✴︎✴︎✴︎の冒険〜第2話 カッコいいものには須く憧れる〜
(前回のおはなし)
僕が躊躇っていたのもあるが
そもそも、植物はしゃべらないものである
だまっていた
良い声は、ほかの木の方に手を当てて
つぎつぎに話しかけていく
すこし、遠くに差し掛かったころ…
ねぇ…!
あなたの黄緑色の棘、とっても素敵ね!
近くの枝に
コップごと黒いトゲトゲが座っていた
え?え??どうやって登って来たのだろう?
と思うと
夥しい糸のようなものがにゅーっと伸びて来て
私はウニのあおい うみ、よろしくね!
と僕の棘と握手した
僕は…
ダンマリするつもりだったのだが
その自由自在に動く糸が
羨ましくて堪らなくなってつい喋ってしまった
僕は栗のイガ… その糸…
あ…?この糸??…っつつ わぁ!!
と、黒いトゲトゲが自由自在な糸を一本
枝から外したかと思うと、
たちまち、バランスを崩し……
またヒョイっと枝を鉄棒のように掴んで
ぐるりと
一回転
お見事!!コップの水も
遠心力で溢れなかった…ではなくて
へへ…危なかったー
この青い糸、なかなかいいでしょう
うみは、何か勘違いしているようだが
自信満々に笑って糸の自慢をしている
彼女は、誰よりも輝いていた
僕が思っていることとは…違うけど
笑っていたら、それで良いのかもね
いつもならそんなことをする筈が無いのに
何故か僕はうみに自由自在な糸のことを
気づいたら聞いていた
そうじゃなくて、その、自由に動く透明な糸の方だよ それは一体なんなのさ
あちゃー、聞き方が悪い
自己嫌悪 僕はいつもそう
イガイガしてしまう、わけだ
でもね、うみはニコニコって笑って
言ったんだ
あ!こっちの方だったか!
これはね、管足って言うの 私の大事な移動手段だよ あ、槍ヶ岳さんが呼んでる
またね〜!!
うみは、さっきのように
2本の管足で枝を鉄棒みたいに掴むと
よーーーーーし……と
管足をブランコのくさりのようにして
身体をゆっさゆっさと揺らしていき
空に届くほど
揺れが大きくなったところで
えいっ!!っと
大きく回り始めた
1回転、2回転、3回転
ぶぅーーーーーん
ぶぅーーーーーんと
大きく弧を描いたと思うと
身体を捻りながら
落ちていき
すとん…!!
え?え??
僕はいま、何を見ているんだろう
一瞬でうみとコップは
地面に降りていたが
それはまるで、スローモーションのように
ゆっくりと
ただ美しい景色だった
しゅうぅぅううう………
静かに
砂煙が引いていくと
まるでそこに、どっしりと最初から
根付いていた大木のように
コップに入ったうみが、
そこにはいた
かっっっつ かっつつけぇ……
当然、遠心力で水は一滴も溢れていなかった
じゃあね〜!また👋
と言いながら、コップの中から蜘蛛のように
管足を出しながら
うみは歩き始めた
聞きたいこと、話したいことが
まだ山ほどあった
いつもなら…
いつもなら…
話すのを諦める筈なのに…
あの…
あの!!ぼくも変われるかな!!!
なんて大きな声で叫んだけど…
あぁ…もう、コップの大きさが
ドングリみたいに小さいよ…
だけど
蜘蛛みたいな姿のうみには
声が届いたみたいで
何本か管足を大きく上に伸ばして
👍をしてくれた
夕日がうみを照らし
よく分からない形の影が長く伸びていた
最高にカッコいいだろ?
いつの間にか僕の隣に槍ヶ岳さんがいた
あ、あなたもです
君の中身はまだ熟していない
2週間後にまた来る
と、槍ヶ岳さんはいい声で言い残すと
僕の針に軽く触れたあと
くるくるくるっ!
とすっ!
とやはり、無駄のない身のこなしで
何回か空中で回転しながら
着地し
すぐにうみに追いついて
水筒に入れるか、一瞬迷ったあと
手を繋いで
うみと一緒にゆっくりと歩き始めた
おおきなくりの〜きのしたで〜
♤あ〜な〜た〜と
♧わ〜た〜し〜
♤♧な〜か〜よ〜く〜遊びましょう
おおきなくりの〜きのしたで〜
夕日に2人の歌声は溶けてき、
2人分のさらによく分からない形の影を
地面に落としていた
僕は何だか素敵な2人に出会えた
夢見たいな今日の日が
ずっと消えなかったらいいのにな、と
遠ざかる2人の影をずっと見送りながら…
いつの間にか棘にまかれている
糸を愛しく
思っていた
to be continued…
(本文 1655文字)
うみのお話し
