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AI時代に強いエンジニアは「コードより翻訳」ができる人だった


#AI時代のスキル #エンジニア #営業vs技術 #春闘2026 #実質賃金 #国内回帰 #経済安全保障 #国際標準 #ザワ4チャンネル


📌 この記事で分かること

  • AI時代に価値が上がるのが、単なる「技術力」ではなく「技術を他部門の言葉に変える力」である理由

  • 三菱電機の標準化戦略、春闘の賃上げ、抗菌薬の国内回帰が、実は同じ構造でつながっていること

  • これから個人が磨くべきスキルが、なぜ「プログラミング一本足打法」では足りないのか


🔌 雑学フック:USBが便利なのは、技術がすごいからだけじゃない

USBが便利なのは、差し込み口が統一されているからだ。

当たり前すぎて忘れがちだけど、あれは「いい技術があった」だけでは成立しない。メーカー同士で規格をそろえ、部品を量産し、周辺機器メーカーも乗って、売る側も説明しやすくなって、ようやく「誰でも使える便利」になる。

会社の中も同じだと思う。

どれだけ優秀なエンジニアがいても、営業に伝わらない。経営に伝わらない。制度や標準に乗らない。現場に実装できない。このどれかが起きると、技術は「すごいのに儲からない」で終わる。

AI時代に価値が上がる人材は、コードを一番速く書く人だけじゃない。技術を、営業・経営・制度・現場の言葉に翻訳できる人だ。

今日はその「翻訳力」を、4つの角度から掘ってみる。


第1章 「仲の悪さ」は性格じゃない――評価軸のズレという構造問題 🔍

技術職と営業職が「犬猿の仲」だと言われて久しい。IT業界でもメーカーでも、この溝は業種を問わない。

これ、よく「コミュニケーション不足」で片付けられるけれど、本質はそこじゃない。

営業は売上で評価される。技術は品質と納期で評価される。見ているKPIが違えば、同じ結論に至るはずがない。もっと言えばアイデンティティそのものが違う。営業は「俺たちが数字を作っている」と思い、技術は「俺たちが価値を生んでいる」と思っている。異なるゴールを持った人間が同じ意思決定を下すことは、構造的にありえないのだ。

▼ 営業と技術の「見ているもの」の違い

          ┃  営業            ┃  技術
━━━━━━━━━━╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋━━━━━━━━━━━━━━━━━
 KPI      ┃  売上・受注数    ┃  品質・納期遵守
 言語     ┃  顧客価値・競争  ┃  制約条件・再現性
 時間軸   ┃  今期の数字      ┃  中長期の品質
 恐怖     ┃  失注            ┃  技術負債
 誇り     ┃  数字を作った    ┃  価値を生んだ

ここに**「数字と実態のズレ」**がある。

2026年春闘の連合集計によると、賃上げ率は全体平均で5.09%(第3回集計)。300人未満の中小企業も5.00%と高水準が続き、賃上げ分(ベア相当)では中小が3.68%と全体の3.58%を上回った。連合福岡の集計でも中小の5.41%が大企業の5.25%を超えている。

数字だけ見れば「中小も頑張っている」となる。

だが現実はどうか。業績が改善していないにもかかわらず人材確保のために無理して賃上げする「防衛的賃上げ」の割合は、賃上げ実施企業の60.1%に達する。2025年の人手不足倒産は過去最多の397件。つまり**「賃上げしているのに辞める」「賃上げしたから潰れる」**という矛盾が同時進行している。

なぜ辞めるのか。給料じゃない。「自分の仕事が正当に評価されていない」という感覚だ。技術者にとって、営業が取ってきた無茶な案件を黙々とこなしても評価されるのは営業の数字。この構造的な不公平感が、賃上げでは埋まらない離職の根っこにある。


第2章 AI時代のエンジニアスキル=「翻訳する力」だった 🔄

ここで、日経の見出しにもあった「AI時代に効くエンジニアのスキル」の話に入る。

レバテックの「IT人材白書2025」によれば、IT人材を採用する企業の約4割が「生成AIの登場でエンジニアに求めるスキルが変化した」と回答。そして、より重要になったスキルの1位は**「コミュニケーションスキル」で48.3%**だった。

【体験談:発見型】
正直に言う。この数字を見たとき、最初は「また出たか」と思った。「これからはコミュ力だ」なんて20年前から言われている。AIが出てきたらまたコミュ力。結局それかよ、と。ところが、@ITの分析や世界経済フォーラムの「Future of Jobs Report 2025」を読み込んでいくと、中身がまったく違っていた。「上流工程」「要件定義」「ビジネス理解」というキーワードが繰り返し出てくる。「これ、結局20年前にベテランSEが言っていた”お客さんが本当にやりたいことを引き出す力”と同じじゃないか」。言葉のラベルが変わっただけで、本質は同じ。変わったのは、その力を持っていない人がAIに置き換えられるリスクが具体的になったことだけだ。

@ITの分析(2026年1月)が整理した「AI時代のエンジニア4つの新ロール」が示すのは、エンジニアの仕事が「コードを書く人」から「AIを指揮してシステムを構築・運用するプロフェッショナル」へ移行しているということだ。仕事の量が減るのではなく、「重心が移動している」

▼ エンジニアの時間配分の変化

               ┃  2024年        ┃  2026年モデル
━━━━━━━━━━━━━━━╋━━━━━━━━━━━━━━━━╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 コーディング  ┃  約60%         ┃  大幅減
 設計・判断    ┃  少なめ        ┃  約70%(判断+レビュー)
 AI指示出し    ┃  ―            ┃  新規追加
 品質・安全    ┃  少なめ        ┃  拡大

この「判断」に必要なのが、実は営業サイドが持っている「顧客は何に困っているか」「市場は何を求めているか」という文脈情報だ。

つまりAI時代のエンジニアに求められる「コミュニケーションスキル」とは、「感じよく話せる力」ではない。**「技術と事業の文脈を翻訳する力」**であり、昔から言われてきた「要件を言語化する力」そのものだった。

ここにスケール破綻の構造がある。個人のスキルとして「ビジネス翻訳力」を持つエンジニアはいる。だがそれを組織として標準化・再現できている会社がほとんどない。属人的なスーパーSEが1人いるだけでは、AI導入が部門を超えて広がらない。

本当に効くのは、たぶんこの4つだ。

▼ AI時代に価値が上がる4つの翻訳力

❶ 技術を非技術者の意思決定単位に変換する力
❷ 部門間の利害を同じ盤面で見せる調整力
❸ 制度・標準・規制を読み、勝ち筋を設計する力
❹ 資料で終わらず、現場で回るまで持っていく力

AI時代に価値が上がるのは「全部できる超人」ではない。専門を持ちながら、隣の専門と接続できる人だ。

ここで一つ問いかけたい。あなたの職場で、技術と営業が「同じ言語」で話せている場面は、どれくらいあるだろうか?


第3章 強い会社は「いいモノを作る」で止まらない――ルールそのものを作る 🏛️

この話を企業レベルで見ると、三菱電機の動きがわかりやすい。

同社本社11階の法務部門の隣に「産業政策渉外室」という30人の部隊がある。EUなど海外当局へのロビイングを担う専門チームだ。2027年12月に全面施行されるEUサイバーレジリエンス法――FA機器の製造担当者が「24時間なんて到底無理だ」と悲鳴を上げたこの規制に、三菱電機は「先読み」で対応した。国際規格の策定段階から入り込み、自社技術を標準に織り込む。

同社は公式資料で、IEC副会長など国際標準化機関の要職を含む600名超がルールメーキングに関わっていると説明している。さらにCC-Link IE TSNについて、IEEEで規格化が進むTSN技術を産業用ネットワーク分野に取り込み、早期に国際規格を取得した。

「技術で勝って規格争いで負ける」という日本企業の定番パターンを、ロビー活動で打ち破ろうとしている。

これは大企業だけの話ではない。個人の立ち回りでも同じことが言える。「自分はこんなに高度な技術を持っているのに、なぜ評価されないのか」と嘆く人は、社内や業界の「評価のルール」を理解していないことが多い。

ここで必要になるのが、また「翻訳」だ。

▼ 技術を利益に変える「翻訳の連鎖」

研究所の技術
  ⬇️
知財の言葉に変える
  ⬇️
標準化の言葉に変える
  ⬇️
営業の勝ち筋に変える
  ⬇️
量産投資の判断材料に変える

この連結ができる会社だけが、「すごい技術」を「儲かる技術」に変えられる。


第4章 拠点を戻しても人がいない――国内回帰が突きつける「物理の壁」 🏭

AI時代の翻訳力が試されるもう一つの現場が、国内回帰だ。

象徴的なのがMeiji Seikaファルマの動き。同社は2025年12月、岐阜工場でペニシリン系抗菌薬の出発原料「6-APA」の生産を約30年ぶりに再開した。中国にほぼ100%依存していた原料を、経済安全保障の観点から国産化するプロジェクトだ。

2028年までに富士フイルム富山化学、大塚化学と3社で原薬生産体制を構築し、2030年からの純国産抗菌薬の供給を目指す。設備は数百億円を投じて新設できた。

だが問題は人だ。

同社の強みは、岐阜工場に「原薬製造に関わってきた経験者・作業者が多く所属しており、ノウハウが保たれている」こと。1971年に操業を開始し1994年までペニシリン原薬を製造していたこの工場に、生産菌株、大型培養設備、そして何より経験者がまだ残っていた。30年前の製造を知る人間がいたから再開できた。これがもし10年遅ければ、設備は作れても動かせる人間がいない事態になっていた可能性がある。

【体験談:仮説崩壊型】
「賃上げすれば人は残るだろう」――多くの経営者が持つ仮説だ。しかし2026年2月の実質賃金は前年比+1.9%でプラスを維持しているものの、その中身を見ると、ガソリン減税や電気・ガス補助による物価押し下げが大きく寄与している。イラン情勢の緊迫で原油が高騰すれば、再びマイナスに沈む可能性がある。名目の賃上げ5%と手取りの実感の間にはかなりのギャップがある。さらに、中小企業で賃金改定率が1%を下回った企業の割合は前年から5ポイント上昇した。賃上げだけでは技術者は残らないし、技術の継承も進まない。この仮説は、データで崩された。

ここに**「理想が現場で死ぬ過程」**が見える。

AIは議事録を作れる。需要予測も手伝える。工程データも解析できる。でも、発酵槽そのものは作れないし、排水処理設備の代わりにもならない。AI時代に残る価値の本丸は、ソフトとハード、制度と現場、採算と供給責任を全部つなげて回せる人だ。

政策として「国内回帰」を掲げても、それを支える人材が育っていなければ絵に描いた餅。補助金を使って設備だけ作り、結局稼働率が上がらないという事態に陥る企業が出てくるだろう。

技術者をつなぎとめるものは何か。営業が「あなたの仕事にはこういう意味がある」と顧客の声をフィードバックすること。経営が「あなたの評価軸はこうだ」と納得感のある基準を示すこと。これから来る賃上げの波は、単なる景気の話ではなく、「橋渡しできる人材の希少化」に値札が貼られ始めた現象として読むべきだ。

あなたの組織では、「技術の翻訳者」に正当な値段がつけられているだろうか?


📝 まとめ

① 営業と技術の断絶は、個人の相性ではなく評価軸の構造問題。 賃上げ5%でも防衛的賃上げが6割。数字だけでは人は動かない。

② AI時代のエンジニアスキルの正体は「翻訳力」。 コードを書く速度ではなく、技術を事業価値に変換し、事業ニーズを技術仕様に落とす力が問われている。

③ 三菱電機の標準化も、春闘の賃上げも、Meiji Seikaの国内回帰も、全部「つなげて回せる人材の不足」を示している。 専門性を持ちながら、隣の専門と接続できる人――AIが広がるほど、最後に足りなくなるのはコードではなく翻訳者だ。


ザワ4だけの一言。 💬

「営業vs技術」は永遠のテーマみたいに語られるけど、もうそんな悠長なことを言っている時間はない。AIがコードを書く時代に、人間にしかできない「翻訳」――技術を事業価値に変換し、事業のニーズを技術仕様に落とす――この仕事ができる人間が、営業側にも技術側にも圧倒的に足りていない。足りないまま国内回帰だ、賃上げだ、AI導入だと看板だけ掛け替えても、現場は回らない。数字は嘘をつかないが、数字だけでは人は動かない。


※この記事はザワ4チャンネルの分析視点でお届けしました。スタエフでも解説しています。

#AI時代のスキル #エンジニア #営業vs技術 #春闘2026 #実質賃金 #国内回帰 #経済安全保障 #国際標準 #ザワ4チャンネル

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