事件が発覚する。夏合宿に参加するこどもの視点と、大人になってからの視点で物語が進む。
現在の私の年齢は、こどものノリコより、大人のノリコの方が近い。私にはこどもがいないけれど、大人側からの目線からこどもを見るようになっていることに気付く。読み終わったとき、自分の地点を冷静に考える小説だった。ぜひ、心をかき乱されてほしい。

【琥珀の夏】
作 者:辻村深月
出版社:文藝春秋
発行年:2021年