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なんのはなしですか── Paradigm Shift《その103》 ボンタンアメ🍬

畳の上に、ボンタンアメを置いてみた。

すると不思議なことに、
テーブルの上よりも、ずっと懐かしく見えた。

同じ箱なのに。
同じ黄色なのに。

背景が変わるだけで、
記憶の温度まで変わる気がした。

ボンタンアメと畳

以前、山手線のラッピング広告で見かけた
「ボンタンアメ生誕100年」のことを、
ふと思い出す。

そのとき書いた記事を読み返すと、
緑の吊り革が、畳の縁に見えていたのかもしれない。

あのときは、
“昔から知っているのに、最近は触れていないもの”
として、どこか気になる存在だった。

けれど、その後もなぜか食べることはなかった。

それがある日、駅ナカのコンビニで、
静かに並んでいるのを見つけた。
お弁当🍱を眺めたあとに🤣)

気づけば、手に取っていた。

たぶん買ったのは味ではなく、
記憶のほうだったのだと思う。

パッケージは、
ほとんど変わっていないように見える。
濃紺に赤い枠、黄色い果実。

ただ一行だけ、少しだけ時間が滲んでいた。

「オブラートは はがさず食べられます。」

そういえば、オブラートという言葉自体を、
日常で聞くことが少なくなった気がする。

粉薬を包んでいた、薄い膜。
“食べられる紙”のような存在。

かつては説明されなくても通じていたものが、
いまは説明を必要とする文化になっている。

それでもボンタンアメは、変わらずそこにある。
そのこと自体が、少し安心だった。

毎日食べていたわけでもない。
特別な思い出があるわけでもない。

それでもあの色と形は、
どこか深い場所に保存されていた。

潜在意識というより、
もう少し静かな場所に。

そしてある日、広告という偶然が、
その引き出しをそっと開いた。

懐かしさとは、
「過去に多く触れたもの」だけではなく、

“ずっとそこに在り続けていたもの”にも、
そっと宿るのかもしれない。

だから畳の上のボンタンアメは、
味というよりも先に、時間を思い出させる。

……というより、
時間そのものを、
少しだけ舐めているような気がした。

……なんのはなしですか🍬

【FIN】

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