第218章 彼らは楽しそうに笑ってる!
「イーソー」
「キューマン」
「カン!」
「リーチ!」
喧騒と熱気の中、十数人の全身から腐臭を発しているデクノボウゾンビたちが雀卓を囲んだり、煙草を吸ったりビールを飲んだりしながら暇をつぶしていた。騒がしく無秩序で、見たところ社会不適合者ばかりだった。
槐詩が入ってきたのを見ると、一人が振り返って言った。
「あ、新しい班長?」
「若そうだなあ。こりゃ、今日の業績もきっとダメだ」
「どうせ給料ももらえないし、業績なんて関係ないだろ」
「おい、お前いま俺の牌を盗っただろ?」
「この牌はお前のか?証拠は?」
「こいつ、根性を叩き直してやる!」
「クソ野郎、かかってこい!」
挨拶も終わらぬうちに、数人のゾンビたちが殴り合いを始めた。一人が相手の首を引っこ抜けば、一人は相手の腰を踏み折った。あっという間にバラバラになった四肢がそこら中に転がり、槐詩は目玉が飛び出るかと思た。
なんという絶技だ!
このにお兄さんたちは、殴り合いのプロなのか。こんなになっても誰も死んでいない……
幸いこの人たちも規則は守るようで、ケンカの後一人一人槐詩と挨拶をし、自分の仕事内容を説明すると、自分たちはあなたの指示に従いますという態度を表明した。
隅では、二人のゾンビがエロ本を見ながら、雑談をしていた。
「三途の川に最近新しいパチンコ屋ができたんだって。仕事が終わったら行ってみないか?」
「だめだ、理子(あやこ)が昨日から具合が悪くて、新鮮な肉を一キロ持って帰らないと」
「また妊娠したのか?」
「ああ、三人目だ」
「おめでとう、よかったよかった……」
槐詩は聞いて人生というものを疑った。妊娠だって?あんたはゾンビだろう?!
二人の雑談はますます盛り上がった。
「太郎は今年で四歳か」
「そうだ」
太ったゾンビは振り向いて槐詩を見た。
「班長、うちの家族写真見ます?」
言うと、ポケットから写真を出して槐詩に見せた。
「俺いまは太ってますが、昔はこんなに痩せてたんですよ。ああ、楽しそうに笑ってる」
槐詩は目を凝らして見た。写真には夫婦が二人の炭のように黒い子供を抱いているのが写っていた。
「……」
終わった。この同僚たちはまったく頼りにならない……
槐詩は頭痛に頭が爆発しそうだった。
こんな戦友たちと一緒に、どうやって戦えというんだ!
来る時に読んだ規則では、ホーンテッド・キャッスルでは一度に四人の客が遊ぶことができる。開園まであと三十分……遊園地が開いたら、槐詩はすぐにサブストーリーのボスとならなければならない。
弱い昇華者だったとしても、一度に四人となると、うっかりするとしくじるかもしれない。
槐詩は溜息をつくと、真面目に質問した。
「君たちはいつもはどんな風にころ……コホン、仕事をしてるんだ?」
いちばん前にいるゾンビが手を上げて答えた。
「持ち場にいて、人が来るのを待ち、来たら噛みつきます。逃がさないよう努力しています」
どうやら仕事に対する姿勢は悪くないようだ。槐詩は頷くと、また質問した。
「もし逃げられたら?」
別のゾンビが手を上げた。
「戻ってまた待ちます」
そうか。みんな指示待ちゾンビか……
「方法を考えてみよう」
槐詩は頭を掻くと、脳を働かせながら、古城の中を行ったり来たりした。
ムードはまあまあ、トラップはちょっと古臭いが、使えなくはない。脇道や偽扉も様になっていて、迷宮と呼んでもいいだろう。
だが捕獲はできない……
槐詩はぐるりと一周して戻ってくると、休憩室でぼけーっとしているゾンビたちを見て、不意に尋ねた。
「ゾンビも病気になるのか?」
「えっ?」
ゾンビたちは驚いて顔を見合わせると、揃ってを振った。
「まさか……もう死んでるんですから、長いこと風邪ひとつひいてません」
「それはよかった」
槐詩の目がパァッと輝いた。ここの十数人の煙草を吸って麻雀を打っているデクノボウのゾンビたちが、十数個の栄養豊富なシャーレに見えてきた。
少し考えてから、槐詩は鉄のコップを作り出した。だいたいビールジョッキぐらいの大きさである。それから刀を取り出して自分の手を切り、血がだらだらと流れ出るのを見た。用が済んだら銀血薬剤を塗った絆創膏を貼ればいい。
ちょうどここに来る途中に樹から栄養を摂りすぎていたので、献血すると思えばいい。
槐詩は念を入れて、二掴みの劫灰を捻り出して中に入れた。妖気の中の液体はあっという間に黒くなった。
仕上げに、悲憫の槍を出して、数十グラムの龍血を注ぎ込んだ。
シュワッ!
容器の中の液体が揺れ、まるで沸騰しているかのようにボコボコと泡が出てきた。
「飲んでみてくれ。自家製快楽水だ」
槐詩は容器を彼らの前に置き、笑顔を見せた。
「さあ、早く。一人一口。飲むと楽しくなるぞ」
ゾンビたちは槐詩に進められて、とても美味しそうには見えない飲み物を腹に入れていった。そしてあっという間に楽しくなった。
「おおお!力が漲って来た!!!」
「楽しいなあ…これが成長か……」
「お、俺は……もっと腐ってはたぞ!」
「頭がひとつ増えた……」
錬金毒薬のようなウイルスの効果によって、ゾンビたちはあっという間に緑色
ジメジメと腐乱している体の中で、ウイルスたちは心地よく成長し、タンポポのようにあっという間に増殖して、ゾンビたち全員を悪魔のウイルスゾンビにした。
槐詩の観察によると、個体ごとに毒の種類が違っていて、血液型がA型の者は源質天然痘、B型は地獄インフルエンザ、O型は奇怪極まりないことに、まるで農家のように、頭にどんどんキノコを生やしていた。一人のゾンビの頭にはひまわりさえ生えていた……
短い進化の間にも、時間は飛ぶように過ぎていた。
ずくに、外で警報の鳴る音が聞聞こえ、あと数分したら『お客さん』が入ってきて、ゲームが始まる……
「よし。元気出していこう。仕事だ仕事!」
槐詩はゾンビたちに活を入れて仕事に送り出そうとした。
「それぞれの持ち場は?」
「私は図書室です」
「私はキッチン」
「私はホール」
「私は適当にうろうろと……」
ゾンビたちはのろのろと歩き、城の奥深くに歩いていった。だが休憩室の中にガリガリに痩せた老ゾンビがまだ椅子に座っていた。
ゾンビたちの中で彼の腐乱具合がいちばん酷く、肉はすっかり落ちてしまって、ゾンビというより、骸骨といった方がいいぐらいで、ちっょとつついたらバラバラになってしまいそうだった……
このようになってまで仕事に来るとは、なんて仕事熱心なんだお爺さん!
槐詩は畏怖との尊敬と念を籠めて彼を見ると、尋ねた。
「あなたの仕事は?」
老ゾンビはガリガリと頭を掻くと、媚びた笑いをぎこちなく浮かべ、八十年前の新聞を持ち上げた。
「新聞を……読むこと……」
ソウデスカ。
槐詩は目の端を引きつらせた。ゾンビの職場でもパワハラがあるのか。腹黒い資本家は怖ろしい……
それにしてもこんなに歳をとっているのに職場にいて何をしているんだろう。仕事はないのか!毎日ここで新聞を読むだけなんて退屈だろうに!
彼は溜息をつくと、デスクを指さした。
「それじゃ、ここにいてください」
「誰か……来たら……どうしよう?」
槐詩は彼をじっと眺めた。見た目は怖ろしいが、とても強そうには見えない。人を襲っても一蹴りで粉々にされてしまうだろう。
そんなことになったら参加選手が老人を虐待したと実況で言われてしまう。まさに悲劇だ……顔も上げられない。
「それじゃ入ってきた人と……麻雀をしたら?」
槐詩はちょっと考えると、麻雀牌を持って来た。使おうが使うまいが関係ない。とりあえず敵を欺く戦法として使おう。
雰囲気を出すため、室内の古い加湿器を彼のお尻の下において、劫灰を振りまいてから、スイッチを入れると、黒い霧が老ゾンビの口からゆっくりと立ち昇り、一見すると昇天しているようだった。
不気味で怖ろしく、強敵のオーラが発散された!
「これでよし!」
槐詩は手を叩いた。城の外の更に緊迫した警報を聞くと、手を振り、休憩室の灯りを消した。瞬間、暗黒がすべてを呑み込んだ。
城の正門が重々しく開いた。
ゾンビたちの呻き声の中、ホーンテッド・キャッスルは、営業を開始した。
次の瞬間、無数の人影がどこからともなく現れた。
※
※
『復活ミッション――八時間以内に、小猫楽園をクリアすること』
『クリアボーナス:参加資格の回復。その他のボーナスも探してみよう!』
一瞬の間に、悪夢の中に沈んでいた数千人の叫びながら目を醒まし、自分が広場に立っていることに気づいた。
初日に退場の憂き目にあった参加者たちは敗者復活戦の会場である小猫楽園の客となった。
最初に無闇に突進してむざむざ命を落とした者以外は、その場に留まり、一目十行の速さで厚いガイドブックを読み始めた。自分が突破すべき難関を選ぶために。
ガイドブックの中で、小猫楽園のすべての『アトラクション』が簡単に紹介されていた。
場所によって難度が違っており、クリアするために必要な条件も違っていた。難度の高い場所は一か所でミッションクリアとなるが、難度の低い場所は往々にして四、五人で攻略し、クリアに必要なポイントを貯めていく必要がある。
実力も度胸もある客は、三枚だけ与えられているファストパスを使い、先に並んでいる挑戦者を追い越して、最高難度のクラッシュ・マウンテン、地底二万マイル、ダイイングスピリッツなどに挑戦した。危険を減らし、一発クリアするためである。
命は一つしかない。難易度が低い項目でも、地の利があるスタッフと対峙して万一失敗するよりも、急いでクリアした方がいいという判断である。
そしてある者はガイドブックの最後に小さな字で書いてある一行を読み、瞬時に目を輝かせた。
――スタッフを殺した場合、参加資格が復活するだけでなく、スタッフのクリア進度とすべての装備を引き継ぐことができる?
すぐに、様々な計算と深慮のうちに、ある者は自信満々に、ある者は不安で一杯になりながら、挑戦者達は自分が選んだ道を進んだ。
沸騰する人の流れは四方八方に向かうと同時に、小猫楽園はミートグラインダーのスイッチを入れたように動き出し、血の臭いを漂わせはじめた。
絶え間ない悲鳴の中、濃い灰色の空の下、この場所は俄かに魔窟と化した。
槐詩は、扉が開く音を聞いた。
訳者コメント:
お気づきの通り、「小猫楽園」のモデルはディズニーランドです。アトラクションの名前を訳すのが楽しかったですヾ(*´∀`*)ノ
