日本国憲法の保障する表現の自由、思想および良心の自由を侵害する恐れがある。
高市早苗首相(自民党総裁)と日本維新の会の吉村洋文代表は、日本国旗を侮辱目的で傷つける行為を処罰する「日本国国章損壊罪」創設について、特別国会での成立を期すことで一致した。昨年10月に交わした連立政権合意書で制定を明記している。参政党も昨年10月に同罪を盛り込んだ刑法改正案を提出している。
これまでも創設の動きはあった。2012年、当時野党だった自民の高市氏らが議員立法で法案を提出したものの、審議されず廃案になった。高市氏らは21年にも再提出を模索した。
日本国国章損壊罪には多くの問題がある。12年の法案提出時には、日本弁護士連合会が法制化に反対する会長声明を出したほか、今年に入ってから札幌弁護士会、広島弁護士会も反対する会長声明を出している。
合意書では、日本国国章損壊罪制定によって「『外国国章損壊罪』のみ存在する矛盾を是正する」と記している。しかし、刑法92条の外国国章損壊罪の保護法益は、外交へ悪影響を与えないようにすることとされる。日本の国旗に同じ枠組みは見いだしにくく「矛盾を是正する」必要性に乏しい。専門家からも「『外国国旗に関する規定がある』というだけでは理由にならない」との指摘がある。
高市氏は過去のコラムで国旗を損壊する行為は「『国旗が象徴する国家の存立基盤・国家作用を損なうもの』であり、『国旗に対して多くの国民が抱く尊重の念を害するもの』だ」と主張している。
「尊重の念」の有無を法で裁くのであろうか。12年の日弁連の会長声明は「国家の威信や尊厳は本来国民の自由かつ自然な感情によって維持されるべきものであり、刑罰をもって国民に強制することは国家主義を助長しかねず、謙抑的であるべきである」と指摘している。
まっとうな指摘だ。愛国心や国家への忠誠を強制するもので、憲法19条の思想および良心の自由に違反すると言わざるを得ない。
また、自身の所有物である国旗を使って国や政府に対する批判を表現したり、芸術活動などに用いたりした場合でも、処罰の対象になる可能性がある。憲法21条の表現の自由の侵害になると言えよう。
さらに、侮辱目的という要件は主観的で、恣意(しい)的に運用される懸念もある。国や政府批判を押さえつけ、表現の自由を萎縮させかねない。
自民、維新の連立政権合意書は、緊急事態条項やスパイ防止法など国民の権利を制限する国家主義的な内容が目立つ。日本国国章損壊罪もその一つであり、政権への異論を排除することにもつながる。そのような国は健全であろうか。民主主義の根幹を揺るがすような法案の提出は断念すべきだ。
