政治家になって汚職するボードゲーム「ぜいきんであそぼ」を作って、政治家さんとやるまでの話
2024年の冬に差し掛かった頃。いつものように面白いことがないかと嗅ぎ回っていた。
そんなとき、ちょうど東京都知事選が佳境だった。初の立候補でぐんぐん票を伸ばしていた石丸伸二。それに相対する現職 小池百合子。
SNSはそれ一色に染まっていました。
なすかなさないかもよく分からない公約を掲げる政治家達。それに熱狂する狂信的な民衆。
そんな熱にあてられたのか僕は唐突に思いつく。これだけの熱狂を生んでいる政治家がもし汚職をしたら?
民衆に執拗に叩かれるだろう。
「あれほどの責任や期待を背負っておいて….」
「信じていたのに…..」などの言葉を浴びせられる。。。
下手をすれば刺されるかもしれない。
それでも、にも関わらず、やっぱり政治家は汚職をする(当時の僕の脳内には、政治家=汚職という雑な等式が出来上がっていた)。
なぜだ??
俺は問いたい!
君はそれを考えたことはあるかと。
お前は知っているのか、と。
血税を使って汚職をする快感を!
誰かの金で食べる焼肉の1万倍は気持ちいい快感を!!
あぁ、見たい。悪魔的な快楽に歪む政治家たちの顔を。それを間近で見る時の民衆の反応が….!
そこで、ボードゲームを作り政治家に擬似的にでも汚職をさせてみたい!
そして、いくら糾弾されようと抗えない人間の業があることを、その快楽を、汚職政治家を糾弾する有権者たちに分け与えたい。
そんな歪な思いからこのゲームの作成は始まった。

あいさつ
ご挨拶が遅れました。
『ぜいきんであそぼ』制作者のバンジョーです

みなさんは、汚職の快感を味わったことがありますか??
ぼくはあります。『ぜいきんであそぼ』で。
これは、僕が汚職の街と呼ばれる富山でボードゲーム『ぜいきんであそぼ』を作り、クラウドファンデイングで資金調達75万円を達成してゲムマ初出店で150部を売るまでの思いを綴ったnoteになります。
市議会議員38人中、14人が辞職 富山で本当にあった大汚職事件
みなさんは、富山県をご存知だろうか?
ほとんどの人はあまり馴染みがなく、場所もおぼろげな人が多いと思う。
冬になるとあたり一面雪で埋もれ、コンビニへの供給が滞り、なんのやることもなくなる。
だが、ホタルイカとブラックラーメンが美味しいのでそれに免じて仕方なく毎年許してしまうからなかなか捨て置けぬ。
人間の虫のいどころを土地が分かっている。そんな場所だ。

立山もきれいです
そんな富山県で議員38人中、14人が辞職してしまう(正確な数字を求む)世紀の大汚職事件が2016年に起こった。原因は政務活動費の不正受給。
印刷費の水増しが発覚して一番多い人では約695万円を不正受給していた。
僕が富山に来たのは2022年なので6年も前の話なのだが、この事件は大きく取り沙汰され地方議会汚職の象徴として映画化もされた。
僕はそんな最高に汚職まみれな富山という地で汚職のボードゲームを作ろうと思い立った。
制作開始は12月、その次の2024年5月には汚職事件以来、2回目の市議会総選挙が控えている。
なんとしてでも5月の市議会議員選挙直前にこのボードゲームを政治家さんにやってもらい、立候補中の政治家さんに汚職をしてもらいながら市議会議員選を楽しむ絵が見てみたい。
政治家に擬似的にでも汚職をさせてみたい!
同じ卓で、一般の人も汚職の快楽に顔を歪めてほしい!
そんな濃厚なカオスを現実で作り出すために僕らのボードゲーム制作は急ピッチで始まったのだ。

何ができるのか予測できないボードゲーム制作が始まる
とは思ったものの、僕は悩んでいた。
当然だ。
ボードゲームを作ったことがないのだから。はじめはひたすら、知人をたどりボードゲームを作ったことのある人に何度も聞いた。
そこでこんなことを言われた。
まずは、今あるゲームを真似したものを作ったほうが良いよ!っと
ふぁぁぁぁ!!!!!!
僕は思わずどこか得体の知れない島の、眠そうな顔した首の長い亀のような鳴き声を心の中で発した。
そんなゲームがあるなら聞いてみたい。政治家になりきって汚職ができ、かつ快感を味わえるゲーム。
仕方ないので、僕はボードゲームカフェに足繁く通い、政治がテーマのボードゲームを片っ端からプレイしたがまだなにかが足りなかった。
そこで、僕は更にリアリティを追求するために現役政治家の方や、もともと政治家だった方々へのヒアリングも同時に開始。
富山市議会に学生が政治家の期間限定秘書ができるという議員インターンとして応募し乗り込んだ。
何が面白いのかも分からない議会傍聴。
普段正午過ぎに起きる僕が、朝から政治家さんと子供イベントの手伝い。
はじめは正直、偏見しかなかった。議員という生き物について。
あたりまえである。俺は政治を知るためにここにいるのではない。
汚職の快感の真髄を知るそのためにここにいるのだ。
だが、それよりも先にこの経験を通して議員の真髄に触れ、、、理解した気がする。
会派ごとのバチバチな関係。お互いの信念に沿って、誠実に議論する人もいれば、お飾りのぺらっぺらなことしか言わない議員もいた。
議会質問という定型的な場で変化球を投げかけることで、その人の作られた一端ではなく芯の部分を垣間見ることのできる妙技。
そして、議員で見るべきは政党などではなく、その人が何を成したのか、そしてどんな信念を持っているのかだと知った。決してテレビから感じられない温度感だ。
本当に議員インターンで連れ添って頂いた政治家さんには沢山のことを教えていただいて感謝しかなかった。
一生かけても政治家を画面の向こうの存在だと一方的に線を引き、youtubeのコメント欄からしか政治の知識を収集しようとしない僕が本物を肌で学ばせてもらった気がした。
後にこの経験のおかげで、、自分なりに汚職の快感とはなにかを実地の声と沢山ボードゲームをやる中でうまく落とし込むことができた。

水泳初心者は最初から海で泳ぐのではなくまずは顔をつける練習をしたほうが良いという話
ここで少し、ボードゲーム制作の話をしよう。
ボードゲームを作るときに、2つのパターンの作り方がある。
1つ目は、比較的かんたんな形。
「既存のボードゲームのルールを少し変えて、自分たちのルールにする」というものである。
というのも、インディーズのボードゲームの走りはボドゲ通が好きなボードゲームをする中で勝手にオリジナルルールを生み出してプレイする。そのオリジナルルールを別ゲームにしたら更に面白くなるんじゃね?
と言ってゲームを作り出す人が多いからだ。
そして、2つ目の形は「自分たちの頭の中で最初にこんな感情になったらいいとか、こんな必殺奥義決めたいよね、みたいなのを最初に決めてそこから逆算してルール設定をする、ビジョン型」である。
これは何個かボードゲームをつくり、ある程度、ボードゲームのルールを理解した制作者がやることが多く1つ目よりも明らかに難易度が高い。
そう。お察しの方も多いだろう。
僕は全くボードゲームの作り方を知らないのに2つ目のやり方でボドゲ制作の海に頭からツッコミダイブして、汚職の快感を味わいたいという目的地のわからない小島までひたすら泳ぐということをしていたのである。
ちなみに顔を水に付ける練習もしていない。
はじめは一人で迷走の連続だった。。。
あの男が来るまでは……!!
ヒーローことヤマダリクトは遅れてやってくる
何度も記述しているように僕はボードゲームを作ったことがない。
だから、ボードゲームのシステムを他の人に考えてもらうなどという発想も当時はなかった。
自分が作れるアイデアの出力を他の人もするだけだろう。
自分の信念に共感して一緒の熱量をもって 作ってくれる人間なんて現れないから、自分以上のゲームシステムを提案できるやつなんていないんだ!!
本気でそう思っていた。
そんなときに彼はやってきた。
そう知る人ぞ知る。知らない人は全く知らない。
みなさん、ご存知あげないだろう ヤマダリクトだ

このnoteは彼の英雄譚だと断言しても過言でない。それくらいリクトさんのおかげでこのゲームは形になった。
もちろん、リクトさんもボドゲ制作は始めてであった。だが無類のボドゲ好きであり、先は音楽からあとはオリジナル次郎ラーメン作りまで、リクトさんの周りで下を向く人はいないほど盛り上げ上手なLv999の最高のエンターテイナーなのだ。
りくとさんは、「汚職できるボードゲームを一緒に作りましょう!」という僕の何が言いたいのかよくわからないメッセに「おもろそうだからやろう!」と快くメンバーに入ってくれた。
フットワークが軽いとかそういうのではなく、もうリクトさんがフットワークなのだ。
ここで皆さんに最初に僕が小さい頭でひねり出したゲームシステムでリクトさんに見したボドゲの初期案を共有したい

自分で言おう。
クソである。
僕はパズーのようにナイフとランプをカバンに詰め込み、父さんが残した熱い思いと母さんがくれたあの眼差しで生きているような人間である。(両親は健在である。)
これを持っていってよく作ろうと言えたなと、精神の図太さが巨神兵くらいである。
こんな僕の初期案とこんなことをしたいという熱い思いをリクトさんは熱心に聞いてくれて、数多のボードゲームから要素を取り出し、具体的なシステムを考えてくれた。
感謝しかない。
そして、1月の中旬、何回かの打ち合わせのあとリクトさんから初稿が上がってきたのである。これがぜいきんであそぼの原点である。

僕の初期絵と見比べてみてほしい。ありがとうリクトさん。天才です。
この初稿の時点で、今の『ぜいきんであそぼ』の7割を作ったと言っても過言ではない。
『ぜいきんであそぼ』は1%の僕の歪なひらめきと99%のむちゃぶりでできているゲームである。
本当に、リクトさんが仕事が終わったあとに毎夜毎夜、ズームで一緒に作業していただけたことには感謝しかない。
ボドゲ制作の一番の醍醐味にそっとふれる
そんなこんなで2月、3月はテストプレイだけを重ねた。
リクトさんの初期案を基に沢山の学生を呼び、色々な人にこのボードゲームをやってもらいながら何回も何回もテストプレイを重ねた。

最初はA4の紙にただカードの効果をなぐり書きするだけだった。
ボードゲームを作ろうと言い出して、すぐに紙に書いて遊んでみるスピードスタートができたのは、久高さんのおかげである。
実際にプレイしながら、各メンバーの意見を交え、トライアンドエラーの繰り返しでゲームを修正していった。
この過程で面白いのは、基盤はリクトさんが作ったのだがルールを修正する過程でチームメンバー各々のエッセンスがルールに加わっていったことだ。
たとえばぜいきんであそぼの「交渉制度」これは明らかにテストプレイにも関わらずゲームの穴や裏をかこうとする久高さんによるもので生まれた。
テストプレイ中にルールを捻じ曲げようと懸命に交渉してくる久高さんがもととなり、いつの間にかゲームで交渉する余白が生まれ、今では一番の醍醐味となっている。
僕のエッセンスで言うと捨てきれない「汚職の快感」というリアリティの追求。ゴールが明確ないこの感情は、具体的なボードゲームのシステムの改善案が提示できなかったため何度もゲームシステムのリクトさんと対立することがあったが、たまたま生まれた交渉という要素も重なりこのぜいきんであそぼでは納得いく形で再現できた。
ボドゲ制作の醍醐味とは各々の個性と主張が交わり一個の作品として昇華されることである。
それはルールをはじめキャラビジュアルからコンポーネントに至るまである意味キメラ的なそれであり、ルールシステム一つとっても見ていてとても面白い。
この出来事から僕がボードゲームをやるときも一つの物体としてみるのではなく無数の個性の集まりとして体験を味わうように少し変化した気がする。

左:リクト 右:久高(クダカ)
政治家さんに汚職を頼みに行こう!
そんなことがあり、ゲームシステムを完成させ4月中にラミネートで自作ゲームを自分たちで作りおえることができた。

ついに市議会議員選挙の5月に差し掛かる。
先の話に戻り、議員インターンをするときに政治家になりきって汚職できるボードゲームが作りたいんです。と流石に言うわけにも行かなかったので、僕は黙ってインターンに参加していた。
だが、ここで打ち明けなければいけない。政治家を馬鹿にするのではなく更に政治家という生き物について学生に教えて頂くためにぜいきんであそぼのテストプレイ会に参加してくださいというために。
後に、会派でもボードゲームに意見が割れた。と言っていた。
その政治家さんはインターン中の僕の提案を喜んで受け入れてくれた。
そして、僕の汚職ボードゲームを政治家にやってもらうという願望は政治家について市議会議員選挙前に更に学べるワークショップという形で開催が決まったのだ。
一部目は政治家による富山の大汚職についての解説
二部目は政治家とぜいきんであそべるワークショップである笑
だが、ここで問題が起こる。
今回の5月の市議会議員選にはなんと、あの汚職事件で8年前に職をおわれた市議会議員たちが立候補するというのだ
その結果、候補者数は議席38人に対して51人に急増
事件後当選した市議会議員と、元職との一騎打ちの構図が繰り広げられるのであった。
ここに来て過去キャラの参戦!
正直、萌えた。
文字は決して間違っていない。
いや大好きだ。君たちのそういうところ。
ぼくは人らしい人を。一度や二度職を追われようが自分の余すことない権力と威厳を使って打ち勝とうとする立候補者、君たちに萌え萌えなのだ。
ほぼ醜い腹を丸出しで歩いているが、それを隠せていると思っている、そんなところが大好きである。
だから僕は、そこに政治家汚職ボードゲームという異物を置くことにした。
俺も、自分なりに最高の萌えと狂気で対抗することにした。直接手を下せるわけでも戦えるわけでもないけど。
「待っていたよ。」
なぜか、この瞬間のためにイベントを作った気がした。
とうとうイベント当日が訪れる・・・
僕のボードゲーム会の日が訪れた。
第一部は現役政治家による汚職談義。
学生たちが質疑応答できる形で富山の汚職について語り尽くせる時間なのだ。
なぜ、彼らが印刷代の水増し請求をしてしまうのか、富山市議会にはなぜ自民党会派が2つもあるのか、富山県という小さな県の中で起こっている政治闘争の概要を政治家さんは事細かに説明してくれた。
来てくれた学生たちが「そんなこと現実にあるんだ!」と笑いながら馬鹿した次の瞬間、その延長線上の土地で自分が生きているのだとふと我に返る瞬間。僕はその瞬間の表情がとても好きであった。

第二部は、いよいよ政治家と汚職できるコーナーであった
あっちも汚職、こっちも汚職、イベント会場は黒一色であった。
言わずもがな、皆笑っていた。
あまりにも笑いが止まらなくて困っていた。
学生、政治家とわず確実に汚職の快感に触れていた。そんな時間だった。
政治家さんがゲーム上で汚職カードを使ったときは大盛りあがりであった。

僕は学生たちにどれだけ富山の政治を伝えられただろうか。
どれだけ汚職の快感を伝えられただろうか、またその快感からどれだけ富山という地の政治の脆さを読み取ってくれただろうか。
だが、確実に僕が見たかった風景は残すことができた。
学生と政治家が笑って汚職している世界。それすなわち狂気である。
汚職したら、糾弾するクセにその快感から逃れられない有権者と本職があるのにゲームをもってその意味を必死に伝えようとしてくれている政治家。
最高にあたまがおかしいイベントであった。
この、ぜいきんであそぼがその場に一定の狂気を生み出しつつも関心のない若者も政治について実感し触れる一歩になり得るゲームだとそんな手応えをこの日確かに感じることができた。
あの、歪んだ笑顔を更に広めたい。もっとこの快感に溺れて、快感を知っているのに糾弾してしまう有権者が一生感じるようなギャップを感じながら人生を謳歌している人を量産したい。
そんな思いの強まりから、僕はこのゲームを製品化するとこの日強く決めたのだった。

他の個性豊かなメンバー達についても語りたいからもう少しだけ時間をください
ついでみたいになるが他のチームメンバーのことも独断と偏見で綴っていく。
【久高さん】

『ぜいきんであそぼ』、というタイトルをつけたのは久高さんである。
チームのファシリテータ的役割で、本を読むのが好きで、会議を円滑に進めたり、本業はライターでもあるため言語化のスペシャリストである。
面白がることに対して真剣過ぎて、面白ベースというコミュニティを作り、面白がることを強要する(笑)パワハラオバケである。
ケツ叩き役でもあり、僕とリクトさんがこだわりでぶつかったときにその拳の理由を事細かに分析することによってお互いの拳を正しい方向に向けてくれる、そんな人である。
ただし、見ているだけで心配になるくらい体が弱いという欠点があるので心配だ。毎回会うたびに元気なのを見ると、久高さんが必死に生きているなら、今日くらいは頑張って生きてみるかと勝手に生の活力をもらってしまう。
【ちっぴーさん】

あっちもこっちもそっちもちっぴーさん。
というくらい富山ではどこにでもいるし、皆知っている。
ぜいきんであそぼではsnsを担当してくれてツイ廃である。
ゲストハウスを経営していて学生たちの拠り所的なコミュニティや雰囲気を作るのがうまい!!!
僕思うにちっぴーさんの一番の良さとはいい意味で主体性のなさだと思う。
ちっぴーさんは、自分がなにかに参加することよりも人と人とを引き合わせることによって生まれお互いが起こす化学反応や衝突が好きである。
そこでの、ちっぴーさんは引き合わせるという人と人をまぜる。だけの行為をする。ただそれだけなのである。
だが、引き合わせたあとに引き合わせられた二人が仲良くなるのを見て、狂気的にやりがいに満ちた引き笑いをするちっぴーさんを見ていると本当の主役はおまえだぜ。と言いたくなる時がある。
僕も与えてくれたその出会いにちっぴーさんの影を忘れないように生きたいと勝手に思っている。
以上がぜいきんであそぼを作る愉快な面々である。
