なぜ日本の配信者は、海外製マイクばかり紹介するのか
──国産音響メーカーに本気で頑張ってほしい話
自分が配信者、動画制作者としていつも思うことがある。
YouTubeで音響機材の紹介動画を見ると、出てくる名前がだいたい海外メーカーなのだ。
マイクなら、海外製の有名ブランド。
プラグインなら、海外製のメーカー。
オーディオインターフェースやコンプレッサー、ミキシング系の話でも、やっぱり海外メーカーの名前が多い。
もちろん、それらのメーカーが悪いわけではない。
歴史もある。
実績もある。
世界中のスタジオで使われてきた名機もある。
音楽制作や放送の文化が欧米中心に発展してきた面もある。
だから、海外メーカーが強いこと自体は理解できる。
でも、それでも思う。
日本の音響メーカー、もっと前に出てきてほしい。
正直、悔しいのだ。
日本には、ちゃんと音響メーカーがある。
オーディオテクニカがある。
ヤマハがある。
ソニーがある。
TASCAMがある。
Rolandがある。
ZOOMがある。
FostexやTEACのようなメーカーもある。
昔を振り返れば、サンスイのように良いアンプを作っていたメーカーもあった。
日本には、音を作ってきた歴史がある。
技術もある。
現場で使われてきた信頼もある。
それなのに、YouTubeの機材紹介や配信者向けのおすすめ動画を見ていると、国産メーカーの存在感が薄く感じることがある。
これはかなりもったいない。
しかも、自分自身はオーディオテクニカの製品が好きだ。
持っている機材も、かなりオーディオテクニカが多い。
だからこそ、余計に悔しくなる。
「なんでこれを、もっと前に出さないんだろう」
「なんで日本の配信者向けに、もっと強く打ち出さないんだろう」
「なんで海外メーカーや中華系ゲーミング機材ばかりが目立つんだろう」
そう思うことがある。
日本のメーカーが、良いものを作っていないわけではない。
むしろ、良いものはある。
問題は、見せ方だと思う。
日本メーカーは、どうしてもスペックや品質の説明に寄りがちだ。
高音質。
低ノイズ。
高耐久。
プロ仕様。
信頼性。
周波数特性。
性能差。
数値上の優位性。
もちろん、それは大事だ。
音響機材なのだから、性能は重要だ。
数値も必要だ。
プロが判断するには、仕様の説明も欠かせない。
でも、配信者やYouTuberが知りたいのは、そこだけではない。
知りたいのは、
このマイクを使うと、自分の声がどう変わるのか。
スマホ録音と比べて、どれくらい聞きやすくなるのか。
6畳の部屋でも使えるのか。
部屋鳴りがあっても大丈夫なのか。
夜中に小声で録っても、声が前に出るのか。
ゲーム実況で声が埋もれないのか。
解説動画やナレーションで、聞き取りやすくなるのか。
OBSや編集ソフトで、どう設定すればいいのか。
こういう部分だ。
つまり、単なる性能ではなく、「自分の動画がどう良くなるのか」を知りたい。
ここで海外メーカーはうまい。
海外メーカーは、製品を売るだけではなく、使った後のイメージを売っている。
このマイクを使えば、声がプロっぽくなる。
この機材を使えば、配信環境が整う。
このプラグインを使えば、名機の音に近づける。
このブランドを使えば、制作者として一段上がった気がする。
そういう世界観を作るのがうまい。
一方で、日本メーカーは良くも悪くも真面目だ。
性能を説明する。
品質を説明する。
仕様を説明する。
できることを正確に伝える。
それ自体は悪くない。
ただ、それだけでは今のYouTube時代には弱い。
人はスペックだけで買うわけではない。
スペックで納得し、イメージで欲しくなる。
ここが大事だと思う。
たとえば、マイクなら、
「高音質なコンデンサーマイクです」
だけでは弱い。
それよりも、
「あなたの声が、スマホ録音より一段前に出る」
「日本語ナレーションが聞き取りやすくなる」
「サ行が刺さりすぎず、長く聞いても疲れにくい」
「普通の部屋でも、動画の声を整えやすい」
こう言われた方が、配信者には伝わる。
これは誇張ではない。
価値の翻訳だ。
日本メーカーに足りないのは、技術ではなく、この翻訳だと思う。
特に、日本語コンテンツを作る人に向けた打ち出しは、もっとできるはずだ。
日本語には、日本語の聞こえ方がある。
母音がはっきりしている。
サ行やシ、チ、ツが刺さることがある。
低い声はこもりやすい。
早口だと輪郭が崩れやすい。
ナレーションでは、言葉の聞き取りやすさが重要になる。
英語圏のレビューや設定例はたくさんある。
でも、日本語の声で、
日本の部屋で、
日本の動画制作者が、
日本語の視聴者に向けて使う音響環境については、もっと掘れるはずだ。
ここは、本来なら日本メーカーが強く出られる場所だと思う。
日本語ナレーション向けマイク。
解説動画向け音声セット。
ゲーム実況向け国産配信セット。
VOICEVOXやゆっくり動画制作向けの収録環境。
OBS設定例。
PowerDirectorやCakewalkでの使い方。
普通の部屋で失敗しにくいマイク位置。
小声収録でも聞き取りやすくする方法。
サ行が刺さりにくいEQ設定。
こういうところまで、公式や案件動画で出してほしい。
製品を紹介するだけではなく、
その製品でどうやって良い音にするのかまで見せてほしい。
ただ「このマイクは良いです」ではなく、
「あなたの動画の声は、こうすれば聞きやすくなります」
「そのために、この国産機材が使えます」
ここまで言ってほしい。
今の時代、音響機材はプロだけのものではない。
YouTuber。
配信者。
ゲーム実況者。
ポッドキャスター。
歌ってみた。
朗読。
解説動画。
政治系動画。
教育系動画。
ショート動画。
VTuber。
AI音声を使う制作者。
声を使う人は、ものすごく増えている。
つまり、音響機材の入口は広がっている。
それなのに、その入口で目立つのが海外メーカーや中華ゲーミング機材ばかりになっているのは、やっぱり悔しい。
もちろん、安さや派手さでは中華系ゲーミング機材が強い。
光る。
見た目が派手。
サムネ映えする。
価格が安い。
案件もしやすい。
これは強い。
でも、日本メーカーには別の勝ち方があるはずだ。
派手さではなく、聞きやすさ。
安さだけではなく、長く使える安心感。
見た目だけではなく、動画の声を整える実用性。
海外ブランドへの憧れではなく、日本語コンテンツへの最適化。
ここをもっと前に出してほしい。
たとえば、オーディオテクニカなら、
「日本語の声を、もっと聞き取りやすく」
「初めての配信マイクを、失敗しにくく」
「動画の印象は、声で変わる」
「聞き疲れしにくい国産マイク」
こういう打ち出しができると思う。
ヤマハなら、
「配信の音を、つまみで直感的に整える」
「AGシリーズで、初めての配信音声を作る」
「声・BGM・効果音を、ひとつの環境で扱う」
こういう見せ方ができる。
TASCAMやZOOMなら、
「外で録る音を、ちゃんと作品に残す」
「スマホでは拾えない現場の音を残す」
「動画制作者のための録音道具」
こういう方向で戦える。
つまり、日本メーカーはもっと、
製品単体ではなく、制作環境として売るべきだと思う。
「このマイクを買ってください」では弱い。
「このマイクで、あなたの動画の声を整えられます」
そう言った方が強い。
「この機材は高性能です」では弱い。
「配信で声が埋もれる悩みを減らせます」
そう言った方が伝わる。
「この製品はプロ仕様です」では弱い。
「初心者でも、聞きやすい声に近づけます」
そう言った方が使う人に届く。
日本メーカーは、技術を持っている。
でも、今必要なのは、技術を見せることだけではない。
その技術が、使う人の何を変えるのかを見せることだ。
これは音響メーカーだけの問題ではない。
日本全体にある課題だと思う。
日本は、良いものを作る力はある。
でも、それを欲しくなる形で伝えるのが苦手だ。
数値を出す。
性能を出す。
実績を出す。
品質を説明する。
それは必要だ。
でも、それだけでは人は動かない。
人が動くのは、
自分に関係があると思えたときだ。
「それ、自分に必要かもしれない」
「自分の悩みに関係ある」
「これを使えば、自分の動画が少し良くなるかもしれない」
そう思えたときに、人は初めて興味を持つ。
だから、日本の音響メーカーには、もっと制作者の悩みに近づいてほしい。
配信者は、ただ良いマイクが欲しいわけではない。
自分の声を聞きやすくしたい。
視聴者に離脱されたくない。
ノイズを減らしたい。
部屋鳴りを抑えたい。
編集を楽にしたい。
声に説得力を持たせたい。
作品の印象を良くしたい。
そこに寄り添ってほしい。
国産品で世界に発信することは、できるはずだ。
日本にはアニメがある。
ゲームがある。
VTuberがある。
ボカロがある。
歌ってみたがある。
解説動画がある。
配信文化がある。
日本語のコンテンツを作る人がいる。
その声を支える機材が、海外製ばかりである必要はない。
もちろん、海外メーカーを否定したいわけではない。
良いものは良い。
ノイマンにはノイマンの良さがある。
UADにはUADの良さがある。
海外メーカーの歴史や音作りは尊重されるべきだ。
でも、それとは別に、
日本のメーカーにも、もっと表舞台に出てきてほしい。
日本語で発信する人の声を、
日本のメーカーが支える。
日本の部屋で録る人の悩みに、
日本のメーカーが答える。
日本の制作者が、
国産機材で世界に向けて発信する。
そういう流れがもっとあっていいと思う。
今のままだと、良いものがあるのに知られていない。
それが一番悔しい。
技術で負けているとは思わない。
負けているのは、見せ方だと思う。
音では負けていないのに、
物語で負けている。
製品では戦えるのに、
YouTube時代の文脈に入り込めていない。
だからこそ、日本の音響メーカーには本気で頑張ってほしい。
もっとYouTuberに触らせてほしい。
もっと配信者向けに比較動画を出してほしい。
もっと日本語音声に特化した設定例を出してほしい。
もっと初心者が迷わない導線を作ってほしい。
もっと国産機材で作れる音を見せてほしい。
良い製品を作るだけでは、もう足りない。
良い音になる道筋まで見せてほしい。
それができれば、日本の音響メーカーはまだまだ戦えると思う。
そして、自分のように国産メーカーを好きで使っている人間は、きっと少なくない。
だからこそ、言いたい。
日本の音響メーカーには、もっと前に出てきてほしい。
日本語の声を支えるブランドとして。
日本の動画制作者を支える道具として。
国産機材で世界に発信するための土台として。
本気で、そこを取りに来てほしい。
追記的に繰り返しにはなってしまい、誤解してほしくないのは、日本メーカーが音楽機材の世界で弱いわけではない、ということだ。
TAMA、YAMAHA、Roland、BOSS、ZOOM、TASCAM、オーディオテクニカ。
日本には、楽器、録音、配信、音作りを支えてきたメーカーがある。
特に音楽シーンでは、日本メーカーの存在感は決して小さくない。
問題は、その強さがYouTubeや配信、個人クリエイターの文脈に十分つながっていないことだと思う。
音楽をやる人には届いている。
でも、音を使って発信する人には、まだ届ききっていない。
ここが本当にもったいない。
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