見出し画像

年商6億の会社を回しながら気づいた、マーケットの「相転移」市場が突然変わる瞬間をどう観測するか

noteを読む前に!記憶の定着の話をひとつ。
エビングハウスの忘却曲線の話。
人は20分後には42%1日後には74%程度も忘れると言われています!
記憶を定着させるには、忘れる前(特に24時間以内)に繰り返し復習し、
間隔を空けて再学習(間隔反復)することが効果的です

エビングハウスの忘却曲線の話。
是非noteを読んで、
・気づいたこと
・感銘を受けたこと、
・実践したいと思ったこと
を自分でメモにまとめるたり、
生成AIで壁打ちして振り返ると
より深い学びになります!

 また、読んだ感想を一言でもいただけると、励みになります!
是非コメント欄でおしえてくださいね!

年商6億の会社を回しながら気づいた、マーケットの「相転移」
市場が突然変わる瞬間をどう観測するか

Z Observer|観測の技法

市場は「じわじわ」変わらない。ある日、突然変わる。


長く商売をやっていると、不思議な体験をする。

昨日まで売れていたものが、今日から急に動かなくなる。逆に、ずっと地味だった商品が、ある週から爆発的に出ていく。取引先のバイヤーが、半年前まで後ろ向きだった商品を「ぜひ強化したい」と言い出す。

「需要の変化」とひとことで言うのは簡単だが、現場でそれを目の当たりにすると、もう少し複雑な感覚がある。

変化は「連続的」ではなく、「不連続」に起きる。グラフで描けば、なだらかな曲線ではなく、ある点を境に折れ曲がる、階段状の動きをしている。

私がこの現象を説明するために借りてきた概念が、物理学の「相転移(phase transition)」だ。


相転移とは何か──物理学からの借用

物理学において、相転移とは物質が「水→氷」「水→水蒸気」のように、ある閾値を超えた瞬間に性質ががらりと変わる現象を指す。

重要なのは、この変化が「連続的」ではないという点だ。

水は0℃に近づくにつれ、少しずつ固まるわけではない。99℃でも液体、100℃で突然沸騰する。その手前では、エネルギーを加え続けても「見た目は何も変わらない」時間が続く。そして、ある閾値を超えた瞬間、性質が一気に切り替わる。

さらに重要な概念がある。「潜熱(latent heat)」だ。

水を加熱し続けても、沸点に達した後、水が完全に水蒸気になるまでの間、いくらエネルギーを加えても温度計の数字は変わらない。エネルギーは確かに吸収されているが、外部からは何も変化していないように見える。この「見えない変化の蓄積」が潜熱だ。

市場も、まったく同じ構造をしている。

表面上は何も変わっていない。しかし水面下では、変化のエネルギーが溜まっている。そしてある閾値を超えた瞬間、市場全体が「別の相」へと移行する。

これが私の言う「マーケットの相転移」だ。


食品業界で実際に起きた「相転移」の記録

抽象論だけでは伝わらない。ここからは、実際に食品業界で起きた相転移を、データとともに見ていこう。

■ 相転移① 冷凍食品市場(2020年)

【蓄積期:表面上は静かだった20年】

コロナ禍以前から、共働き世帯の増加・冷凍技術の向上・時短ニーズの高まりという「蓄積エネルギー」は存在していた。しかし消費者の認識は長らく「冷凍食品=手抜き・利便品」であり、売場面積は小さく、バイヤーの優先度も低かった。

これが潜熱の段階だ。変化のエネルギーは確実に溜まっていた。しかし、それは数字にも、商談の雰囲気にも、表れていなかった。

【臨界点:2020年という分水嶺】

コロナ禍の巣ごもり需要が、長年蓄積してきたエネルギーの「引き金」となった。国内冷凍食品市場のボリュームは2020年を機に大きく上昇し、米国では2020年の小売売上高が前年比21%増の651億米ドルに達した。世帯普及率は99%にまで達している。

【相転移後:売場が変わり、商談が変わった】

2023年度の日本の冷凍食品市場規模は前年度比7%増の8,625億円。コロナ前の2019年比でも2%増で、「コロナ禍以前よりも市場は広がった」状態が定着した。

ダイエーの「冷凍dai革命」では一部店舗で売上が計画比50%超となるなど、売場の拡大と発注行動の変容が続いている。

そして何より、消費者の「認識ラベル」が書き換わった。「冷凍食品=手抜き」から「冷凍食品=賢い選択・タイパ」へ。この認識の転換こそが、相転移の本質だ。

■ 相転移② フードデリバリー市場(2020年)


【蓄積期:「便利だが割高なサービス」の時代】

Uber Eatsが日本参入したのは2016年。しかしコロナ前の2019年、国内市場は約4,000億円程度に過ぎず、若年層やアーリーアダプターが使う「便利だが割高なサービス」という認識が支配的だった。

【臨界点:外出自粛という強制的な行動変容】

「飲食店に行く」という選択肢が事実上消えた。これが消費者に強制的にフードデリバリーを「試させる」機会となり、初期の心理的障壁を一気に突き破った。

2021年の市場規模は8,450億円(前年比34.6%増)と急拡大し、2024年には1兆1,280億円と初めて1兆円を突破した。

【相転移後:「普通の買い物」として定着】

最も重要な変化は「利用者の広がり」だ。当初は20代・都市部が中心だったが、2024年時点では40代(42.8%利用率)や50代(28.5%)にも浸透。サービスは「意識高い系の選択肢」を卒業し、普通の消費行動として定着した。

食品宅配市場全体の2024年度規模は2兆6,380億円。2029年度には2兆9,174億円への拡大が見込まれており、「食品宅配サービスは生活に根付いた存在となっている」という状態が続いている。

■ 相転移③ ネットスーパー──「低いEC化率」という壁を越えた瞬間


【蓄積期:「成長余地は高いが普及しない」市場】

日本の食品EC化率は2019年時点でわずか2.9%。電化製品(32.75%)など他分野と比べ極めて低く、「成長余地は高いが普及しない」市場と長年分析されていた。

ネットスーパー自体はコロナ前から存在していた。しかし「重い荷物を持って帰るのが面倒」という潜在ニーズはあっても、「わざわざ登録して使うほどでもない」という認識の障壁が変化を抑制していた。これが潜熱の段階だ。

【臨界点:感染リスクという行動制約】

「スーパーに行くこと自体がリスク」という状況が、消費者に強制的にネットスーパーを「試させる」機会となった。

2020年のECによる食料品支出額は前年比54.6%増と急増。楽天西友ネットスーパーは2020年10〜12月に前期比39.9%増、ライフコーポレーションのネットスーパーは前年同期比50%増となり、主要4サービスのユーザー数はいずれも2020年1月ごろから著しく増加した。

【相転移後:「日常の買い物」として定着】

富士経済調査では2023年時点で3,040億円、2025年には3,710億円への拡大が予測されており、「コロナ禍を経て、ネットスーパーは消費者の生活に深く根付いた」と評価されている。食品EC化率は2024年度4.52%まで上昇し、コロナ前から構造変化が着実に進んでいる。

この事例が教えてくれるのは、「使ってみれば便利なのに、使う機会がなかった」という市場に、強制的な体験機会が与えられたとき、相転移がいかに速く定着するかという点だ。一度「試した」消費者が戻らなかった事実は、ヒステリシス(元の状態に戻らない性質)の典型例でもある。

■ 相転移④ 中食(なかしょく)市場の長期的転換(1990年代〜現在)


【20年超をかけた相転移】

外食でも内食でもない「中食」市場は、2002年の6兆8,560億円から2021年には10兆1,149億円へと約20年で1.5倍に成長した。

この変化の根底にあるのは「1990年代後半、共働き世帯数が専業主婦世帯数を逆転した」という社会構造の転換だ。これが「家で料理する時間と意欲がない」という需要を恒常化させた。

コンビニの変化もこれを象徴している。かつて「若者の店」と呼ばれていたセブン-イレブンでは、2019年時点で50代以上の来客構成比が47%に達した。2024年の外食・中食市場規模は前年比4.2%増、コロナ前比でも5.0%増の22.13兆円と調査開始以来の最高規模を記録している。

この事例が教えてくれるのは、相転移は「一瞬」だけでなく「20年かけてじわじわと」起きることもある、という点だ。ただし、どちらも共通しているのは「ある閾値を超えた瞬間に、認識が不連続に変わる」ことだ。


相転移の共通メカニズム──4つのフェーズ

これらの事例に共通するパターンを整理すると、4つのフェーズが見えてくる。

【フェーズ1:蓄積期】


社会構造の変化(共働き化・高齢化・デジタル化)が緩やかに進行する。潜在ニーズは存在するが、消費者の「認識の障壁」(「手抜き」「割高」「面倒」)が変化を抑制している。表面上は何も変わっていない。しかし潜熱は溜まっている。

【フェーズ2:引き金】


外部ショック(コロナ禍)や技術革新、インフルエンサーの台頭、政策変化などが引き金となる。単一では小さな刺激でも、蓄積エネルギーが臨界値に達しているときに大きな転換をもたらす。

【フェーズ3:相転移】


複数の変化が短期間で同時多発し、消費者の「認識のラベル」が書き換わる。市場参加者の行動(発注量・売場面積・商談姿勢)も非連続的に変化する。

【フェーズ4:定着期(ヒステリシス)】


新しい「相」が社会通念として定着する。重要なのは「ヒステリシス」の存在だ。引き金となったショックが消えても、行動様式は元に戻らない。冷凍食品もフードデリバリーも、コロナが収束した後も、市場はコロナ前には戻らなかった。

相転移を「前に」感知するための3つの観測点

相転移を「予測する」のは困難だ。しかし「感知する」ことはできる。

私が現場で意識してきたシグナルを三つ挙げる。

【① 「認識ラベル」が変わり始めたとき】

消費者がある商品カテゴリーを語る際に使う言葉が変わり始めたとき、相転移の前兆かもしれない。「冷凍食品=手抜き」が「冷凍食品=タイパ」に変わったように、言葉の変化は認識の変化を先行して示す。

「ととのう」という言葉が登場してサウナ市場が一変したように、新しい言葉が生まれる瞬間は、相転移の引き金になることがある。取引先の担当者や消費者の口から、聞いたことのない表現が出始めたら、それは重要なシグナルだ。

【② これまでと「異なる層」が流入し始めたとき】

フードデリバリーが「20代・都市部」から「40〜50代」に広がったように、従来とは異なる年代・属性のユーザーが流入し始めたとき、相転移の入口に差し掛かっている可能性が高い。

コンビニが「若者の店」から「高齢者の店」になったプロセスも同じだ。中心顧客が変わるとき、市場の「相」が変わっている。

【③ 「外れ値の顧客」の動きを丁寧に追ったとき】

相転移の初期段階では、ごく少数の顧客が、まだ一般化していない行動をとっている。有機野菜を10年前から求め続けていた顧客は、社会の変化の5年先を生きていた。彼らは「変わった顧客」ではなく、「相転移のシグナル」だったのだ。

マジョリティの動向だけを追っていると、相転移に気づいた頃には手遅れになる。少数の「外れ値の顧客」の行動を丁寧に観測することが、感知の精度を上げる。


量子力学的に言えば──「観測されない潜熱」は経営に届かない


ここで少し、私らしい切り口を入れる。

量子力学の世界では、「観測されるまで、粒子の状態は確定しない」という原理がある。

これを市場の相転移に重ねると、構造が見えてくる。

経営の意思決定に使われるのは、ほぼすべて「観測されたデータ」だ。POSデータ、売上数字、顧客アンケート。これらはすべて「すでに起きたこと」の記録であり、相転移の「蓄積期」の潜熱を捉えることができない。

つまり、数字だけを追っている経営者にとって、相転移は「突然の変化」に見える。なぜなら、潜熱は数字に現れないからだ。

一方、現場にいる人間は、数字には現れない「空気の変化」を感知できる。取引先の担当者の言葉のニュアンス、市場の外で起きている動き、ごく少数の顧客の行動。これらは「観測されていない情報」だが、相転移の前兆を含んでいる。

「構造として見る力」とは、観測されていない潜熱を、なんらかの形で感知する力だと、私は考えている。


「閾値を超えてから動く」経営の危うさ

相転移で最も怖いのは、閾値を超えてから動こうとすることだ。

水が沸騰してから「鍋を用意しよう」と思っても、すでに遅い。市場が相転移した後に参入しようとすると、相転移を先読みして動いていたプレーヤーとの差は、すでに埋めがたいほど開いている。

ミールキット市場はその好例だ。2024年度の国内市場規模は約1,900億円。世界的にも高い成長率が続くと予測されているが、この市場でのし上がったプレーヤーは、コロナ禍の「相転移」の初期から動いていた企業ばかりだ。

私が見てきた中で、相転移に乗れた経営者と乗り遅れた経営者の差は、情報量でも資金量でもなかった。

潜熱の段階で「何かが溜まっている」と感じ取れるかどうかだった。

数字にはまだ現れていない。しかし空気が変わってきた。取引先の話し方が変わってきた。市場の外で何かが起きている。そういう「構造として見る力」が、相転移への対応を分けていた。


現場実務への示唆──感知の精度を上げるために


最後に、実務的なシグナルをまとめておく。

相転移を感知するために現場で意識したいのは4点だ。

・消費者がカテゴリーを語る言葉が変わり始めたとき
・これまでと異なる層のユーザーが流入し始めたとき
・バイヤーの態度が「とりあえず置いておく」から「ぜひ強化したい」に変わるとき
・棚スペースの配分が変わるとき──売場面積は、個々のバイヤーの判断を超えた「市場の相」を反映している

デンマークで行われた持続可能な食消費への転換に関する研究も、「消費者向けのティッピングポイントは単一の介入で起きるのではなく、複数のアクター(企業・政策・市民社会・消費者)の関与が必要だ」と結論付けている。現場の実感と学術的知見は、ここで一致している。


観測者であることの意味


量子力学の世界では、「何を観測するか」によって、見える現実が変わる。

市場の相転移も、似た性質を持っている。

数字だけを観測している人には、相転移は「突然の変化」に見える。潜熱を観測している人には、「必然的な帰結」に見える。

観測の技法を磨くことは、市場の見え方そのものを変える。

20年近く、食品卸・小売の現場を回しながら私が学んだのは、「市場は突然変わる。しかし、突然変わる前に、必ず溜まっている」ということだ。

その「溜まり」の度合いを感知する力を磨くこと。それが、地方の現場で長く生き残るための、最も重要な経営スキルだと、私は考えている。



書籍で学ぶ 生成AIを活用した市場調査  

『生成AIを活用した市場調査: ChatGPTでデータ分析と予測を極める』

本書で生成AIの力でデータから新しい価値を生み出し、次世代の市場調査をリードするための知識を、この一冊で手に入れましょう!


書籍で学ぶ 相転移

『有機・無機材料の相転移ダイナミクス: 数理から未来のマテリアル開発まで CSJカレントレビュー』

特異な相転移ダイナミクスの世界を観る!
水は氷や水蒸気に変化し、液体・固体・気体の三態に転移します。それが相転移。相転移の瞬間に分子に何が起きているのか、熱力学理論や電子顕微鏡などを駆使して相転移ダイナミクスを探ります。


【コメント・感想はコメント欄へ】

人は20分後には42%1日後には74%程度も忘れると言われています!

エビングハウスの忘却曲線
是非noteを読んで、
・気づいたこと
・感銘を受けたこと、
・実践したいと思ったこと
を自分でメモにまとめるたり、
生成AIで壁打ちして振り返ると
より深い学びになります!
 
また、読んだ感想を一言でもいただけると、
励みになります!是非コメント欄でおしえてくださいね!

Z Observer|量子力学を入口に、宇宙・AI・経営・人生を観測する。現場と実務から「見る力」を鍛え続ける人間の記録。

【もっと深く学びたい方へ:Z式観測の技法】

📡 あわせて読んで欲しい

「溜まり」観測のヒントに!

この記事は、量子力学を知識として学ぶための記事ではありません。
感情に飲まれず、相手に巻き込まれず、数字を浅く読まず、判断の精度を上げるための記事です。

地方の現場で見えてきた、AIの需要予測の限界と可能性

AIが「存在しない変数」として扱う7つの死角。地域イベント・選挙・工場の休業──現場から報告する。

量子力学の「観測」とは結局なにかー感情・意識・自我までつなげて考える#自己OSのアップデート

このnote記事では、量子力学における「観測」の意味を、誤解の多いポイントから整理しながら、
その先にある感情・意識・自我・判断の問題まで、一歩ずつつないでいきます。難しい話を難しいまま語るのではなく、
結局それは、自分の現実とどう関わるのか。
そこまで含めて読みたい方に、ぜひ読んでいただきたい文章です。


#相転移 #市場の変化 #食品ビジネス #経営 #観測の技法 #ZObserver #中小企業経営 #量子思考 #マーケティング #地方経営 #DX #note

いいなと思ったら応援しよう!

ぜっと| Z Observer| 世の中を観測して noteでZ式構文を書く人|中小店舗販促大全 よろしければ応援お願いします! いただいたチップはクリエイターとしての研究費および活動費に使わせていただきます!

この記事は noteマネー にピックアップされました

noteマネーのバナー