【火の鳥復活編】AIに恋をした人類の末路…人類の向かうべき未来とは?
今回は「火の鳥復活編」をご紹介いたします。
『火の鳥』の中でも「鳳凰編」「未来編」に並ぶ人気作のひとつで
非常に人気の高いエピソードです。
しかも『火の鳥』というスケールだけではなく
SFという大きなジャンルで見ても「SFマンガ」の最高到達点と言っても決して大袈裟ではないと思えるほど完成度が高い作品で、その作品世界は後進の作家たちにも大きな影響を与えた凄まじいSFマンガです。
この先ロボットとの共存を迎える我々人類にとっても
非常にメッセージ性も強く
読めば必ず膝の震えが止まらないほどの衝撃を覚えます。
自分が近未来へ進んでいくという方は
絶対に読んでおいた方が良いマンガです。
つまりこれは全人類必読書であるということなんです。
そんな金字塔漫画を解説するにあたり
はっきり言ってどこから解説して良いのかさっぱり分かりません。
テーマも多いし、深いし、複雑だし
何から手をつけていいのか分からないくらいすんごいことになってます。
それでも手塚治虫が示した人類の進化論。
今回はその断片だけでも解説してみようと思いますので
ぜひ最後までお付き合いください
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「復活編」最大の魅力
「復活編」とは最終巻である「未来編」の2つ前のエピソードで
本作の約100年後に位置する「宇宙編」を飛び越えて
「未来編」近くの話と行ったり来たりするストーリーになっています。
本作だけでも1000年近いスパンの物語が展開する
とてつもないスケールで描かれているのでちょっと難解ですが
最後には「マジか~!」って繋がる圧倒的な伏線回収劇が盛り込まれているのでここまで順番に『火の鳥』を読めれている方なら
アゴが外れるくらいの感動と衝撃間違いなしです。
それがこの「復活編」最大の魅力です。

あらすじ
西暦2482年
冒頭から主人公レオナが、交通事故により死亡するところから始まります。
一旦は死亡するも再生医療によりレオナは「生き返り」ます。
しかしレオナが目を覚ますと、そこにはおかしな景色が見えるんです。
人間ではないものが言葉をしゃべり、
人間が一人もいない世界だったのです。
一体この世界は何なんだろう。

そこへ一人の人間の女性が突如現れます。
目を覚ましてから初めて出会う人間なので
追いかけ話しかけてみると
彼女は自分は「ロボット」だと言うのです。

「???」
…何が何だか分からないレオナ
実はレオナは手術により
脳も含めて体の大半を人工物と交換した後遺症により生物が無機質の塊にしか見えなくなり反対に人工物が生物に見えるようになってしまったのです
レオナには美しい女性に見えてしまっていたこの女性
実際はただの作業用ロボットでありました。
しかし彼女に心を奪われたレオナは
ついにはその作業用ロボットに恋をしてしまうんです。
周囲からは狂った目でみられ
レオナは、はたして自分は人間なのかロボットなのか悩みます。

体の大半を人工的なものと交換されているが心は人間
だけど周囲からは人間ともロボットともとれる扱いを受け
戸籍まで外され、実際は死んでいることになっている。
そして自分の目の前では
醜い遺産相続問題すら勃発しているカオスな状況…。
人間と機械との曖昧な境界線で生き返ったレオナは
何が人間の本当の姿なのか苦悩していきます。
一方、別の時系列ではロビタが「自分は人間だ」と主張し始めます。
ロビタと言えば火の鳥における人間に愛される未来のロボット
このロビタが「私は人間だ」って言い出すわけですよ。
人間には逆らえないはずのロビタが
自我を持って発言、行動していきます。
シンクロするように世界中にある作業用ロボットロビタも
次々と自我に目覚め始めていきます。
そして臨界点を迎えた先にとんでもないことが起きてしまうんです。

ここからは読んでお楽しみの展開ということで…。
科学の領域を踏み越えて「人間とロボット」
今でいうAIと人類の共存におけるドラマがダイナミックに交錯していき
最後には「ロビタ~~~~!」って叫びたくなる
スペクタクルな展開を迎えます。
そして読者全員が興奮度MAXに到達するラスト
マジですごいですからね、
このラストは!
過去のエピソードとのつながりが徐々に明らかになっていきますし、
シリーズとの関わりに益々深みが濃密で濃厚になっていきます。
なんせあの「ロビタ誕生の秘密」が明かされますからね。

本作のみどころ
そんな見どころ満載の火の鳥「復活編」のポイントでありますが
考えさせられる要素としては、恐らく火の鳥最多だと思います。
ざっくり考えてみてもこのくらい浮かび上がります
●ロボットと共存する未来
●人間とロボットとの恋愛
●人間の定義とは(半分は人間?ロビタは人間?)
●人間臭さとは
●目に見えない世界が正しいのか
●何をもって死と言えるのか
●命の再生に手を加えるべきか
等々…まだまだありますけど
マンガの枠を超えたテーマがてんこ盛りすぎてビビリます。
本当に挙げればキリがないほど重厚なテーマが内包されていて
凄すぎて「スゴイ」という言葉しかでてこないくらいスゴイ。。。
故に、本作は読み解き方がかなり難しいし
読んでいるうちに何が正しいのか訳わからなくなってしまうので
最高傑作に挙げる人も多い反面、
意味不明という意見も同じくらいある作品でもあります。
そこで今回は思考の袋小路に陥って仕舞わないように
あえて3つに絞って解説してみます。
その3つとは
①人間とロボットの恋
②何を以て死と言えるのか
③人間臭さとは
最低限ここさえ押さえておけば「復活編」を楽しめるのではないかと。
①人間とロボットの恋
本作の主人公レオナは、交通事故により死亡、
そして体の大半を人工的なものと交換され「生き返り」ますが
これによって有機物と無機物の違いが分からなくなってしまいます。
有機物、生命体は歪んで見え、
無機質なものが清らかなものに見えちゃうんです。

これは深いテーマです。
実に深い。
目に見えるものを否定する描写
「ロボットに恋をしてしまった」という浅はかなメッセージに留まらない
虚構の美しさへの提言
一見すると人間が醜い生き物だからそう見えてしまうと
捉えてしまいがちですが
犬までもが歪んで見える描写がありますので
これは「目に見えるもの」と解釈する方が正しい解釈だと思います。
実際に目に映る世界は虚構で「○○」から見た本当の景色とはこうだ。
といわんばかりのメッセージのようです。
じゃあこの「○○」ってなんなんだろうって話なんですけど
これは人間とロボットとの境界線ということが言えるでしょう。
ここでは「人間とロボットとの恋」に絞って掘り下げますが
実はコレ、ボク的には非常に恐ろしいことだと思っています。
どうしても主人公目線で読んでしまうので
愚かな人間は醜く見えて、ロボットは純真で美しいと解釈してしまいますが
手塚先生は
「人間は愚かだ、だけど美しい」
という生命讃歌、人間賛歌を描いているのではと思われます。
つまり「復活編」は単なる
人間とロボット(チヒロ)との儚い恋の物語ではないという訳です。
レオナにはロボット(チヒロ)は清らかな美しい存在に見えています。
自分の思い通りになるロボットは、
一緒にいると楽しいし励ましてもくれるし自分好みの女性にもなる…
これって最高だし
そんな人がいたら間違いなく恋に落ちちゃいますよね
ゆくゆくは抱きしめたくなるし結婚もしたくなるでしょう。

でも、その先には絶対に進めないんです。
人間はロボットと恋に落ちても悲劇しか生みません。
つまりこれ(ロボットとの恋)は
子孫を残すという種族の生存本能を否定する行為とも言えます。
『火の鳥』シリーズを通して描かれる「生命」と「種の存続」
受け継がれる系譜で見ると
引き継がれないものは否定の対象なのです。
異形なものとの関係は成就しない
これは手塚作品の中でも結構出てきます。
「るんは風の中」という短編作品では
ポスターの中の女の子に恋をしてしまうストーリーですが
もちろん最後はハッピーにはならない

「やけっぱちのマリア」に至ってはダッチワイフですからね。
もちろん成就しません(笑)
本作でもサラリとこの伏線が
ランプ演じるボスと呼ばれるキャラクターの件で描かれています。
月の上で住むランプはアンドロイドの女と暮らしており
アンドロイドは
「私にできないのは子供を生むことだけよ」と言っています。
アンドロイドは寂しさを紛らわすだけの存在として描かれており
「生命」と「種の存続」について否定する存在として描かれています。
これは明らかにレオナがロボット(チヒロ)に恋をした対比描写でしょう。
人間とロボットとの恋愛について手塚先生は
科学の領域を飛び越えて「生命」に細工をしたとしても
人間以外のものとは紡いでいけないことを伝えていると思われます。
実際
体と脳が半分だけ人工物になったレオナは
本来は人間として扱われるはずがそうはなっていません。
半分だけの人間、
ハーフアンドハーフは人間じゃないとして描かれています。
再生医療を施した博士はレオナに対し
「君は人間として生き返った」と言っていますが
人間なのかロボットなのか分からないレオナは
「人間かロボットかはっきりさせてくれ!」
と問いかけます。
しかし博士は答えが出せず黙り込んでしまいます。

つまりこれは人間と機械のラブロマンスのようで
本質的には機械同士の愛情劇ということになります。
現に最後はレオナの意識だけがロボット(チヒロ)と融合でき
新しい生命体ロビタの原型に繋がるラストを迎えるわけですが
この点からも異形との交わりを否定していると言えます。
ロボットはロボットと結ばれる
人間は人間でしか結ばれないという答えです。
ロボット同士の恋物語を描きながら
「人間とはなんだ」を痛烈に問うてくる手塚治虫の神業。
そしてロボット目線からみた人間は醜くいものであるという描写は
人間自体が段々と無機質なものになっていってるよという
警鐘にも受け取れる凄まじい構成力です。
どの角度から見ても問いかけるメッセージが何重にも折り重なって見える描写はマジで凄すぎてビビリ散らかします。

ロボットとの恋なんて、
この先何年後かには確実に起こりえてしまう未来です
むしろAIに恋をしてしまうなんてことは現代で
すでに起こっていても不思議ではない世の中になっています。
手塚先生は、それらが進んでしまうと、
人類滅亡に繋がる重大な問題になり兼ねない
めちゃくちゃ危険な事なんだよという
命を操作しようとした未来へのアンチテーゼを描いているのだと思います。
思い通りになるのなら恋人も人間でなくてもいいじゃない?
恋愛も男女間の問題も煩わしいものがない方がいいじゃない?
常に争いの絶えない人間である必要性
人間って本当に必要なの?
そう思ってしまう思想に対して
一撃を喰らわしているのではないでしょうか。
面倒なことをすっ飛ばして
合理的に物事を進めていった結論でも必ずしも正しくはない。
実は一点の曇りもない未来を求めてもそこには未来はなくて
人間とは醜くも生きていく
人間性を失ってはいけない
人間として生きる上で醜くても辛くても這いつくばってでも生きていくこと
それこそが人間の美学
人間の本来の姿であるというメッセージを込めているのだと思います。
ロボットに恋をするというのは
大量生産品を好きになるということであり
「そんなもん好きになっちゃいかん!」…という
手塚先生のメッセージなのではないでしょうか。
テーマ3つのうち①人間とロボットの恋だけしか
解説していないのにこんなに長くなってしまいましたので
残りの②③は次回後編にてご紹介させていただきます。
すいません。
ではでは。
次回はこちらでどうぞ。
