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第1回:全国トップなのに、成功事例が書けなかった

昨日から始まった、僕の営業人生20年の物語。今日が、第1回です。

(予告編をまだの方は、そちらから読むと、旅の全体像がわかります)

第1回は、このシリーズを始めるきっかけになった、一番象徴的な出来事から。

「成功事例が、書けなかった」という話です。

1、全国トップが、人前で「ペラッペラ」の話をした

会社って、結果を出した人間に、必ず言うんです。

「その成功のノウハウを、みんなに共有してやってくれ」と。

僕も全国トップでしたから、当然、指名されるわけです。前に立って、後輩たちに「どうやって売ったのか」を話さなあかん。

——でもね。

マジで、頭が真っ白なんですよ。

書くことが、思いつかない。

いや、正確に言うと、書けるんです。書こうと思えば、何かしらは書ける。

でも、ひねり出して書いたものが——

「お客様に寄り添い、誠実に対応しました」

……みたいな、当たり障りのない、薄っぺらいやつなんです。

自分でも「ペラッペラやな」と思いながら、発表する。しかも会社の発表ですから、今期の方針も汲み取って、それっぽく織り込むわけです。

——ここだけの話、その方針、全然守ってなかったんですけどね(笑)。

守ってないのに、守ってる風の発表をする。トップ営業の成功事例発表の裏側は、こんなもんでした。

2、内心では、ずっとこう思っていた

正直に、当時の心の中を白状します。

僕は、内心、ずっとこう思っていたんです。

「いや、なんで売れてるか、自分でもわからへんねん」

気づいたら、売れてた。それが本音でした。

だから、人に聞かれるたびに、こう答えていました。

「運が良かっただけですよ」 「僕の周り、いい人ばっかりなんですよね」 「担当させてもらったエリアが、ラッキーだったんです」

——全部、本気で言っていました。

全国トップだったのに、自分の売り方に、一つも自信がなかったんです。

おかしいでしょう。数字は誰よりも出ている。表彰もされている。なのに、「あなたはなぜ売れるんですか?」という、たった一つの質問に、20年間、答えられなかった。

3、売れていたのに、「自分」がどこにもいなかった

なんで答えられなかったのか。

当時の僕の営業を、そのままお見せします。

会社が「これを言え」と言った資料を、その通りに喋る。

先輩が「こう回れ」と言ったルートを、その通りに回る。

上司が「こうしろ」と言ったことを、その通りにやる。

——言われた通りにやったから、売れたんです。これ、本当なんです。

幸い、上司がすごく優秀な方でした。「どうやったらいいですか?」と聞けば、的確なアイデアをくれる。それを忠実に実行する。すると、売れる。

でも、おわかりでしょうか。

そこに、「自分」が、どこにもいないんです。

全部、他人の軸で動いている。会社の歯車みたいやな、と、自分でも思っていました。

だから、成功事例が書けなかったんです。

だって、自分のやり方が、ないんですから。

「他人の指示を、忠実に実行しただけです」——なんて、口が裂けても言えないじゃないですか。だから精一杯の言葉が、「先輩のおかげです」「上司のおかげです」やったんです。

……そして、もう一つ、格好悪い本音を白状します。

当時の僕は、これが問題やとすら、思っていませんでした。

「売れてるからええやろ」と、ちょっと大きい顔をしていました。「お前らより売れてるやろ」と、調子に乗ってた部分も、正直、ありました。

——でもこれが、後々、大きな落とし穴になっていくんです。(その話は、この先の回で)

4、研修で、「当時の僕」に会った

時は流れて、つい先日。若手営業の研修でのことです。

ある若手の子が、こんな話をしてくれました。

「上司がすごく優秀で、言われた通りにやってるんです。だから、意外とうまくいってて。……でも、なんか、本当に苦しくなるんです」

「なんで苦しくなるの?」と聞いたら、彼はこう言いました。

「上司がいなくなったら、どうしようって思うんです」

「期待に応えられなかったら、どうしよう。言われた通りやって売れなかったら、どうしようって——不安が、ずっとあるんです」

……その言葉に、僕は、深く頷いてしまいました。

僕も、まったく同じだったからです。常に、何かに追われている感覚。「上司に言われたこと、ちゃんとできてるか」「明日会うまでに、少なくともここまではやっとかな」——強迫観念みたいなもので、仕事をしていた時期が、確かにありました。

結果は出ているんです。でも、そこに自分がないから、結果が出ても、不安が消えない。

そしてグループ発表で、彼は言いました。

「僕、運がいいんですよね。先輩が優秀で、上司が優秀で」

——当時の僕と、一言一句、同じでした。

でも、彼の目は、笑っていませんでした。どこか引きつっていて、「質問してくるな」というオーラを出しながら、自分の話を、すごく早く切り上げていました。

その姿が、鏡みたいで——胸が、締めつけられました。

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