⚪️企画作品|未来人
雨水を飲むのは良くありません。
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「雨水は良くないよ」と古着屋の未来人が言った。
それは単に推奨されないというだけでなく、極めて不衛生で、場合によっては命の危険さえあると言って良い。
てか、古着屋の未来人て何?
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未来人が未来に帰れず困っている。
電話ボックスがなくなってしまったから。そう。公衆電話の。あれがタイムマシンだったのだ。
タイムマシン機能のスマホへの移植が思うように進まず、未来人の帰宅困難者が増えているらしい。
こういうことを大手メディアは(いつも決まって必ず)報道しないのだ。
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夕立だ。
弱酸性の雨が降る。
濾過する前に飲んじゃダメ。
みんな。地下街に避難して。
こっちこっち。
はい。ここがぼくの古着屋です。
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未来人の古着は超新しい。
見たことも聞いたこともないような新素材で出来ている。
例えば、宇宙線を回収してエネルギーに変換し、それを再利用するナノテク装置を組み込むことで体温調節を可能にする生地とか。
だが、この古着の新しさが「生地」にあるのか「装置」にあるのか、まあそのどっちにもあるのだろうけれど、正確に(つまり概念的に)掴むことが容易ではない。それこそが新しさなのかもしれない。
なんちゃって。
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ややこしい奴!
それは大抵未来人だ。
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無論ぼくにもその自覚はある。おかげで未来人同士はそりが合わない。
ただ、噛み合っているように見えて何となく噛み合っていなかったり、まるっきり食い違っているように見えて実はぴたりと一致していたり、単純にそり云々では測り知れない部分があるのも確かだ。
ごく稀に、本当に稀なことだけれど、君ら過去人たちが羨ましくなる時もあるよ。本当にたまにね。
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未来人は二種類に分けられる。
帰りたい未来人か、帰りたくない未来人か。
これは「旅人か」「定住者か」と言い換えることもできるのだが、この「旅人呼び」ほど帰りたい未来人の特性を示す言葉もまたとあるまい。彼らはみな無駄にポエティックだ。
一方「帰りたくない未来人」は現実主義者だ。彼らはせっせと働いて、貯金をし、あるいは利殖して、この時代に骨を埋めようとしている。
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徹底した個人主義(あるいは利己主義)のように見えるぼくら未来人ではあるけれど、意外な共通点というか、互いに共感できる部分も多い。
ひとつは、雨が嫌いだということ。ぼくらは君たち過去人と違って、絶対に雨水は飲まない。君らよくあんなもの飲めるね? やめときな?
そしてもうひとつ。ぼくらは眠りをとても大事にする。何故ならぼくらはほんの少し、寝相が悪いからだ。寝てから起きるまでに、大体ぐるりと一回転する。一周というのかな。寝返りじゃないよ?
腰のあたりを中心に、磁石の針みたいに、ぐるりと、まあ大抵は一晩に一周だね。だからとても広いベッドなり布団が必要なんだ。
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今年、未来人の間で最も売れた商品が「リングピロー」だということが分かった。
それは指輪を置くためのものではない。直径200cmの環状の枕である。これが大いに売れた。旅人にも、無論、定住者にも。
このリングピロー、商品名を「輪(わ)!ふっかふか!」という。
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それにしても、未来人はどうして我々現代人が雨水を飲んでいると思い込んでいるのだろう? それが最大の謎である。
(おわり)
🟡1380文字

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