■ CV #005 / VANTAN (シリーズ 1/3) コーポレートロゴのデザイン
【バンタンシリーズ 第1回(全3回)】
なぜ、バンタンはブランドリニューアルに踏み出したのか
“CREATIVE VIZION(クリエイティブ ヴィジョン)”は、私の仕事や考え方をクリエイターの皆さんと共有するシリーズです。
今回から3回に分けて、KADOKAWAのグループ会社である「バンタン(VANTAN)」のブランドリニューアルについてお話しします。
まずは、メインであるロゴリニューアルに関するお話です。
ロゴを新しくする――それは、単なるデザイン変更ではありません。
バンタンがロゴリニューアルに踏み切った背景には、クリエイティブ業界の変化と、ブランドの進化を見据えた重大な意図がありました。
今回は、リニューアルの出発点となった「意義の共有」、そして新しいコーポレートロゴに込めた想いについてお伝えしします。
◾️ ブランドリニューアルの意義とは
バンタンは、1965年に創設された専門スクールです。ファッション、デザイン、ゲーム、調理、映像など、幅広い分野で実践的な教育を行ってきました。私も卒業生のひとりです。
そんな歴史あるバンタンが、ロゴをリニューアルすることになりました。
依頼を受けた当初、既存のロゴは「Helvetica(ヘルベチカ)」を使用した、シンプルでストリート感のあるデザインでした。
Helveticaは視認性が高く、さまざまな場面で使われる汎用性のあるフォントです。
バンタンのロゴにも適した選択だと感じていましたが、より多様なクリエイティブ業界に対応するには、「今の時代にふさわしい形」へと進化させる必要がありました。
そこで今回のプロジェクトでは、まず「そもそもロゴを変えるべきなのか?」という根本的な問いを、クライアントであるバンタンと話をすることからスタートしました。
◾️ ロゴが語るブランドの進化
ロゴのデザインに着手する前に、まずはバンタンの代表に「なぜロゴが重要なのか」をお伝える時間をいただきました。
ロゴはただのデザインではありません。
企業の顔であり、ブランドの理念や価値観を象徴するものです。たとえば、スターバックスやアップルのロゴが、時代とともに少しずつアップデートされているのはなぜか。それは、ブランドの進化に合わせて、ロゴも最適な形へと進化していくからです。
この考えを共有することで、バンタンの代表にも「確かにロゴを変えることには意味がある」とご納得いただけました。
そして、その場で「あなたと仕事がしたい」と言っていただけたことは、非常に印象深く、うれしい瞬間でした。
◾️ 新しい『V』と『A』のかたち
今回のリニューアルでは、バンタンという名前の由来を意識しました。
この名前は、情熱の象徴としてフランス語の「vingt ans(20歳)」からきています。そのため、ロゴデザインにも「若さ」「エネルギー」「創造性」といった要素を反映させる必要がありました。
<新ロゴ>

まず“V”の角度です。
“20歳の熱量を感じさせる角度”を探るため、何度も検証を重ねました。角度が鋭すぎると攻撃的になりすぎるし、鈍すぎると勢いがなくなる。バンタンの持つ「挑戦的で先鋭的、だけど尖り過ぎない雰囲気」を表現するために、最適なバランスを見出しました。
実は、最初は“A”の上部も尖らせたデザインを試しましたが、そうすると“V”の存在感が薄れてしまいました。そこで、“A”の角を削り、“V”をより引き立たせるよう調整を加えました。
こうした細かい調整を重ねることで、バンタンのブランドをより強く印象づけるロゴデザインが完成しました。
<旧ロゴ>

また、リニューアル前のロゴでは、「Vantan」を分解して使用するケースも見られました。
たとえば、校舎のエントランスで、大きな切り文字の造作物として用いられたり、登壇の背景の垂れ幕に「V / A / N / T / A / N」と、すべて大文字で分解されていたりしました。
このようにさまざまな形で使用される場面があるからこそ、ロゴとしての印象を統一することが重要であり、“antan”部分をあえて小文字にする必然性は見出せませんでした。
そして、ビジュアル面においても、赤い四角の中に収まりも良くなり、余白のバランスが整いました。

◾️ カラー調整
次にカラーです。もともとバンタンの赤は、CMYKでマゼンタ100%、イエロー100%、ブラック10%という配色でした。
<カラー調整前(旧ロゴ)上 / カラー調整後(新ロゴ)下>

ただ、ブラックが少し混ざっているため、沈みがちにも感じました。
そこで、ブラックを5%に抑えて、全体を少し明るくしたというわけです。デジタルでも紙でも映える色にするための微調整になります。
◾️ SINCE1965に込めた信頼感
バンタンのロゴの下には、“SINCE 1965”という文字が添えられています。
近年は新しい専門スクールが次々と誕生していますが、バンタンは1965年から続く歴史のあるスクールです。その実績や信頼感をしっかり伝えるために、この表記は引き続き使用することにしました。
ただし、ロゴ全体のバランスを崩さないよう、“SINCE 1965”が主張しすぎないように、また対比の効果を使いながら、デザインを調整しました。
◾️ 新たな象徴、『V』アイコンの誕生
今回のリニューアルでは、スマホやSNSでの視認性を考え、新たにアイコンも作成しました。

現在では、企業やブランドが「アイコン」として機能するシンボルを持つことが重要です。
たとえば、アプリやSNSアイコンなど、スマートフォン画面上のごく小さなスペースにおいても、ブランドを認知させる必要があります。
そのため、今回のロゴ制作にあたっても、アイコンとしての最終形を検証しながら、デザイン案をつくっていったのです。
◾️ ブランドステートメントとの一体感

バンタンのブランドステートメントとして“SPARK YOUR PASSION.”が掲げられています。
「好きなことに向き合う人が、その情熱をもっと輝かせることができる場所」
このメッセージがしっかり伝わるように、文字の配置やフォントの統一を行いました。
ブランドの核となる言葉だからこそ、ロゴと一緒に一貫性を持たせることが重要です。
◾️ 最後に
ロゴをつくるとき、私は単に「かっこいいデザイン」をつくるのではなく、その背景にある考え方をしっかり共有することを大切にしています。
今回のバンタンのリニューアルも、「なぜ変えるのか?」を一緒に考えることから始めました。
特にバンタンのようなクリエイティブスクールにおいては、「かっこよくなければいけない」「憧れを生み出す存在でなければいけない」という使命があります。
だからこそ、ロゴやビジュアルが持つ力を最大限に引き出し、見る人の心を動かすデザインを目指しました。
次回は、ロゴリニューアルと並行して取り組んだ、バンタン校舎の空間デザインについてご紹介します。
空間そのものをブランドの一部と捉え、「どう見えるか」「どう感じられるか」を徹底的に意識したリニューアル。
赤いエントランスに込めた想いや、街に開かれたクリエイティブな空間づくりについてお話しします。
CREATIVE VIZION #005
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