テレパシー事件簿 その30 隔離病棟の実験台
隔離室で全身拘束帯を装着させる意味も分からない
が、
排泄を十日以上、機会を与えないというのも異常を極めていた。
全身拘束帯は、1週間は全く外されることがなく、サイズも小さめのものであった。
パーツが少しずつ取れていったものの、その間に
診察に来た医師は一人もいなかった。
本来ならば、拘束は重大な人権侵害なので、医師による毎日の診察が必要であるという話だ。
また、「病院脱走の夢まやかし」によって、本当に履かされた自身の名前が油性マジックで書かれたストッキングにより、エレベーター内で医師に見つかって酷い目に遭う、夢とは思えない幻術を見させられた。
幻術はそれだけではなかった。
「トレーニングルームのまやかし」
「陸の孤島の塔のまやかし」
「大講堂のまやかし」
「幽霊のまやかし」
「大河川の川下りのまやかし」
「深夜鳴り響くサイレンによる緊急拘束のまやかし」
「警察車両の腹式呼吸レーダーのまやかし」
などがあった。
なかでも、かつて実家に襲撃に来た
「隣室の密偵のまやかし」は
アセンブラー式の電気工具を組み立てている様子が、まことしやかに脳内にビジョンと音声情報をもって感覚に現れた。
