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n_hirune
フォーリー・ナイト
「ダメだ、やっぱムリ」
僕は口に運びかけたパスタから顔を背けた。
「イブまであと2週間なのに…」
彼女は落胆して帰っていく。
部屋に冷めたパスタと僕、そして奴が残された。
◆
僕は昔からディナーフォークが怖い。
あの長い、鋭い切っ先。自分で自分の口に入れるなんて寒気がする。
人生初の恋人にそう告白すると、彼女の顔色が変わった。
「イブは絶対、青山でイタリアン食べるの!」
それから毎日格闘が続くが、恐怖心は一向に改善しない。イブに彼女憧れのお店でディナー。その夢は叶えてあげたいのに。
放り出したフォークを見つめ、僕は呻いた。
神様、どうすりゃいい?
◆
ボーイがチラチラと僕らを見ている。別に気にしない。
「ね、おいしい?」
「最高!」
彼女の顔が輝く。
「ハイ、あーん」
絶品のパスタをのせたフォークを、互いの口に優しく運び合う。
こうすれば恐怖は半減、おいしさが2倍。
克服の方法はすごくシンプルなことだった。
聖夜、僕らにフォークの神様が降りてきたんだ。
