第5回「成功のコツを教えたら、もっと売れた」
僕の営業人生の物語、第5回です。
前回、上司に「後輩から相談されたこと、ありますか?」と聞かれて、ハッとした話をしました。
あの一言のあと、僕は、あることを始めたんです。
自分の「成功のコツ」を、後輩に教えるようにしたんです。
……と、さらっと言いましたが。
正直に白状します。これ、始めるの——めちゃくちゃ、嫌やったんです。
今日は、その「嫌やった」ところから、正直に話させてください。
1、「せこい」と笑ってください。でも、これが本音でした
なんで嫌だったのか。
怖かったんです。
自分のうまくいっているノウハウを教えてしまったら——後輩がそれを真似して、僕以上の成績を取ったら、どうする?
僕が、一番じゃなくなるかもしれない。
僕の「価値」が、なくなってしまうかもしれない。
当時の僕は、本気でそう思っていました。
「売れてる自分には価値があって、売れてない自分には価値がない」——心の底で、そう信じていたんです。だから、手の内は隠しておきたかった。それが自分の武器であり、価値やと思っていた。
……いや、ほんま、せこいですよね(笑)。
今なら、笑えます。「ほんませこいこと考えてたなあ」って。
でも——これ、当時の、嘘偽りない本音なんです。
そして、思うんです。これ、僕だけじゃないんじゃないかな、と。
「教えたら、自分の立場がなくなるんじゃないか」
営業をやっている人なら——いや、どんな仕事でも、一度はよぎったことのある恐怖じゃないでしょうか。
2、しゃーなしに、教え始めた
とはいえ、上司に言われた手前です。
僕は、しゃーなしに、始めました(笑)。
ただ、その前に、やらないといけないことがありました。
「こうやるといいよ」といくら言っても、そもそも後輩が僕に話しかけられる空気がなければ、何も始まらないんです。
思い出してください。当時の僕は、むすっと仕事をして、質問にはめんどくさそうに対応して、「喋りかけてくんな」オーラを全開にしていた男です。
だから、まず、そこからやめました。
余裕を持つ。話しかけやすい雰囲気を作る。聞かれたら、ちゃんと手を止める。
その上で、少しずつ、開いていったんです。
「こういうときは、こうしてるよ」 「アポイントは、こういうふうに取ってるよ」
——例の「会えない時間を聞く」の話も、この頃に、後輩たちに渡し始めました。
3、まったく逆のことが、起きた
そうしたら——不思議なことが、起きたんです。
自分が思っていたことと、まったく逆のことが。
僕が教えたら、後輩たちも——自分たちのやり方を、教えてくれるようになったんです。
「山田さん、僕、こんなことやってますよ」 「あの先生、こう攻めたら会えましたよ」
情報が、どんどん、僕のところに集まってくるようになった。
これ、本当に衝撃でした。
だって、教えたら「減る」と思っていたんですから。インセンティブの世界です。自分の取り分が、奪われると思っていた。
でも、逆だったんです。
教えたら——自分一人では絶対に知り得なかった、他人の成功例が、山ほど入ってきた。
しかも、面白いのはここです。後輩たちは、それを「成功例」だと思っていないんですよ。「いや、これってどうしたらいいすかね?」と、相談ベースで持ってくる。
でも、聞いてみると——宝の山なんです。
「え、そんなことしてんの? それ、すごいやん!」
そんなことが、いっぱいあった。
結果として、どうなったか。
僕は、もっと売れるようになりました。
手の内を隠していた時よりも、全部さらけ出した時の方が——強くなったんです。
4、なぜ、教えても「奪われなかった」のか
あとになって、もう一つ、大事なことがわかりました。
なぜ、コツを全部教えたのに、僕の価値はなくならなかったのか。
僕の売り方は、僕の才能から生まれていたからです。
同じコツを教えても、後輩がやると、後輩のやり方になる。僕とまったく同じやり方は、誰にもできない。逆に、僕も後輩のやり方を、そのままは真似できない。
僕には、僕にしかできないやり方がある。だから、いくら教えても、奪われようがなかったんです。
才能って、そういうものなんだと、肌で実感しました。
分けても、減らない。むしろ、分ければ分けるほど、増えていく。
ちなみに——教えても「売れる人」と「売れない人」に分かれたんですが、その違いは、はっきりしていました。
僕の話をそのままコピーする人ではなく、「なるほど。じゃあ、自分の担当先やったら、こうやってみようかな」と考える人。
そう、アレンジする人です。以前お話しした、あの話と、ここでつながります。
5、あの対話の時間が、今の僕の「原点」だった
そして——ここからが、僕にとって一番大事な話です。
アレンジして動く後輩たちと、ディスカッションをする時間が、生まれました。
「これ、どうやったらうまくいきますかね?」 「実は、こんなこともやってみて、あんなこともやってみて……」
答えのないことを、一緒に話し合う。相手がそれを実行してくる。そして——
「え、お前、そんなことできるんや! すごいやん!」
その感動を、分かち合う。
……この時間が、僕にとって、かけがえのない時間だったんです。
一人でむすっと仕事をしていた頃には、絶対に味わえなかった楽しさでした。数字が上がる喜びとは、まったく別の種類の喜び。
そして、お気づきでしょうか。
これ、今、僕がやっている仕事と、まったく同じなんです。
答えのない問いを、一緒に考える。相手の「すごいところ」を見つけて、言葉にして返す。その瞬間の顔を見る。
僕のコーチングの原点は——あの頃の、後輩たちとの対話の中に、もう、あったんです。
だから、あの上司には、今でも本当に感謝しています。あの一言がなかったら、僕は自分を顧みることも、この楽しさに出会うことも、なかったんですから。
6、あなたは、手の内を隠していませんか?
今日の問いは、これです。
あなたは今、自分の「手の内」を、隠していませんか?
「教えたら、損をする」 「教えたら、追い抜かれる」
——もし、そう思っているとしたら。
それ、逆かもしれません。
あなたにしかできないことは、いくら教えても、奪われることはありません。
なぜなら、それはあなたという人間から発露しているものだから。あなたの感情と、思考と、行動のパターンから生まれているものだから。
お客さんだって、同じです。僕の話で心が動く人もいれば、僕では動かず、隣のAさんの言葉でなら動く人もいる。
つまり——奪い合いじゃ、ないんです。
僕にしか救えない人が、必ずいる。
そして、あなたにしか救えない人も、必ず、いる。
コメントで教えてください。「隠してました……」も、「分けたら、こんないいことがありました」も、大歓迎です。
さて——ここまでの僕は、順風満帆に見えると思います。
教えたら、もっと売れた。転職しても、またナンバーワン。天国のような話です。
でも……人間って、面白いものです。うまくいっている時こそ、天狗になって、ガツンとやられるんです。
その順風満帆のさなかに——一番仲良くしていた、ある先生に、ブチ切れられる出来事が起こります。
「お前、それでええんか」
僕の「成功」が、根っこから揺らいだ出来事。今だから美談として話せますが、当時は——死んでしまいたいくらいでした。
今日が天国なら、次回は、地獄の話です。
フォローして、お待ちください。
最後に。
あなたの中にも、「分けても減らない才能」が、必ずあります。
それがわかると——**人と、競わなくてよくなります。**めちゃくちゃ、楽になります。
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今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
それでは、また明日、第6回でお会いしましょう。
