映画『(LOVE SONG)』🌻
ラブストーリーど真ん中を行く作品を劇場に見に行ったのはいつぶりだろうか。今の私はすっかり身近な誰かを好きになることや思いを伝えられない葛藤とは無縁の人生を送っているけれど、久々にあの青くて甘酸っぱい苦しい思いを感じることができた。
タイの方が監督を務めているからか、邦画にはない独特のテンポ感に少し戸惑ったけれど、タイの街並みと二人の感情がすごくきれいに撮られていた。
ソウタを演じた森崎ウィンさんの表現力が高すぎて、途中から私も向井康二さん演じるカイに長年恋焦がれていたような気持ちになった。完全にソウタと同化していた。
カイの想い人は自分ではないのだと思い込んで涙をこらえるシーン、ライブハウスで号泣してしまうシーン、ワタルの突然の告白に瞳が揺れるシーン。ソウタが今まで胸の中でさんざん抑えてきたであろう感情が爆発する(しそういなる)場面に胸を締め付けられた。特にソウタの瞳が揺れるシーンはほかの場面でもよく登場していて、ソウタ自身が過去にどれほど悩んできたのか、悔しさや悲しさを滲ませてきたのかを実感させられた。
ソウタはカイに甘えることもできるし、友達同士ではあまり行わないような過度なスキンシップも割と普通にやりのけてしまう人物である。しかし、自身の恋心を伝える段になると途端に臆病で卑屈な面が顔を出してしまう。ソウタがひたすらにカイを想い続けて、それでも肝心な部分では正直になれなかった時間を思うと……。
一方で、カイもソウタになかなか想いを伝えられないでいた。ここで出てくるのが同性愛者への偏見という点が苦しかった。他人のセクシュアリティを不必要に探るのはタブー、性的マイノリティを揶揄や差別の対象にしないという価値観は最近では世間で共有されているが、彼らが高校生のときはそこまで世間のアップデートはされていなかった。
ソウタの母の偏見に基づく牽制が、ずっとカイを苦しめていた。ソウタとたとえ結ばれたとしても家族の理解は得られないと悟ってソウタの前から消えてしまったのかな。忘れようとしても忘れられなくて、心のなかで作っていたラブソングもなかなか完成させられなくて、異国の地でソウタに再会するまでどれほどの想いを抱えて生きてきたのだろう。
タイはカイ役の向井さんと縁のある国らしいが、同性婚が法制化されているという点でも舞台として適切だと思った。

