
- 新たな研究論文によると、ハエトリグモはヒトや他の哺乳類と同様に、レム睡眠のような状態に入る可能性があるという。
- 研究者たちは、このような動きのない休息状態に入ることでどのような利点があるのかを引き続き研究する予定だ。
- この論文の筆頭著者は、レム睡眠中に起こるとされる夢を、クモも見る可能性があると述べた。
査読付き学術誌「Proceedings of the National Academy of Sciences」に2022年8月8日付で掲載された新たな研究論文によると、ハエトリグモは人間と同じようなレム睡眠状態に入る可能性があるという。今後はこのような動きのない状態で、クモに何が起きているのかを解明することが研究者に求められている。
ドイツのコンスタンツ大学の行動生態学者であるダニエラ・ローズラー(Daniela Roessler)は、ハエトリグモ(Evarcha arcuata)の幼体を観察したところ、「巣にいるのではなく完全に露出した状態でぶら下がって」いて、ほとんど動いていないことに気付いたとワシントン・ポストに語っている。そこで、クモが何をしているのか探るために、他の研究者とともにカメラで撮影して観測することになった。その結果に研究者らは驚いたという。
「今まで見た中で最も奇妙な光景だった」と、論文の筆頭著者であるローズラーはこのほとんど動かず無防備な生物についてAP通信に語っている。
映像によって、このクモの幼体が示した行動パターンが、レム(REM:Rapid Eye Movement:急速眼球運動)睡眠の状態とよく似ていることがわかった。つまり、脚をピクピクさせたり、「網膜管」というクモの目を動かす部分が揺れる様子が、半透明の体を通して観察されたのだ。レム睡眠は、人間や犬猫などの哺乳類で見られる高度な脳の活動であり、夢を見ることとも関連があるとされている。
「このようなけいれんはとても典型的なもので、すぐに犬が夢を見ている状態を思い起こさせた」と、ローズラーはワシントン・ポストに語っている。
「ただし、我々が視覚的な夢を見るのと同じように、彼らも夢を見ているのかということはまったく別の話だ」
ローズラーによると、今回の研究以前にクモの睡眠パターン、それに哺乳類や鳥類その他の生物全体におけるレム睡眠について分かっていることはあまりないという。だが、彼女とその同僚はクモのレム睡眠に似た状態が科学的な意味で本当に睡眠と言えるのか、そしてその状態に入ると生物にどのような利益があるのかについて検証することを計画している。
「彼らは日中、あるいは活動しているときはいつでも、ちょっとした休息をはさんでいるのではないかと思われる」とローズラーは言う。
「しかし、ある程度長い時間寝ているという考え方はなかったと思う」
フロリダ大学でハエトリグモの行動を研究しているリサ・テイラー(Lisa Taylor)がワシントン・ポストに語ったところによると、特にハエトリグモは、感覚機能と認知能力の両方において非常に複雑な生き物であるという。
「彼らは、目についたものを何でも攻撃するような小さなロボットではない」とテイラーは言う。
「彼らの脳は、この獲物ではなくあの獲物を攻撃しようといった判断をするために、目まぐるしく働いている。だからこそ、夜に起こっていることが何らかの役割を果たしているのかもしれないということは、非常に興味深い」と彼女は付け加えた。
このクモの行動が実際にレム睡眠なのかどうかを疑う専門家もいる。
「静止した状態で活動している生物がいるかもしれない」とUCLA睡眠研究センター(UCLA Center for Sleep Research)の研究者であるジェリー・シーゲル(Jerry Siegel)はAP通信に語っている。シーゲルはこの研究に関与していない。
「しかし、それはレム睡眠なのだろうか。それらが同じものだとはとても思えない」
(翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue)












