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第6回「あなた、ノコノコ一人で旅行に行けるんですね」

僕の営業人生の物語、第6回です。

前回、「手の内を全部教えたら、もっと売れた」という話をしました。転職しても、また一番になって——僕は、営業マンとして、順風満帆でした。

今日は、その頂点で。

足元から、崩れ落ちた話です。

正直、今でも思い出すと、少し、胸が痛みます。でも、僕の人生で、一番大事なターニングポイントだったので——ちゃんと、話させてください。

1、夢だった「学会」の旅行を、勝ち取った

その会社で、僕はまた、トップ営業でした。

ご褒美に、インセンティブ旅行を勝ち取ったんです。上位3人だけが行ける、特別なやつ。

行き先は、アメリカのシカゴとニューヨーク。当時、僕らのインセンティブ旅行は、「学会に行って、勉強してくる」というものでした。ASCOという、世界最大のがんの学会です。

そこに行くのが——僕の、夢だったんです。

いろんな方の支援のおかげで、その夢を、勝ち取ることができた。営業マンとして、もう本当に、頂点。自分の中では、最高の瞬間でした。

2、一番お世話になった先生に、報告に行った

その報告を、ある先生に、しに行きました。

当時、一番仲の良かった、女性の先生です。

その先生には、本当にお世話になっていました。うちの会社の薬を、たくさん処方してくださって。全国を一緒に回って、「この会社の薬、すごくいいですよ」と、一緒に講演もして。

年間120日——病院から注意を受けるくらい、一緒に講演会を回らせてもらった先生でした。

その先生がいてくれたからこそ、獲得できたインセンティブです。だから、「ありがとうございます」と、お礼を兼ねて、報告に行ったんです。

正直、僕の中では、完璧なシナリオでした。

「よかったですね」って言ってもらえて、「お土産、買ってきてね」なんて冗談を言われて——そんな和やかな場面を、想像していました。

だから僕は、満面の笑みで、報告したんです。

「先生のおかげで、インセンティブ旅行、獲得できました。ありがとうございます!」

3、先生は、僕の顔も見ずに、言った

そうしたら。

先生は——僕の顔も、見ずに、こう言ったんです。

「……よかったですね。」

「私も、患者さんも、現場でこんなに苦しんでるのに——ノコノコ一人で、旅行に行けて。よかったですね」

——空気が、凍りつきました。

冷めた、冷めた目でした。

褒められるどころか、心底、軽蔑された目だったんです。

僕は、何も言えませんでした。頭が、真っ白になって。

だって、僕は——この先生のために、一生懸命やってきたつもりだったんです。「先生のおかげでやれた」と、心から思っていた。感謝を、伝えに来たんです。

なのに、目の前の先生は、愛想を尽かすような顔で、悲しみを、あらわにしていた。

あの目が、今でも忘れられません。

羨ましいとか、嫉妬とか——そういう目じゃ、なかった。

心の底から、人に失望している目でした。

4、家に帰って、ジワジワと、わかってきた

家に帰って、ずっと考えていました。

そして、ジワジワと、わかってきたんです。

僕にとっての「成功」って、何やったんやろう。

——売上。順位。旅行。

全部、自分のことだったんです。

先生は、目の前の患者さんと、必死で向き合っていた。患者さんも、必死で、病気と闘っていた。

その横で、僕は——数字しか、見ていなかった。

自分の成績しか、見ていなかった。

「患者さんのため」と、ずっと言っていたんです。口癖のように。

でも、本当は——自分の成績のために、薬を売っていただけなんじゃないか。

患者さんを、出しに使っていただけなんじゃないか。

……そんなことに、気づいてしまった。正直、自分のことが、少し、嫌になりました。

「俺は、一体、何のために、仕事してるんやろう」

営業マンとして、一番輝いていたはずのこの時期に、僕は——一番、足元から、崩れ落ちたんです。

5、あれは、信頼してくれていたからこその、怒りだった

今なら、わかることがあります。

あの先生は、別に、あんなこと言わなくても、よかったんです。「よかったね」と流すことも、できた。冷たい態度なんて、取る必要はなかった。

でも——わざわざ、怒ってくれた。

それは、僕のことを、信頼してくれていたからこそ、だと思うんです。

「あなたも、そういう人なのね」という、呆れ。「あなたは、違うと思っていたのに」という、失望。

——それは、信頼の、裏返しでした。

そして、気づいたんです。これ、妻が泣いたときと、まったく同じや、と。

必死で仕事をして、家庭を顧みず、妻が爆発した。

必死で数字を追って、患者さんを置き去りにして、先生が失望した。

僕は、同じ間違いを、何回も、何回も、繰り返していたんです。

「相手のため」と言いながら、いつも主語が、自分だった。

6、あなたが追いかけている「成功」は、誰のためですか

だから、今日、あなたに問いかけたいんです。

あなたが今、「成功」だと思って追いかけているもの——それは、誰のためのものですか?

自分が、勝つため、でしょうか。

それとも、目の前の、誰かのため、でしょうか。

この二つ、すごく似ているようで——まったく、違うんです。

僕は、それを、あの先生から教わりました。妻からも、教わりました。いろんな人から、何度も何度も、教わってきました。

……正直に言うと、僕は「一生懸命、努力できる」という強みは、確かに持っていたと思います。それ自体は、悪いことじゃない。その力で、売上も上げてきた。

でも——その力を、どこに向けるか。誰のために使うか。

そこがズレていると、どれだけ頑張っても、どこかが、空っぽなままなんです。

もし今、あなたが「頑張っているのに、なぜか満たされない」としたら。

それは、能力の問題じゃないのかもしれません。

その頑張りが『誰のため』か——それが、少しだけ、ズレているサインなのかもしれません。

さて——この話には、続きがあります。

先生とは、その後、また仲を取り戻しました。そして、その年、僕は——昇進も、給料も、家庭も、仕事も。全部、手に入れたんです。

10年前に書いた「夢ノート」のリストが、全部、埋まった。

順風満帆。完璧なはずでした。

でも——その頂点で、僕は、妻から、ある決定的な一言を言われることになります。

「あなたは、どこを目指しているの?」

全部手に入れたのに、なぜか、幸せじゃなかった。

その、一番深いところの話を、次回、します。

フォローして、お待ちください。

最後に。

もし今、あなたが「頑張っているのに、満たされない」なら。

それは、「誰のため」が、少しズレているサインかもしれません。

その答え合わせを、一緒にしませんか。

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今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

それでは、また明日、第7回でお会いしましょう。

-文字だけではなく、音声で聴きたい人のために-


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