天文通信vol.7 『天啓予報』冒頭の時系列を整理しました(ネタバレ含む)

『天啓予報』の最初のエピソードの棒と問う部分なのですが、これがとにかく複雑でわかりづらいので、自分なりに整理してみました。自分で翻訳し、何度も読み返しているはずなのに、それでも複雑です……特に惨殺事件が三件起こるのですが、その犯人タイミングと理由が、たぶん中国人の読者でも、小説を一回読むだけでは理解できないんじゃないだろうか?と思うのですが、実際どうなんでしょう……
 特に埠頭の惨殺事件と爆破事件のタイミングがずれている(はず)なところがややこしいです。陳全が埠頭で売人仲間を殺した後、風俗店に寄って女を買い、その後槐詩と遭遇しているので、同じタイミングであるとは思えないのですが、痕跡を消すために誰が爆破したかは本文では書かていないのです(作者が書き忘れたのかも)。
 それからここに出てくる黒幕、紅手袋(べにてぶくろ)というキャラクターの特殊能力「あやつり金魚」ですが、これは紅手袋が自分の源質でこしらえた金魚の稚魚を人に植え付け、植え付けられた人間は普段は普通の生活を送りつつ「紅手袋が命じた時だけ」思い通りに操れるという能力で、しかも命令する時に紅手袋は言葉や文字などで使う必要がなく、遠くからテレパシーのようなもので命令すればいいのです。
 ちなみに「源質(げんしつ)」とか「転生の釜(てんせいのかま)」とか「昇華者(しょうかしゃ)」とかの用語については、また別の機会に解説をアップする予定です。
 それではどうぞ!

※物語スタート以前
・新興宗教の牧師・王海(おう・かい)が「転生の釜」を使って信者たちから金と源質を集めている。
・それを知ったテロ組織「緑日(ろくじつ)」の構成員・紅手袋(べにてぶくろ)は、王海から「転生の釜」を奪おうと計画を立てる。

〇物語スタートの数日~数か月(?)前
・刑期を終えた陳全(ちん・ぜん)が出所する。
・麻薬の密売をしていた陳全に、どこかのタイミングで紅手袋(べにてぶくろ)が傀儡にする。
※恐らく陳全に術をかけるタイミングと同じ頃、紅手袋は槐詩(かいし)と仲介業の楊(よう)にも術をかけて傀儡にしている。

〇一日目(物語のスタートする日)
・紅手袋に操られた陳全が埠頭で仲間数人を殺して「転生の釜」を奪い、爆弾を投げて逃走する。(埠頭の爆破殺人事件)
・陳全は風俗店に寄って女を買い、その時に十数人の男女と接触する。
・槐詩が楊に紹介されたアルバイトの面接に行く。

※物語スタート

・レストランの演奏者だと思って面接を受けた槐詩は、ホストの募集だったと知って断る。その時にナンバーワンホストの柳東黎(りゅう・とうれい)と出会う。
・槐詩が面接から帰宅する途中、埠頭の爆破の煙(陳全が起こした埠頭の爆破殺人事件)を目撃する。
・槐詩は風俗店から出た陳全と接触する。陳全は死に、槐詩は警察に通報する。「転生の釜」は警察署に保管される。
※ここで紅手袋の計画に誤算が生じる。紅手袋は槐詩を操って「転生の釜」を自分に届けさせる計画だったが、槐詩が昇華者の前段階であったため完全に操れなかったことと、また槐詩が持っている運命の書に潜む烏鴉が「転生の釜」の中に蓄えられていた源質をぜんぶ吸い取ってしまったこと。
・警察の聴取を終えた槐詩が帰宅する。
・凶猿が槐詩が聴取を受けた警察署を襲い、保管庫にある「転生の釜」を盗み出す(警察襲撃事件、死傷者なし)
・凶猿が「転生の釜」を持ち帰って王海に渡すが、中身が空だった。そのため、王海は凶猿を陳全が寄った風俗店に行かせ、「転生の釜」に接触した男女数十名が死ぬ。(風俗店惨殺事件)
帰宅した槐詩は別人として凶猿に殺される悪夢を見る。
※槐詩が夢の中で殺された時になっていた別人は、実際に凶猿に殺された人間たちであることがその後烏鴉によって説明される。

〇二日目
・午前三時、艾晴(がい・せい)は事件現場の風俗店に行き伝所長と話し、警察署の防犯カメラに映っている槐詩を見る。
目覚めた槐詩が特事所に連行され、艾晴と伝所長(でんしょちょう)の尋問を受ける。艾晴が柳東黎を呼び、柳東黎が槐詩の爆破事件に関する槐詩のアリバイを証明し、槐詩は釈放される。
※後に艾晴が槐詩を囮にするために釈放したことが判明する。
・王海は凶猿に命じて、陳全と関係のあった麻薬製造・密売人を拷問して殺す(麻薬密売者拷問殺人事件)が、何も手掛かりがつかめず、最後に「転生の釜」に接触した槐詩に目をつける。
・爆破事件の現場である埠頭にいる艾晴が、麻薬密売者拷問殺人事件の知らせを受け取る。
・帰宅した槐詩は、謎のカラス(烏鴉)に、このままだと本当に殺されると言われる。それを回避するために、「昇華者」になることを決意する。

〇三日目
・王海は槐詩の家に泥棒二人を派遣し、「転生の釜」を探させる。
・泥棒に大切なチェロを壊されそうになった槐詩は、泥棒と揉みあいになって殺されかける。そこに艾晴と柳東黎がやって来て槐詩を助ける。
・柳東黎がボディーガードとして槐詩の家に残る。

〇四日目
槐詩は柳東黎につきそってホストクラブに行きバイトをする。
・ホストクラブ退勤後、槐詩と柳東黎は凶猿に襲われるが、艾晴があらかじめ手配しておいた狙撃手が凶猿を撃退する。
・重傷を負った凶猿は王海のところに戻り、源質を吸収して回復する。

〇五日目
・槐詩は再び柳東黎につきそってホストクラブに行き、その帰りに楊の妻と出くわし、三人はそのまま楊家に行って鍋を食べる。
※実はこの時に紅手袋に操られてい楊が槐詩に2匹目の金魚を飲ませている?
槐詩を見送る時に、楊は「博愛公益」という慈善団体の人間に槐詩のことを聞かれて情報を売ったことを打ち明ける。
・特事所がマネーロンダリング用の慈善団体「博愛公益」の社長・涂太(と・たい)を逮捕し、王海の弟子である涂太の自供により、牧師・王海が救主会で祈祷会の時にいつも「転生の釜」持っていたことを話す。
・涂太の自供から、王海が老塘鎮(ろうとうちん)に行ったという情報を得て、艾晴は王海逮捕の前に、槐詩と柳東黎に潜入捜査に行かせる。

 これ以降は基本的に物語は時系列順に進んでいき、特に難しくはないのですが、ここ(第十六章)までの間にこれだけの情報が断片的にちりばめられているので、翻訳しながら読み解くのがけっこう大変した。日本のライトノベルは何でもかんでもセリフで説明しすぎる!とよく言われますが、『天啓予報』の冒頭部分は、特に中国の習慣とか言い回しとかがわからない日本人にとっては、決して読みやすい方ではないような気がします……

 物語はこの後、特事所がキャノン砲を撃ちまくったり、紅手袋や白帝子といった昇華者による超能力バトルも展開してラノベ的な展開?になっていくのですが、ここまではミステリーっぽく、好きな導入部分です。あと最初に読んだ時はとにかく人がいっぱい死ぬので驚きました。日本のライトノベルに比べると、死人が沢山出るし、死に方も惨たらしいのが多いですね。ちょっと読んだことのある他の中国のネット小説『薄雲録』も、ファンタジー小説なのですがけっこう惨たらしい死に方が沢山出てきたので、中国人の好みなのかも……

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