変な話。|15:00の宣告
短編ですが、夏なのでゾワっとする
ちょっとだけ怖い話を
書いてみました。苦手な方はここまでで...結構怖いかも?夏だった。
蝉がうるさく鳴き、照りつける日差しの中、
私はみんなと外で遊んでいた。
午後三時前になると、
決まってあの老婆は現れた。
暑いのに、なんとなく樟脳のにおいがする
黒い大きな羽織をまとっている。
顔だけは、どうしても思い出せない。
そして、なぜかみんないたのに、
その時だけ誰もいない。
母が心配そうに言った。
「あんた、顔色悪いで」
私は、小声で打ち明けた。
「あんな、なんか怖い感じの
おばあちゃんに話しかけられるねん……」
「ほんでめっちゃ怖いこと言われるねん」
「あんた、〇月△日の15:00に死ぬよ」
「そんなん、絶対うそや!絶対外に出ーへんし」
「何があっても、どこにいても絶対に死ぬ」
「でも助かる方法が1個だけある。」
「……なんやねん?」
「信じてないけど、一応……教えといて」
「大丈夫。直前に、他の誰かに触ったらいい……」
「その人が代わりに死んでくれるよ。」
不気味に笑いながら言った。
ーーそんなことできるわけがない。
そして、その日が来た。
時間が迫っていた。
時計をじっと見つめる。
秒針の音がやけに大きく感じる。
チッチッチッチッチ……
手を祈るように組んだ。
「大丈夫、絶対にそんなはずない」
冷や汗が止まらない。
心臓が破裂しそうだった。
1分前。
「あかん、怖い」
無我夢中で外に走って出た。
息が苦しい。
あたりを見渡した。
誰もいない。
〈あ、誰かきた!〉
〈大丈夫やんな、死なへんよな〉
私は、走って行って
通りすがりの
知らないおばちゃんの腕をつかんだ。
ビックリして振り向いた笑顔が……
ゆっくり歪んだ。
首筋に赤い横線が一本走る。
ドサッ。
落ちたものが
こちらを見ているような気がした。
「ギャーァァァ……」
〈うそや!うちのせいで人が死んだ!!〉
ーー私は、身体中の血の気が引いて
足元から体が崩れ落ちた。
また、あの老婆が目の前に現れた。
泣き崩れる私を見て笑っている。
「ほらね」
「ギャーァァァ……」
「はぁ、はぁ、はぁ……」
「またや……」
「姉ちゃん、またあの夢?」
兄弟は心配そうに私の背中をさする。
この夢が、毎日毎日続いた。
〈なんで?毎日同じ夢みるん?なんでなん?〉
しばらくして、
なんとなく……
この枕に違和感を感じるようになった。
そば殻なのに触ると妙に冷たいような……
この枕は祖母が私のために作ってくれた枕だ。
「大きい枕は、首が痛くなるから作っておいたよ」
そう言って祖母は笑っていた。
代々続く、鹿児島の祖父母の古い家。
そこの布団部屋にあった大きな枕を、
私用に小さく作り直したものだった。
私は、その枕を押入れの隅っこにしまってみた。
ーーもうその夢はみなくなった。
それから、我が家ではその枕を
『夢まくら』と呼んでいた。
祖母が作ってくれた枕だったので、
しまっておいたはずなのに
いつしか消えていた。
誰が使っていた枕なのかは、
ーー最後まで、わからない。
今でも、ときどき実家の押し入れを開ける。
あの小さな枕は、今も見つかっていない。
