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まさかあれがのびきる前の最後のラーメンだったなんて。

これから赤ちゃんを産む友達みんなにお伝えしていることがある。
産まれるまでに、
美容院、ラーメン屋、焼肉屋、映画館は行っておいてね
と。それらは産まれてからはしばらくまぼろしにしかならない。

ラーメンはのびる。


産後こんな生活が待っていようとは。
その時まだ周りの友達も産んでおらず、妊娠に対するイメージや予行練習が、まったくできていなかった。
ふにゃふにゃした赤ん坊が突然我が家にやってくると、24時間365日、戦闘態勢がはじまった。
もう10年以上前なのにやたらにリアルに何度もよみがえってくる。

不安で不安で。この命を守りきれるのか。

世界一かわいいわが子。
しかし、かわいさの前に、ずっしりとした重さが肩と心を占領した。
プレッシャーと眠気がわたしを蝕む。わたしが守らないとこの子は、という重石が背中に常に載っていた。

まぶたが、重い。


完全母乳だったわたしは、3時間離れるのが精いっぱいだった。
(当時は夫がいたが、ミルク対応も限界がある)
産後3か月目、やっとのことで美容院とコーヒーを飲む時間を手に入れた。
夫にも念入りにミルクの練習をしてもらい、ついに叶えられたのだ。

歩いて5分のケンタッキーでコーヒーをゆっくり時間かけて飲む。
美容院で長い髪をバッサリ切り、明るい髪色にしてもらう。
鏡を見て、久しぶりに晴れやかな顏を浮かべる。

わたしもひとりの女性だった。ママの前に女性だった。やっと思い出せた。

気持ちをゆっくりと切り替えると、
私はそろそろと家に帰った。足取りは軽い。
家ではげっそりとした夫と、泣きつかれた長女が待っていた。

やっぱりママが一番だよな、そういわれて気持ちの余裕を見せつけ、ふふっと笑うことができた。


産む前に、何だか今日は体調がいいという日があった。なかなか終わらなかったつわりを抜け、何を食べてもおいしい時期に突入した。

ラーメンを食べよう。わたしは決めた。
もやしやキャベツ、ありったけの野菜を炒め、
塩胡椒してインスタントのしょうゆラーメンの上に載せる。33円の袋麺のぜいたく。
いただきます、と小さくつぶやき、
野菜とスープ、麺とスープを順にからめてゆっくりと食べる。
湯気わき立つラーメンを、麺がのびない、
まだあたたかいうちに食べるしあわせを存分にからだで味わった。


そう、ラーメンなんて熱いものを、赤ちゃんの前で食べることはもはや不可能だった。

一人でゆっくりする時間はお預けされた。
産前あんなに好きだった湯気のたったラーメンは、映画館でゆったりした空間でコーラを飲みながら観る映画は、しばらくは訪れなかった。


赤ちゃんは動き出したら、最後。
どこにでも手を伸ばし、嘗め回し、ころころ転がり、一瞬でも目を離せない生き物だ。
カップラーメンも、さて食べるぞとみたら、
でろでろになっていた。

かわいい。でも、わたしの時間もほしい。
そんな生活は7年以上続いた。


赤ちゃんを産む前に、妊娠中だからこそできることを楽しんでほしい。
そして、その後はとろけるほどかわいい赤ちゃんがあなたを待っている。


そう、あれが、最後だったのか。
最後ののびないラーメン。



こちらの企画に参加しています。地中海性気候さん、素敵な企画ありがとうございます!
みなさんのあたたかな投稿も読ませていただいています✨

今日もお付き合いいただきありがとうございました。もーリアルな声すぎて。今はだいぶ自由に銭湯、映画、ラーメン行かせていただいて います。あれから10年以上経ちました。

ラーメンはもちろん伸びていません。

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