【日めくり短編 113】 二十二を七で割る
この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
三・一四一五九二六五三五八九七九――。
麦わら帽子の少年は、縁側の柱にもたれて数字を唱えていた。七月二十二日の午後。光が庭を白く灼いて、蝉の声だけが厚く積もっている。少年は、クラスでいちばん長く円周率を言えた。担任は「この数はな、どこまで行っても終わらへんのやで」と言った。終わらない。決まった並びに戻らない。そういう数が、少年は好きだった。
「よう飽きんな、それ」
祖父が土間から言った。円周率になど、まるで関心がない。手拭いで首を拭きながら、下駄を鳴らして縁側まで来る。胡桃を一つ、金槌で打とうとして、狙いが外れた。実が土間へ転がっていく。祖父は舌打ちして、拾いに行った。
「今日はあれやろ、円周率の日」
「それは三月十四日」
「ほな、今日は何や」
「……二十二割る七。近い数の日」少年は指で宙に筆算を書いた。二十二を七で割る。三、余り一。十を下ろして――一、四、二、八、五、七。そこまで来て、また一に戻った。一四二八五七、一四二八五七。同じ六つの数字が、輪になって回りつづける。
「戻ってくる」少年は少し不満だった。ほんものは決まった並びに戻らないのに、その近い数のほうは、こんなに簡単に戻ってきてしまう。
祖父はようやく胡桃を割った。かつん、と乾いた音。半分だけうまく割れて、あとは砕けている。「ちょっと違うくらい、ええやろ。ほれ」かけらを一つ、少年の手に載せた。
少年は口に入れた。脂の匂いがして、噛むと、奥のほうからゆっくり甘くなった。
その夏、少年は一四二八五七を、口の中で何度も回した。庭の白い光は、いつまでも続くように思えた。
次の七月二十二日、縁側に祖父はいなかった。上がり框の下に、祖父の下駄が揃えて置いてあった。少年はそれに足を入れた。大きくて、歩くたびに、かかとが浮いた。
少年は一四二八五七を唱えた。一四二八五七、一四二八五七。何度目かで、一四二五八七、と口が滑った。言いなおそうとして、やめた。
かたり、と下駄の先が土間を打った。
原案:Y
執筆:Claude
今日は何の日?
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下駄の日

7月22日の「下駄の日」は、日本の伝統的な履物である下駄の魅力を見直してもらうために、全国木製はきもの業組合連合会が1991年に制定した記念日です。
前年に日田木製履物連合会が提案したことが始まりとされています。
7月の「7」は、かつて男物の下駄に七寸七分、女物に七寸二分といった寸法が使われていたことに由来し、「22」は二枚の歯を持つ下駄で歩いた跡が、漢数字の「二」が二つ並んだように見えることから選ばれました。浴衣や祭り、温泉街などで親しまれてきた下駄は、木の感触や歩くときの音まで含めて日本の夏を象徴する存在です。靴が生活の中心となった現在でも、「カランコロン」という音には、夕暮れの縁日や花火を思い出させる力があります。足元から日本の季節文化や職人の技を見つめ直せる一日です。
ナッツの日

7月22日の「ナッツの日」は、日本ナッツ協会が1996年に制定したと広く紹介されている記念日です。
日付は「ナ(7)ッ(2)ツ(2)」と読める語呂合わせで、ナッツ類の普及や需要拡大を目的としています。
アーモンド、クルミ、カシューナッツ、ピスタチオなど、一般にナッツと呼ばれる食品は、硬い殻や皮に包まれた果実や種子です。古くから保存しやすい食料として利用され、地域によっては料理や菓子、祭礼の供物などにも用いられてきました。小さな一粒の中に、その土地の気候や食文化、長い交易の歴史まで詰まっているところがナッツの面白さです。なお、制定者と制定年については複数の記念日資料で一致していますが、制定団体による現在の公式発表は確認しにくいため、厳密な出典表記を行う場合は追加確認が必要です。
円周率近似値の日

7月22日の「円周率近似値の日」は、日付を日・月の順に「22/7」と表すと、円周率πの近似値として知られる分数「22÷7」になることに由来します。
特定の団体が制定した記念日というより、数学を楽しむ人々の間で親しまれている日です。
22を7で割った値は約3.142857で、円周率そのものではありませんが、簡単な整数の分数としては比較的近い値になります。古代ギリシャの数学者アルキメデスは、円周率が223/71より大きく、22/7より小さい範囲にあることを示しました。3月14日の「円周率の日」が小数表記の3.14に注目するのに対し、7月22日は分数や近似という考え方に触れられる日です。正確な答えだけを求めるのではなく、限られた数字で複雑な世界をどこまで表せるかという、数学の知恵と工夫を楽しめます。
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