コンテンツにスキップ

ポイ捨て

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
「ポイ捨て」などと呼ばれて犯罪意識が低い場合があるが、不法投棄に該当する犯罪行為にして他人に費用を押し付ける深刻な問題であるため、被害の大きな沿道などでは警告する看板などが各所に掲出されている。

ポイ捨て(ポイすて)とは、ごみの不適切な処理方法のひとつで、対象物が小さい場合の俗称である。不適切な処理で大きなごみを出す場合は、不法投棄とも呼ばれる。日本国内外でもポイ捨ての半数以上を喫煙者によるたばこの吸い殻が占めているとの指摘がある[1][2]。

たばこのポイ捨てを行う者の多くは喫煙所が付近にあってもポイ捨てをし、対策としては罰金が有効だとする指摘があり[1]、シンガポール[注 1]やタイ王国では罰金刑を課している。日本においても各種法令に抵触する違法行為(廃棄物の処理及び清掃に関する法律、軽犯罪法、道路交通法など)であるが[3]、ポイ捨てそのものを取り締まることを主目的とした法律がないため、ポイ捨てを行う者らに厳しい刑事罰・前科を与える立法が求められている[2]。また、ごみなどの路上投棄が多い地域生活では、ポイ捨てを禁止する条例を定めた自治体がある[1]。

WHOは2022年、たばこ製品を地球上で最もポイ捨てされる品目だと指摘し、各国にフィルターの禁止の検討と、清掃費用を生産者に負担させる拡大生産者責任の法制化を促した[4]。EUは使い捨てプラスチック指令で加盟国にこの制度の導入を義務づけている[5]。日本では、札幌市が条例(過料1,000円)の施行後の定点調査で路上の散乱物が約70〜90%減少したと報告しており[6]、喫煙所の撤去後に周辺のたばこごみが増え、設置後に減ったとする調査もある[7][8]。

概要

[編集]
植え込みに捨てられたペットボトル
植え込みに捨てられたペットボトル
側溝にポイ捨てされた紙巻きたばこの吸殻
側溝にポイ捨てされた紙巻きたばこの吸殻
啓蒙キャンペーン (江東区)
啓蒙キャンペーン (江東区)

ポイ捨てされるものとしては、チューインガム、たばこの吸殻、空き缶、ペットボトルやレジ袋などの使い捨て容器類、包装紙や新聞・雑誌・集合住宅の郵便受けにポスティングされるチラシなどの紙類・食べ残した食品などがある。

「ポイ捨て」と軽い言葉で表現される傾向があるが、火災や漂流・漂着ごみ、野生動物の殺傷など他の社会問題の要因ともなっている。集合住宅にポスティングされるチラシの散乱においては、ポスティングそのものを諸悪の根源とするポイ捨てを弁護するような声[要出典][誰?]がある。

対象物がたばこの吸殻のように小さいものでも、海のごみのうち約4分の1がたばこの吸殻で最多であったように海洋汚染の原因ともなる[9]。

たばこの吸い殻のポイ捨て

[編集]

WHOは2022年5月31日の世界禁煙デーに報告書『Tobacco: Poisoning our planet』を公表し、その公表に際して、たばこ製品を「地球上で最もポイ捨てされる品目」とし、毎年およそ4.5兆本のフィルターが海や河川、歩道、土壌を汚染していると述べた[4]。

規模

[編集]

オーシャン・コンサーバンシー(英語版)の国際海岸クリーンアップ(ICC)によれば、世界で回収された吸い殻は2025年に1,197,920本でプラスチック飲料ボトルに次ぐ第2位、1986年から2025年までの40年間の累計では65,632,086本で第1位である[10]。米国のNPOキープ・アメリカ・ビューティフル(英語版)の「2020 National Litter Study」は、米国の道路・水辺の吸い殻を約97億本と推計し、全ポイ捨てごみの19.6%を占める最多品目とし、道路沿いの吸い殻は2009年調査比で69.3%減少したとしている。同報告書は資金提供者にたばこ会社を含むことを明記している[11]。

EUが2019年に採択した使い捨てプラスチック指令の前文は、プラスチックを含むたばこ製品のフィルターを「EUの海岸で2番目に多く見つかる使い捨てプラスチック品目」と位置づけ[5]、欧州委員会は吸い殻を含む使い捨てプラスチック10品目と漁具がEUの海洋ごみ全体の70%を占めるとしている[12]。

日本では、千葉市が2010年12月の条例改正に際し「散乱ごみの約7割が煙草の吸殻である」と説明している[13]。株式会社ピリカが東京都江戸川区の小岩駅周辺で2022年7月から12月にかけて8回行ったごみ分布調査では、ポイ捨てごみ累計5,787個のうちたばこが2,370個と約4割を占めた[8]。また環境省は2019年3月の衆議院環境委員会で、漂着したプラスチックごみのモニタリング調査(2016年度)では、個数ベースではペットボトル、重量・容積ベースでは漁網・ロープの割合が最も高く、重量ベースではライターやたばこのフィルターなども高い割合を占めると答弁している[14]。

環境への影響

[編集]

たばこのフィルターは酢酸セルロースというプラスチックの一種でできており[11]、Novotnyらは2009年の論文で、捨てられた吸い殻は非生分解性のごみであり、国際的な海岸清掃で毎年最も多く回収される品目であると述べた[15]。

Slaughterらが2011年に『Tobacco Control』誌で報告した急性魚毒性試験では、喫煙後の吸い殻の浸出液の半数致死濃度(LC50)が海水魚・淡水魚のいずれでも約1本/Lで、未喫煙のフィルターだけでも5.1〜13.5本/Lの毒性が確認された[16]。Greenらの2019年の温室実験では、ペレニアルライグラスとシロツメクサをフィルターに21日間さらすと発芽率と茎長が有意に低下した[17]。Belzaguiらの2021年の研究では、喫煙後のフィルター1本が1日およそ100本の微細繊維を放出し、水環境に流入し得る微細繊維(マイクロプラスチックの一形態)は年間およそ30万トンと概算された[18]。

火災

[編集]

総務省消防庁の『令和7年版 消防白書』によれば、2024年(令和6年)の出火原因別で最も多いのは「たばこ」の3,058件(全火災の8.2%)で、経過別では「不適当なところに置く」が1,903件と最多である[19]。内訳は建物火災1,721件、車両火災138件、林野火災33件、その他火災1,165件で、損害額は約33億6,691万円であった[20]。

東京消防庁は、管内のたばこ火災が2022年に571件(速報値)発生して全火災の約15%を占めたとし、近年は「建物以外で火種が消えていない吸い殻の投げ捨てにより、出火する火災の割合が増加している」と注意喚起している[21]。

日本における刑罰・罰則

[編集]

条例違反

[編集]

たばこ問題に関連し、歩きたばこ禁止条例とともにポイ捨て禁止条例が制定される自治体もあり、ポイ捨て行為に罰則を課している。

条例違反の摘発事例

[編集]

道路交通法違反

[編集]

交通の障害を来たす行為については道路交通法により取り締まりが行われる[23]。

  • 道路交通法第76条 左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。
    • 第4項 何人も、次の各号に掲げる行為は、してはならない。
      • 第4号 石、ガラスびん、金属片その他道路上の人若しくは車両等を損傷するおそれのある物件を投げ、又は発射すること。
      • 第5号 前号に掲げるもののほか、道路において進行中の車両等から物件を投げること。

道路交通法違反の摘発事例

[編集]

軽犯罪法違反

[編集]

ポイ捨ては軽犯罪法違反により罰せられる[23]。たばこの吸殻などを側溝や路上へ投棄することは、軽犯罪法違反になる。

  • 軽犯罪法第1条 左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。
    • 第25号 川、みぞその他の水路の流通を妨げるような行為をした者
    • 第27号 公共の利益に反してみだりにごみ、鳥獣の死体その他の汚物又は廃物を棄てた者

廃棄物の処理及び清掃に関する法律違反

[編集]

廃棄物の処理及び清掃に関する法律はポイ捨て行為を罰する法律である[23]。

  • 廃棄物の処理及び清掃に関する法律第16条 何人も、みだりに廃棄物を捨ててはならない。
  • 廃棄物の処理及び清掃に関する法律第25条
    • 第1項 次の各号のいずれかに該当する者は、五年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
      • 第14号 第十六条の規定に違反して、廃棄物を捨てた者
    • 第2項 前項第十二号、第十四号及び第十五号の罪の未遂は、罰する。

日本における対策

[編集]

条例による規制

[編集]

千代田区は2002年に「安全で快適な千代田区の生活環境の整備に関する条例」を公布し、区長が指定する路上禁煙地区での喫煙と吸い殻を捨てる行為を禁止して違反者を2万円以下の過料に処するとした[24]。条例の過料は地方自治法14条3項が定める上限(5万円以下)の範囲で各自治体が定める[25]。厚生労働省健康局長は2018年7月の参議院厚生労働委員会で、路上喫煙を何らかの形で規制する条例のある市町村は2017年5月時点で260と答弁した[26]。一方、大見広規らが2017年に全市町村のウェブサイトから条例を収集した調査では、1,741市町村のうち107(6.1%)に路上喫煙を規制する条例があり、その多くは「環境美化」を目的とし、携帯灰皿の使用などを規制の除外条件としていたと報告されている[27]。

千葉市は2010年12月の条例改正で、散乱ごみの約7割が吸い殻であること(前述)を理由に取締り地区を路上喫煙等禁止地区の範囲と原則一致させ、ポイ捨ての罰則を警察への告発を経る罰金(行政刑罰)から巡視員が現認次第過料を科す直接罰(屋外の公共の場所でのポイ捨てに2,000円)に改め、2011年7月から過料処分を実施している。同市は公共の場所の灰皿が路上喫煙を誘発するとして店舗などに撤去を依頼し、2026年10月からはJR千葉駅東口地区へ取締り地区を広げる予定である[13]。札幌市環境局は2025年12月、ポイ捨て等防止条例(過料1,000円)の施行後に喫煙制限区域内の定点調査で路上喫煙者数が約90%、散乱物数が約70〜90%減少したと報告している(過料の適用件数は年度により増減があるとする)[6]。大阪市の路上喫煙の防止に関する条例(2007年4月施行・過料1,000円)は目的に「吸い殻の投げ捨ての原因となる路上喫煙の防止」を掲げ、2025年1月27日からは市が管理する道路等の全域が禁止区域となった[28]。

啓発と清掃活動

[編集]

JTは2004年から全国の祭事等で市民参加型の清掃活動「ひろえば街が好きになる運動」を行っており、同社の公式サイトによれば2025年12月までの累計参加者は約211万人である[29]。NPO法人グリーンバードは「ポイ捨てのない社会をつくる」ことを目的に掲げ、2003年からごみ拾い活動を続けている[30]。株式会社ピリカのごみ分布調査システム「タカノメ」は、喫煙所の設置の前後で路上のたばこごみの数を比較する調査に用いられている[8]。

自治体では、北区が2008年制定の条例で区内全域の歩きたばことポイ捨てを禁止し、駅周辺の路上喫煙禁止地区で巡回指導員が違反者に声かけを行い、希望者に啓発シール等を配布している。過料の規定は「重点地区」の指定時に限られ、2026年8月時点で指定地区はなく、過料は科されていない[31]。世田谷区は2018年に定めた「世田谷区たばこルール」で、罰則による規制ではなく喫煙者と非喫煙者の相互理解によるマナー向上を掲げ、2026年7月1日に吸い殻等のポイ捨て禁止の項目を追加した[32]。

通報と注意をめぐる問題

[編集]

船橋市は、路上喫煙者やポイ捨て行為者が目の前にいた場合について、生活環境巡視員の現認を前提とするため市に通報されても違反者への直接的な対応はできないが、頻繁に繰り返される状況であれば対策を検討すると案内している[33]。北区は罰則の導入要望に対し、巡回指導とともに過料の徴収業務を行う場合には費用面で課題があると回答している[31]。大田区は、路面シートやステッカー、ポスターによる注意喚起を行っており、近隣の歩きたばこやポイ捨てに困っている人にはステッカーとポスターを提供すると案内している[34]。横浜市は、健康増進法が屋外を喫煙禁止の対象としていないため喫煙禁止地区を除く駅周辺の路上喫煙に法的な規制・指導はできないが、情報が寄せられた場合は配慮を求める掲示物の設置などで注意喚起を行うと案内している[35]。

私道や私有地については、大田区が私有地内に設置された灰皿には法的規制がなく区に撤去や注意指導の権限はないと明記し[34]、千代田区も私道や敷地内での喫煙やポイ捨てには過料を科すことができないと説明している[36]。歩きたばこによる被害の法的責任については、大阪弁護士会の解説が、通行人の衣服に穴をあけた場合には喫煙者の過失による民事上の不法行為が成立して修理費用を請求できるが、故意がなければ器物損壊罪は原則として成立せず、通行人がけがをした場合には過失傷害罪などの刑事責任を問われる可能性があると述べている[37]。

政策提案と議論

[編集]

WHOは2022年5月、報告書『Tobacco: Poisoning our planet』の公表に際して、フィルターに健康上の便益がある証拠はないとして、政策決定者にフィルターを使い捨てプラスチックとして扱い禁止を検討するよう求め、清掃費用が納税者の負担になっているとして、各国・都市に拡大生産者責任の法制化を促した[4]。Novotnyらは2009年の論文で、対策の選択肢として生分解性フィルターの開発、罰則強化、フィルターへのデポジット、灰皿の増設、啓発を挙げ、環境影響を根拠にフィルター付きたばこの販売禁止も可能性があるとした[15]。

健康増進法改正案を審議した2018年6月8日の衆議院本会議では、吉田統彦議員が車窓から灰や吸い殻を捨てる運転者を道路交通法も含めて厳罰にすべきと提案したのに対し、加藤勝信厚生労働大臣は、改正法案は望まない受動喫煙の防止を目的とするものであり、たばこのポイ捨てという行為は規制の対象としていないと答弁した[38]。同年6月13日の衆議院厚生労働委員会では船橋利実議員が、屋内原則禁煙が進めば屋外で喫煙する人が増え、歩きたばこによるやけどやポイ捨てによる環境汚染が懸念されるとして、公衆喫煙所などの屋外分煙施設の整備推進を求めた[39]。加藤厚労相は同年7月10日の参議院厚生労働委員会で、配慮義務規定の周知とともに、自治体が取り組む屋外の分煙施設の整備を地方財政措置で支援すると答弁した[40]。

喫煙所の設置・撤去とポイ捨ての関係については、株式会社ピリカがJTの協力を得て2022年に埼玉県所沢市の所沢駅西口で行った調査では、指定喫煙所の撤去後に駅周辺の路上のたばこごみが1回平均64.0個から121.5個に増え[7]、東京都江戸川区の小岩駅周辺では2022年11月の公衆喫煙所の供用開始後にたばこごみが供用開始前の約79%の水準に減少した[8]。また、大見らは、全国的な屋内喫煙規制がない中では環境美化を目的とする路上喫煙規制条例は喫煙者の行動を変えることができず、受動喫煙から住民を守れないと考察している[27]。

各国の対応

[編集]

WHOは2022年5月31日の報告書『Tobacco: Poisoning our planet』の公表に際して、清掃費用を納税者でなくたばこ業界に負担させる拡大生産者責任の立法例としてフランス・スペイン・サンフランシスコを挙げ、各国・都市にこれに倣うよう促した[4]。

欧州

[編集]

欧州議会と理事会が2019年6月5日に採択したEUの使い捨てプラスチック指令(EU)2019/904は、第7条で2021年7月3日からフィルター付きたばこ製品の包装または製品自体にプラスチック含有とポイ捨ての環境影響を知らせる表示を、第8条で生産者に啓発費・清掃費とごみ容器の設置などを含み得る公共回収費を負担させる拡大生産者責任制度を2023年1月5日までに設けることを、加盟国に義務づけた[5]。

フランスでは廃棄物の投棄・放置は定額罰金の対象で、政府の行政情報サイトService-Public.frによれば45日以内の支払いで135ユーロである[41]。Alcomeによれば、2020年1月30日に議会が採択した循環経済法(loi AGEC)の下で、フィルター付きたばこ製品の拡大生産者責任制度が設けられた[42]。2021年7月28日付アレテは同制度のエコ団体としてAlcomeを6年間認可し、同団体は市町村・カフェ・レストラン・たばこ販売店などに吸い殻回収器具を無償で提供する[43]。Alcomeは2026年に不適切に捨てられる吸い殻を40%削減することを目標に掲げ[42]、その活動報告によれば、2025年末で人口の44.1%に当たる市町村が契約する一方、425市町村(人口の8.96%)は契約を拒否している[44]。スペインの2022年法律第7号(廃棄物および汚染土壌法)第60条は、たばこ製品の拡大生産者責任制度を2023年1月6日までに設けるよう政府に義務づけ、生産者が啓発費・清掃費に加えて公共回収費を負担すると定める[45]。

イギリスの1990年環境保護法第87条は公共の場所へのポイ捨てを犯罪とし、略式手続で標準スケールのレベル4以下の罰金を科す[46]。イングランドで自治体が定められる定額罰金の幅は2023年と2026年の規則改正で引き上げられ、2026年9月1日からは65〜750ポンドである[47][48]。アイルランドの1997年ごみ汚染法第28条は、ごみ監視員または警察官の通告から21日以内に150ユーロを支払えば起訴しないと定める(250ユーロへの引き上げ規定は未施行)[49]。イタリアの2015年法律第221号(2016年2月2日施行)は、環境法典に「喫煙製品の廃棄物」の条を追加して地面・水域・排水口への吸い殻の投棄を禁止し、市町村に専用回収容器の設置を、生産者に啓発キャンペーンを義務づけた。投棄には30〜150ユーロの行政罰が科され、喫煙製品の廃棄物の場合は2倍まで加重される[50]。

アジア

[編集]

シンガポールの1987年環境公衆衛生法第17条はごみ箱以外の公共の場所にごみを捨てる行為を禁止し、第21条が定める罰金の法定上限は初犯2,000シンガポールドル、2回目4,000ドル、3回目以降1万ドルである。第21A条は16歳以上の違反者に対し、裁判所が監督の下で無償の清掃作業を行わせる矯正作業命令(Corrective Work Order)を原則として発すると定める[51]。

  • ポイ捨て初犯1,000シンガポールドル(約8万円)、再犯2,000シンガポールドル+清掃活動[52][53]。
  • 2019年8月、シンガポール警察は、マンションの高層階からワインボトルを落とし、下層階の男性に当て死亡させた男性を過失致死の疑いで逮捕した。最大で禁錮5年や罰金が科されるという[54]。

香港では改正定額罰款(公眾地方潔淨及阻礙)條例(Fixed Penalty (Public Cleanliness and Obstruction) Ordinance)により、2023年10月22日からごみの投棄や唾を吐く行為などに対する定額罰金(定額罰款)が3,000香港ドルに引き上げられた[55]。台湾の廃棄物清理法第27条は指定清除地区内でのたばこの吸い殻などの投棄を禁止し、第50条により違反者には現行法(2026年時点)で1,200台湾元以上10万元以下の過料(罰鍰)が科される[56]。

高層ビルからのポイ捨て

[編集]

中国では、高層ビルなどの高所から物を投げ捨てる行為は犯罪と見なされる。公の安全を脅かすと見なされれば、容疑者は懲役3年から10年の判決を受ける。通行人などが深刻な怪我や死亡した場合などは、終身刑か死刑もあり得る。2010年代に急速に発展し、高層ビルが乱立するようになった現状に住民のマナー改善は追いついておらず、しばしば高層階から故意に投げ捨てられたごみが地上の人間や車両に被害を与えて問題となる。2016年から2018年の間に発生した、高所からの落下物に関する刑事事件は31件で半数は死亡事件となった。さらに1200件の賠償請求を求める民事事件が起きている[57]。

北アメリカ

[編集]

米国のカリフォルニア州刑法374.4条はポイ捨てを軽微犯罪(infraction)とし、初回有罪で250〜1,000ドル、3回目以降は最高3,000ドルの罰金を科し、裁判所は8時間以上のごみ拾いを命じることができる[58]。サンフランシスコ市・郡は行政法典第105章によりたばこ小売店から販売1箱ごとに吸い殻清掃費(Cigarette Litter Abatement Fee)を徴収しており、その額は2019年時点の0.85ドルから[59]2026年3月改訂の申告書では2.00ドルとなっている[60]。

カナダのバンクーバー市は、吸い殻の投げ捨てを道路交通条例上のポイ捨てとして最低100カナダドルから最高1万ドルの罰金対象と案内し、2013年11月にダウンタウンの4商業地区に約100台の吸い殻リサイクル容器を設置する試行事業を始め、その後は路上リサイクル容器の大半に吸い殻用の受け口を併設した[61]。

関連項目

[編集]

脚注

[編集]

注釈

[編集]
  1. ↑ 初犯1000シンガポールドル(約8万円)、再犯は2000シンガポールドル(約16万円)と場合によって公共の施設の清掃などのボランティア活動も

出典

[編集]
  1. 1 2 3 “タバコ吸い殻「ポイ捨て」する理由〜「喫煙所」を増やして効果あんの?(石田雅彦) - Yahoo!ニュース”. Yahoo!ニュース 個人. 2021年4月21日閲覧。 “意図的にポイ捨てされるゴミ、わざと捨てられるゴミの半分以上はタバコの吸い殻だ。ゴミには多種多様なものがあるが、単一のゴミとしてはタバコの吸い殻がダントツに多い”
  2. 1 2 3 「日本の廃棄物」p116 , 2000年 · 全国都市清掃会議
  3. ↑ “ごみのポイ捨ては法律違反です! | 中島村公式ホームページ”. www.vill-nakajima.jp. 2021年4月21日閲覧。
  4. 1 2 3 4 “WHO raises alarm on tobacco industry environmental impact” (英語). World Health Organization (2022年5月31日). 2026年9月9日閲覧。
  5. 1 2 3 “Directive (EU) 2019/904 of the European Parliament and of the Council of 5 June 2019 on the reduction of the impact of certain plastic products on the environment” (英語). Official Journal of the European Union L 155. EUR-Lex (2019年6月12日). 2026年9月9日閲覧。
  6. 1 2 “第1回 札幌市都心部の喫煙対策に関する検討会 検討会資料” (PDF). 札幌市環境局 (2025年12月4日). 2026年9月9日閲覧。
  7. 1 2 “令和4年6月 所沢駅周辺ごみ分布調査報告書 概要版”. 株式会社ピリカ (2022年). 2026年9月9日閲覧。
  8. 1 2 3 4 “小岩駅周辺ごみ分布調査報告書”. 株式会社ピリカ (2023年). 2026年9月9日閲覧。
  9. ↑ 東京新聞「米国の環境保護団体オーシャン・コンサーバンシー調査」2007年8月4日夕刊
  10. ↑ “International Coastal Cleanup 2026 Report” (PDF) (英語). Ocean Conservancy (2026年). 2026年9月9日閲覧。
  11. 1 2 “2020 National Litter Study: Summary Report” (PDF) (英語). Keep America Beautiful (2021年5月). 2026年9月9日閲覧。
  12. ↑ “Single-use plastics” (英語). European Commission, Directorate-General for Environment. 2026年9月9日閲覧。
  13. 1 2 “路上喫煙及びポイ捨て防止”. 千葉市. 2026年9月9日閲覧。
  14. ↑ “第198回国会 衆議院 環境委員会 第2号 平成31年3月12日”. 国会会議録検索システム (2019年3月12日). 2026年9月9日閲覧。
  15. 1 2 Novotny, Thomas E.; Lum, Kristen; Smith, Elizabeth (2009). “Cigarettes Butts and the Case for an Environmental Policy on Hazardous Cigarette Waste”. International Journal of Environmental Research and Public Health 6 (5): 1691–1705. doi:10.3390/ijerph6051691. PMID 19543415.
  16. ↑ Slaughter, Elli; Gersberg, Richard M.; Watanabe, Kayo (2011). “Toxicity of cigarette butts, and their chemical components, to marine and freshwater fish”. Tobacco Control 20 (Suppl 1): i25–i29. doi:10.1136/tc.2010.040170. PMID 21504921.
  17. ↑ Green, Dannielle S.; Boots, Bas; Da Silva Carvalho, Jaime (2019). “Cigarette butts have adverse effects on initial growth of perennial ryegrass (gramineae: Lolium perenne L.) and white clover (leguminosae: Trifolium repens L.)”. Ecotoxicology and Environmental Safety 182: 109418. doi:10.1016/j.ecoenv.2019.109418.
  18. ↑ Belzagui, Francisco; Buscio, Valentina; Gutiérrez-Bouzán, Carmen (2021). “Cigarette butts as a microfiber source with a microplastic level of concern”. Science of the Total Environment 762: 144165. doi:10.1016/j.scitotenv.2020.144165.
  19. ↑ “令和7年版 消防白書 第1章 第1節 4.出火原因”. 総務省消防庁. 2026年9月9日閲覧。
  20. ↑ “令和7年版 消防白書 資料1-1-34 たばこによる火災の損害状況”. 総務省消防庁. 2026年9月9日閲覧。
  21. ↑ “たばこの投げ捨てで火災発生!~喫煙マナーを守りましょう!!~”. 東京消防庁. 2026年9月9日閲覧。
  22. ↑ 横浜市の路上喫煙禁止条例、1カ月で罰則適用734件(日本経済新聞、2008年2月22日)
  23. 1 2 3 ポイ捨て行為は法律で罰せられます - 千葉県浦安市
  24. ↑ “安全で快適な千代田区の生活環境の整備に関する条例 (平成14年6月25日条例第53号・平成26年3月20日条例第6号改正)” (PDF). 千代田区. 2026年9月9日閲覧。
  25. ↑ “地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)”. e-Gov 法令検索. 2026年9月9日閲覧。
  26. ↑ “第196回国会 参議院 厚生労働委員会 第27号 平成30年7月10日”. 国立国会図書館 国会会議録検索システム (2018年7月10日). 2026年9月9日閲覧。
  27. 1 2 大見, 広規、荻野, 大助、メドウズ, マーティン「わが国の路上喫煙を規制する市町村条例の分析」『日本禁煙学会雑誌』第12巻第6号、2017年、120–125頁、doi:10.14950/jstc.12.120。
  28. ↑ “大阪市路上喫煙の防止に関する条例”. 大阪市. 2026年9月9日閲覧。
  29. ↑ “ひろえば街が好きになる運動”. 日本たばこ産業 Rethink PROJECT. 2026年9月9日閲覧。
  30. ↑ “greenbird – ゴミ拾いボランティアのNPO”. 特定非営利活動法人グリーンバード. 2026年9月9日閲覧。
  31. 1 2 “東京都北区路上喫煙の防止等に関する条例”. 東京都北区 (2026年8月19日). 2026年9月9日閲覧。
  32. ↑ “世田谷区たばこルール”. 世田谷区 (2026年7月29日). 2026年9月9日閲覧。
  33. ↑ “路上喫煙者やポイ捨て行為者が目の前にいた場合どうしたらよいか?”. 船橋市 (2016年2月27日). 2026年9月9日閲覧。
  34. 1 2 “屋外の喫煙対策について”. 大田区 (2025年6月23日). 2026年9月9日閲覧。
  35. ↑ “横浜市のタバコ対策 よくある質問”. 横浜市 (2023年10月25日). 2026年9月9日閲覧。
  36. ↑ “生活環境条例(路上喫煙・公園内喫煙など)に関するご意見と回答”. 千代田区 (2025年12月8日). 2026年9月9日閲覧。
  37. ↑ “歩きたばこでコートに穴 刑事責任は?”. 大阪弁護士会. 2026年9月9日閲覧。
  38. ↑ “第196回国会 衆議院 本会議 第35号 平成30年6月8日”. 国会会議録検索システム (2018年6月8日). 2026年9月9日閲覧。
  39. ↑ “第196回国会 衆議院 厚生労働委員会 第28号 平成30年6月13日”. 国会会議録検索システム (2018年6月13日). 2026年9月9日閲覧。
  40. ↑ “第196回国会 参議院 厚生労働委員会 第27号 平成30年7月10日”. 国会会議録検索システム (2018年7月10日). 2026年9月9日閲覧。
  41. ↑ “Existe-il une amende pour abandon de déchets dans la rue ?” (フランス語). Service-Public.fr (Direction de l'information légale et administrative) (2026年6月5日). 2026年9月9日閲覧。
  42. 1 2 “Nos missions” (フランス語). Alcome. 2026年9月9日閲覧。
  43. ↑ “Arrêté du 28 juillet 2021 portant agrément d'un éco-organisme de la filière à responsabilité élargie du producteur des produits du tabac équipés de filtres composés en tout ou partie de plastique” (PDF) (フランス語). alcome.eco. Journal officiel de la République française (2021年8月10日). 2026年9月9日閲覧。
  44. ↑ “Rapport d'activité 2025” (PDF) (フランス語). Alcome (2026年). 2026年9月9日閲覧。
  45. ↑ “Ley 7/2022, de 8 de abril, de residuos y suelos contaminados para una economía circular” (スペイン語). Agencia Estatal Boletín Oficial del Estado (2022年4月9日). 2026年9月9日閲覧。
  46. ↑ “Environmental Protection Act 1990, Section 87 (Offence of leaving litter)” (英語). legislation.gov.uk (The National Archives). 2026年9月9日閲覧。
  47. ↑ “The Environmental Offences (Fixed Penalties) (Amendment) (England) Regulations 2023 (S.I. 2023/770)” (英語). legislation.gov.uk (2023年7月6日). 2026年9月9日閲覧。
  48. ↑ “The Environmental Offences (Fixed Penalties) (Amendment) (England) Regulations 2026 (S.I. 2026/816)” (英語). legislation.gov.uk (2026年7月14日). 2026年9月9日閲覧。
  49. ↑ “Litter Pollution Act 1997, Section 28 (Revised)” (英語). Law Reform Commission of Ireland. 2026年9月9日閲覧。
  50. ↑ “Legge 28 dicembre 2015, n. 221 – Disposizioni in materia ambientale per promuovere misure di green economy e per il contenimento dell'uso eccessivo di risorse naturali” (イタリア語). Normattiva (Istituto Poligrafico e Zecca dello Stato) (2016年1月18日). 2026年9月9日閲覧。
  51. ↑ “Environmental Public Health Act 1987 – Part 3 Public Cleansing” (英語). Singapore Statutes Online (Attorney-General's Chambers). 2026年9月9日閲覧。
  52. ↑ https://www.pref.gunma.jp/07/co01_00027.html
  53. ↑ “タバコ・ゴミ・ポイ捨てなどの罰金一覧”. シンガポール旅行観光.com. 2021年11月20日閲覧。
  54. ↑ “高層階から瓶落下、男性死亡=豪州人を逮捕-シンガポール”. 2019年9月1日閲覧。
  55. ↑ “Littering penalties to be raised” (英語). news.gov.hk (Government of the Hong Kong SAR) (2023年10月20日). 2026年9月9日閲覧。
  56. ↑ “廢棄物清理法” (中国語). 全國法規資料庫 (中華民國法務部). 2026年9月9日閲覧。
  57. ↑ “高層マンションから降るゴミ、中国で問題に 豆腐、犬糞、自転車も”. Newsphere (2020年8月5日). 2020年8月6日閲覧。
  58. ↑ “California Penal Code § 374.4” (英語). California Legislative Information. 2026年9月9日閲覧。
  59. ↑ “Cigarette Litter Abatement Fee (CIG)” (英語). Office of the Treasurer & Tax Collector, City and County of San Francisco. 2019年10月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2026年9月9日閲覧。
  60. ↑ “Cigarette Litter Abatement Fee Return and Instructions (Revised 03/24/2026)” (PDF) (英語). Office of the Treasurer & Tax Collector, City and County of San Francisco (2026年3月24日). 2026年9月9日閲覧。
  61. ↑ “Cigarette litter reduction” (英語). City of Vancouver. 2019年7月16日時点のオリジナルよりアーカイブ。2026年9月9日閲覧。