[コラム]「外国人犯罪」を罪種で割ってみたら、国籍の顔が全部違った
ハッピーセット、ポケモンカード、ワンピースカード、ガンプラ、本。買いに行くとだいたい無い。店の前にまとめ買いの集団がいて、帰ってフリマアプリを開くと同じものが並んでいる。子どもが買えない。この苛立ちは今も消えていない。
その延長で、ずっと引っかかっていたことが二つある。ひとつは、在留外国人の犯罪が増えているという話。もうひとつは、なのに不起訴が多いという話。
両方とも数字を見に行った。前者は数字が出てきて、後者は逆だった。そして途中で、自分が「外国人犯罪」と一語で呼んでいたものが、中身のまるで違う何本もの話だと分かった。
全体像を、まず国籍別の順位で見る
令和6年の来日外国人犯罪は、総検挙件数21,794件、総検挙人員12,170人だった。
検挙件数の国籍別は、ベトナムが9,690件で44.5%。次いで中国2,866件(13.2%)、タイ1,201件(5.5%)、カンボジア991件(4.5%)、フィリピン873件(4.0%)と続く。
検挙人員だと順位が少し変わる。ベトナム3,990人(32.8%)、中国2,011人(16.5%)、フィリピン732人(6.0%)、タイ644人(5.3%)、ブラジル578人(4.7%)。
件数と人員でベトナムの比率が10ポイント以上ずれるのは、一人あたりの件数が多いことを意味する。同じ人が何件も重ねている。
分母のほうも見ておく。令和6年6月末で、永住者等を除く在留外国人に占めるベトナム人は18.6%だった。在留18.6%の集団が、検挙件数の44.5%を占めている。
この不均衡は事実として残る。ここを書かずに制度の話だけするのは片手落ちになる。
ただ「過去最悪」ではない。2024年の21,794件は2年連続の増加だが、ピークは2005年の47,865件で、いまはその半分以下だ。増えているのは本当。過去にないほど増えている、は違う。

罪種で割ると、国籍の顔が入れ替わる
ここがいちばん効いた。罪種ごとに、どの国籍が占めているかも公表されている。
侵入窃盗は全体4,153件のうちベトナムが3,272件で78.8%。2位のタイが4.8%だから、比較にならない。
万引きは全体2,252件のうちベトナムが47.3%。2位の中国が14.0%。侵入窃盗ほど極端ではないが、それでも半分近い。
詐欺になると逆転する。全体557件のうち中国が39.0%で最多、ベトナムは30.3%で2位だ。
自動車盗ではスリランカ・ブラジル・ベトナムが上位に並ぶ。薬物事犯の検挙人員947人では、ベトナム240人に次いでブラジル158人、フィリピン62人。
そして太陽光発電施設のケーブル窃盗。令和6年の検挙147人のうちカンボジアが74人で最多、日本37人、タイ19人、ベトナムは8人だった。ここではベトナムは外国人検挙者の1割にも届かない。
同じ「外国人犯罪」という言葉の下で、罪種を変えるだけで先頭に立つ国籍が変わる。ひとまとめにすると、この違いが全部消える。

「外国人」ではなく、どの在留資格か
もうひとつ、国籍より効く切り口があった。在留資格別だ。
令和6年の総検挙人員12,170人を在留資格で割ると、技能実習が2,916人で24.0%と最多になる。次いで短期滞在2,214人(18.2%)、定住者1,484人(12.2%)、留学1,294人(10.6%)。
一方、技術・人文知識・国際業務は877人で7.2%。いわゆるホワイトカラーの在留資格だ。永住者はこの統計の「来日外国人」から外れている。
不法就労で摘発された533人を見ると、在留資格別では技能実習が208人で39.0%と最多になる。
つまり検挙は在留外国人全体に均等に散っているのではなく、期間が限られていて職場を選べない在留資格に寄っている。この偏りは、国籍の話とは別に立てないといけない。

単独犯ではなく「組」で動いている
令和6年、来日外国人の刑法犯検挙のうち共犯事件は41.1%。日本人は12.5%だから、3倍以上ある。
住宅を狙った侵入窃盗になると差はもっと開く。共犯率は72.8%で、日本人の9.3%の約8倍。万引きでも22.6%対3.4%。単独で店に入って捕まる絵とは、形が違う。
手口も公表されている。衣料品販売店を狙った大量万引き事件では、国外にいる指示役の計画のもとで実行役が来日し、別の回収・発送役が盗品を国外へ送って現地で売っていた。
愛知の盆栽窃盗事件では、SNSに掲載された犯罪実行者の募集情報に応募する手口が判明している。
SNSが窓口になって、指示役と実行役と換金役が別々に立っている。ここを検挙してほしいという気持ちには、数字の裏づけがあると思う。

盗まれているのは、店の商品だけではない
万引きの話ばかりしていたが、被害の中身を見ると、もっと厄介なものが増えている。
金属盗の認知件数は、令和2年の5,478件から令和6年は20,701件になった。4年で約3.8倍だ。
被害額は令和6年で約140億円。同じ年の窃盗被害額全体の約2割を、金属盗が占めている。
盗まれているものは、電線・ケーブルが半分以上。次いで側溝のグレーチング、工事現場の敷鉄板、金属管と続く。
被害の性質が万引きと違うのは、盗まれた物の値段と、復旧にかかる金額が釣り合わないところだ。
栃木県矢板市の野球場では、照明用ケーブルが盗まれた。時価約129万円に対して、市が説明した復旧費用は約6,000万円だった。
群馬県の養鶏場では、令和6年7月に銅線ケーブル約170mが盗まれ、空調が止まって鶏の一部が死んだ。被害額は約500万円とされている。
農業のほうも動いている。茨城県の鹿行農林事務所は、給水用バルブや樋門の銘板の盗難を集計していて、令和6年度9件・約86万円、令和7年度18件・約233万円、令和8年度は5月中旬の時点で既に8件・約271万円だ。
ただ、農作物の盗難には全国統計が存在しない。警察庁の窃盗手口区分に「田畑ねらい」という項目がなく、農林水産省の実態調査も平成30年度の単発で止まっている。数えていないものは、増えたかどうかも言えない。

家畜の窃盗で、起訴された人はいない
2020年に北関東で家畜が大量に盗まれた事件は、この話の原型になっている。豚や鶏が消え、ベトナム人が逮捕されたと報じられた。
ただ、逮捕容疑は入管法違反と、と畜場法違反だった。無許可で豚を解体したという容疑で、家畜を盗んだという容疑ではない。
と畜場法違反で逮捕された4人は、2020年11月に前橋地検が全員不起訴にしている。理由は公表されていない。
起訴されたのは果物のほうだ。2021年3月26日、さいたま地検熊谷支部がナシ182個の窃盗で起訴し、スイカ43個については不起訴とした。
家畜の窃盗そのもので誰かが起訴された記録は、探しても見つからなかった。事件が未解決のままなのかどうかも、公式発表を確認できていない。
自分は「外国人が豚を盗んだ」として記憶していた。司法手続の上では、そこは立証されていない。
そのうえで「不起訴が多い」を確かめたら、逆だった
検察統計年報には国籍別の起訴・不起訴人員が載っていて、起訴率が計算できる。
令和6年の来日外国人全体の起訴率は44.3%。日本人を含む全国は40.4%(過失運転致死傷等と道交違反を除いたベース)だから、外国人のほうが高い。
国籍別に割ると、タイ54.3%、ベトナム47.7%、フィリピン46.9%、中国40.6%。どれも全国平均を下回っていない。
経年でも向きは変わらない。2020年から2024年まで、来日外国人の起訴率が全国を下回った年は一度もなかった。犯罪白書も、来日外国人の起訴率は刑法犯で2.8ポイント高いと明記している。
罪名別でも同じで、窃盗の起訴率は全国44.8%に対して来日外国人52.5%。真っ先に思い浮かべていた罪種ほど、むしろ起訴されている。

数が多いことを、率が高いことだと読んでいた
では「不起訴が多い」はどこから来たのか。実数を見ると、令和6年の来日外国人の不起訴は10,054人あって、たしかに多い。
ただこれは、受理される事件そのものが多いことの反映でしかない。数が多いことを、率が高いことだと読んでいた。自分がやっていたのはそれだ。
数字つきの出典も探した。一次でも二次でも見つからない。あるのは「外国人は不起訴だらけ」という言説のほうで、日本ファクトチェックセンターは2025年7月にこれを誤りと判定している。
国会でも問われた。2025年11月、外国人のほうが不起訴になりやすいのか数字を示せという質問主意書が出ている。同月末の答弁書は数字を一切示さず、国籍を理由に不当な判断はしないと承知している、とだけ答えた。
統計は公表されていて誰でも計算できるのに、聞かれた側からは一つも出てこない。数字が出ない場所に、言説だけが残る。
「不起訴」は、お咎めなしという意味ではなかった
不起訴の中身を見ると、別のことが分かる。
令和6年の来日外国人の不起訴は、起訴猶予が74.4%を占めている。全国は68.2%だから、外国人のほうが一段と起訴猶予に寄っている。
起訴猶予は「やっていない」ではない。嫌疑があることを前提にしたうえで、訴追を見送るという判断だ。
来日外国人の入管法違反に絞ると、不起訴のうち起訴猶予が95.9%を占め、嫌疑不十分は4%に届かない。
理由は制度のほうにある。刑事手続とは別に、退去強制という行政手続が並走しているからだ。令和6年に退去強制手続等を執られた外国人は18,908人。ベトナム6,996人、タイ3,400人、中国1,929人、インドネシア1,609人と続く。
同じ年、検察庁における入管法違反の終局処理は約6,800人。退去強制のほうが3倍近い規模で動いている。
不起訴に見えているものの相当部分は「罰しなかった」のではなく、「刑事罰の代わりに国外に出した」だ。それは処罰として目に見えないし、刑事罰の統計にも計上されない。

自分が怒っている転売は、三つの別の話だった
転売とひとまとめに呼んでいるものの中身は、法的に違う三つが混ざっている。
ひとつめは、盗んだ物を売る類型。大量万引きして母国へ送るのも、銅線を業者に持ち込むのもこれだ。窃盗罪や盗品等運搬罪にあたる明確な犯罪で、窃盗の起訴率は来日外国人のほうが高い。
ふたつめは、買い方を偽る類型。2026年2月、架空名義でポケモンカードを大量に不正購入して420万円以上を得た疑いで、ベトナム国籍の2人が逮捕されたと報じられた。盗んだのではなく、買う入口を偽った。
みっつめは、正規に買って売る類型。これは原則として合法だ。玩具や書籍には、チケット不正転売禁止法のような特例がない。
2025年8月のハッピーセット騒動は、みっつめに入る。この件で「外国人」と総称した報道は見たが、どの国籍かを特定した情報は見つからなかった。自分の頭の中では繋がっていたが、その線は無い。
日常の苛立ちがいちばん強く向いているのは、たぶんみっつめだ。買えない、子どもの手に渡らない、食べ物が捨てられる。不起訴どころか、そもそも罪ですらない領域だった。
ひとつめとみっつめをまとめて語ると、対策は両方おかしくなる。ひとつめに要るのは組織と買取ルートの摘発で、みっつめに要るのは売り方の設計だ。刑事罰をどれだけ強くしても、みっつめには一切届かない。

買う側を絞ったら、数字が動いた
金属盗については、対策のほうが先に動いた。
2025年6月13日に金属盗対策法が成立し、9月1日から金属切断工具の隠匿携帯が禁止された。銅の買取業者に届出と本人確認を義務づける部分は、2026年6月1日に全面施行されている。
千葉県は2025年1月、茨城県は同年4月から、条例で買取業者を許可制にした。ただし被害が集中している栃木県と群馬県に条例はなく、埼玉県は2000年に廃止したままだ。
そして令和7年、金属盗の認知件数は15,712件で前年比24.1%減。太陽光発電施設のケーブル窃盗は45.3%減と、さらに大きく落ちた。
警察庁は法施行との因果関係を断定していない。それでも、盗る側ではなく買う側を絞ったときに数字が動いた、という順序は記録に残っている。
育ち方が違うから、という説明について
ここまで書いてきて、自分の中にまだ残っている考えがある。育ってきた環境が違えば、当たり前の線も違う。日本人が説明しなくても守っているものが守られない。自分さえよければいいという振る舞いが目につく。だから共存は難しいのではないか、という感覚だ。
この感覚は少数派の偏見ではない。入管庁が令和5年に実施した意識調査で、「共生社会のために外国人にしてほしいこと」の最多回答は「日本の習慣、生活ルールを守るようにする」で77.5%だった。
同じ調査で、地域に外国人が増えることを「好ましくない」と答えた層の44.4%が文化・習慣の違いによるトラブルを懸念している。ここまでは予想がつく。効いたのは、「好ましい」と答えた層でも26.5%が同じ懸念を持っていたことだ。
受け入れに前向きな人の4人に1人が、それでも同じ心配をしている。この感覚を「差別的だから捨てろ」と言うのは、たぶん現実に合っていない。
そのうえで、価値観で説明しようとすると噛み合わない部分もある。
罪種を変えると、先頭に立つ国籍が入れ替わる。育ち方や国民性が原因なら、罪種を横断して同じ国籍が並ぶはずだが、そうなっていない。侵入窃盗はベトナム、詐欺は中国、銅線はカンボジアで、これは価値観というより、どのネットワークがどの換金先に繋がっているかの分布に見える。
検挙人員も、在留外国人全体に均等には散っていない。技能実習24.0%、短期滞在18.2%に寄っていて、永住者はそもそもこの統計に入っていない。太陽光ケーブル窃盗で検挙された外国人110人のうち89人、約8割は不法滞在だった。
そして数字は、育ち方より速く動く。金属盗は令和7年に24.1%減、太陽光ケーブル窃盗は45.3%減。技能実習生の失踪は令和5年の9,753人から令和7年の3,950人へ、2年で6割減った。
2年で誰かの育ち方が変わったわけではない。変わったのは、買取業者への規制と、転籍のしにくさをめぐる制度の側だ。
自分の実感を取り下げるつもりはない。生活のルールが守られないことへの苛立ちは、統計とは別に存在していい。ただ、その実感を「だから無理だ」の側に置くのか、「では何を変えると数字が動くのか」の側に置くのかで、行き先はまるで違ってくる。

制度の話は、免罪の材料ではない
在留外国人は令和7年末で412万5,395人と、初めて400万人を超えた。中国93万428人、ベトナム68万1,100人、韓国40万7,341人の順になる。
構成は国籍ごとにかなり違う。特定技能1号は令和7年6月末でベトナムが最多の14万6,270人。永住者や留学に分散している中国・韓国とは、同じ「外国人材」で括れる中身ではない。
来る前の費用もある。入管庁が令和4年に公表した実態調査では、技能実習生が来日前に支払った費用は総額で平均54万2,311円。国籍別の平均借金額はベトナムが67万4,480円で、調査対象の中でもっとも高い。
借金を背負って低〜中技能の仕事に来る構造は、そのまま失踪の圧力になる。ただ失踪は増え続けてはいない。ピークは令和5年の9,753人で、令和7年は3,950人。前年比39.3%減だ。
免罪の材料にはしない。借金があれば盗んでいいわけではないし、SNSの募集に応募した責任が消えるわけでもない。ここに並べた数字は、罰する話の手前に何が置かれているかを示しているだけだ。
何を問題として立てるか
不均衡は残る。在留18.6%に対して検挙件数44.5%、侵入窃盗の78.8%、共犯率41.1%対12.5%は、説明が要る数字だ。
一方で、自分が持っていた前提はいくつも崩れた。不起訴が多いは逆で、銅線の最多国籍はカンボジアで、家畜窃盗では誰も起訴されていなかった。
罪種を変えれば先頭の国籍が変わり、在留資格で割れば技能実習に寄る。「外国人犯罪」という一語には、少なくともこれだけ違うものが入っている。
育ち方の違いという感覚も残っている。ただ、その感覚が説明できるのは、2年で6割減った失踪者数でも、1年で24.1%減った金属盗でもない。
そして売り場で感じている苛立ちの多くは、そもそも刑事の話ですらなかった。罪ではない領域に、刑罰の言葉をぶつけていた。
混ぜたまま呼び続けると、どれにも効かない対策しか出てこない。侵入窃盗と組織窃盗の摘発を求める声と、買取ルートを絞れという声と、転売の売り方を問う声と、入管の運用を問う声は、本当は別々に立てないといけない問いなんだと思う。
苛立ちが消えたわけではない。向き先が分かれただけだ。
聞いてみたいのは、みなさんが「不起訴が多い」という話をどこで最初に見たか。数字つきで見た人がいたら、その出典も知りたい。自分は探しても見つけられなかった。あと、実際に盗まれた経験があれば、それが何だったのかも聞きたいです。コメントで教えてください。
なお数字は原則として令和6年(2024年)の確定値ベース。金属盗と失踪者数のみ令和7年分が公表されており、そちらを併記した。令和7年分の検察統計は2026年8月時点で未公表。
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