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~ 貸借対照表等式から解き明かす ~  キャッシュ・フロー計算書(間接法)の本質

1 はじめに

キャッシュ・フロー(以下、「CF」ということがあります。)計算書における営業活動によるキャッシュ・フロー(以下、「営業CF」といいます。)の表示方法として、直接法間接法があります。

このうち間接法とは、税引前利益に、非資金損益項目、営業活動に係る資産及び負債の増減並びに投資活動によるキャッシュ・フロー(以下、「投資CF」といいます。)及び財務活動によるキャッシュ・フロー(以下、「財務CF」といいます。)の区分に含まれるCFに関連して発生した損益項目を加減算して営業CFを表示する方法をいいます。

しかしながら、なぜ税引前利益にこのような加減算調整をすると営業CFを導くことができるのかについて深く考えることなく、なんとなく雰囲気で対応してしまっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

この点、会計に携わる方であれば誰もがご存じであろう貸借対照表等式(資産=負債+純資産)まで立ち返って順を追って考えることにより、CF計算書の間接法について、本質を理解できるようになると考えられます。

そこで、本稿では、まず間接法とは何かについて整理したうえで、CFの考え方、営業CF(小計)の考え方、間接法における調整項目の考え方について、貸借対照表等式から順を追って解説していきます。

なお、本稿は日本基準を前提としています。

IFRSでの考え方については、旬刊経理情報2026年6月10日増大号(通巻No.1778)の特集「2027年1月開始年度からの適用に向けて IFRS18号対応最終フェーズの実務ポイント」の第4章『PLとCFの分類のズレとBS等式が鍵 IFRS18号で変わるCF計算書の実務対応』をご参照ください。


2 間接法とは

冒頭述べたとおり、CF計算書における営業CFの表示方法として、直接法と間接法があります。

直接法を採用する場合のCF計算書のイメージは下図のとおりです。

他方、間接法を採用する場合のCF計算書のイメージは下図のとおりです。

間接法は営業CFの表示方法の1つであるため、間接法を採用していても直接法を採用している場合と営業CFより下の表示は同様となります。

ここで着目していただきたいのは、これに加えて、営業CFの中の小計より下の表示についても両者が同様となっている点です。

つまり、間接法を採用する場合であっても、その適用対象はあくまで営業CF(小計)部分であり、営業CF(小計)より下には直接法が適用されることになります。

なお、営業CF(小計)は、営業CFのうち、おおむね営業損益計算の対象となった取引に係るCFの合計額を意味することとされています。

また、営業CFの小計より下の項目には、投資CF及び財務CF以外の取引によるCF及び法人税等に係るCFが含まれることとされています。

間接法を採用する場合には、上図のように、出発点となる税引前利益に減価償却費などを加算し、売上債権の増加額を減算するなどの調整をすることで、終着点である営業CF(小計)を表示することとなります。

間接法には、純利益と営業CFとの関係が明示される点に長所が認められるとされています。

次章では、CFの考え方、営業CF(小計)の考え方、間接法における調整項目の考え方について、貸借対照表等式から順を追って解説していきます。

3 基本的な考え方

(1) CFの考え方

まず、資産、負債及び純資産の関係は、貸借対照表等式より下記のように表せます。

🔸資産 = 負債 + 純資産

ただし、これは借方金額と貸方金額のいずれについても正の値で表すときのものです。

この点、借方金額を正の値とし、貸方金額を負の値とすれば、金額の正負を確かめるだけで借方か貸方かを判別できるようになるため、理解が容易になります。

そこで、借方金額を正の値とし、貸方金額を負の値とすると、貸借対照表等式は下記のようになります。

🔸資産 + 負債 + 純資産 = 0

つぎに、資産を「現金及び現金同等物」と「その他の資産」とに分解すると、下記のようになります。

🔸現金及び現金同等物 + その他の資産 + 負債 + 純資産 = 0

これを、現金及び現金同等物について解くと、下記のようになります。

🔸現金及び現金同等物 = - その他の資産 - 負債 - 純資産

この等式は、当然ながら、期首及び期末のいずれの時点における資産、負債及び純資産についても成り立ちます。

期末:
🔸期末現金及び現金同等物 = - 期末その他の資産 - 期末負債 - 期末純資産

期首:
🔸期首現金及び現金同等物 = - 期首その他の資産 - 期首負債 - 期首純資産

そして、CFは現金及び現金同等物の期首と期末の差額であることから、上記算式の期末から期首を差し引くことにより、CFは下記のように表せます。

🔸CF = - その他の資産の増減額 - 負債の増減額 - 純資産の増減額

つまり、CFは、その他の資産、負債及び純資産の増減により表すことができるということです。

ここで、「純資産の増減額」には、PLを通るものとPLを通らないもの(増資や配当等)があります。

すなわち、「純資産の増減額」は、「PL」と「その他の純資産の増減額」に分解することができることになります。

🔸CF = - その他の資産の増減額 - 負債の増減額 - PL - その他の純資産の増減額

さらに、間接法の本質の理解という観点からは、その他の資産、負債及びその他の純資産を分けて考える必要性が乏しいため、「その他の資産の増減額」、「負債の増減額」及び「その他の純資産の増減額」を併せて「その他のBS増減額」と表記することとします。

これらを踏まえると、CFは下記のように表せることになります。

🔸CF = - その他のBS増減額 - PL

(2) 営業CF(小計)の考え方

CF計算書を作成するためには、CFを営業CF(小計)、営業CF(小計より下)、投資CF、財務CF又は換算差額等に分類する必要があります。

ここで、先述のとおり、間接法の適用対象が営業CF(小計)部分であることを踏まえると、間接法の本質の理解という観点からは、CFを営業CF(小計)とそれ以外に分ければ足りることとなります。

そのため、本稿では簡略化のため、CFを「営業CF(小計)」と「その他のCF」の二つに分類することとします。

CFを営業CF(小計)とその他の二つに分類するためには、その他のBS増減額とPLをそれぞれ「営業CF(小計)に関連するもの」と「その他のCFに関連するもの」に分解すればよいこととなります。

🔸営業CF(小計) = - 営業CF(小計)に関連するその他のBS増減額 - 営業CF(小計)に関連するPL

🔸その他のCF = - その他のCFに関連するその他のBS増減額 - その他のCFに関連するPL

ここで留意が必要なのが、PLの営業利益にも「営業」とつきますが、同じ「営業」でも営業CFに分類される項目とは必ずしも同様ではない点です。

例えば、有形固定資産の取得原価は減価償却により費用化され、PLに計上される減価償却費は通常は営業損益計算に含まれることになりますが、有形固定資産の取得に係るCFは投資CFに分類されます。

反対に、例えば、売上債権に係る為替差損益は、PLでは営業外損益に分類されますが、これに係るCFは営業CFに分類されます。

ここまでの説明を整理したものが、図表1「CFとその他のBS増減額・PLとの関係」です。

図表1では、その他のBS増減額とPLを、それぞれが関連するCFの分類に応じてマトリクス状に分解し、以下のとおり便宜的に-A〜-Dの記号をおいています。
(なお、対応するCFをプラスで表記した方がわかりやすいため、ここでは、敢えて各記号にマイナスを付しています。また、簡略化のため、法人税等は考慮外としています。

【その他のBS増減額】
-A:営業CF(小計)に関連するその他のBS増減額
-B:その他のCFに関連するその他のBS増減額

【PL】
-C:営業CF(小計)に関連するPL
-D:その他のCFに関連するPL

これらの記号を用いると、各CFは下記のように表せます。

🔸営業CF(小計) = A+C
🔸その他のCF = B+D

(3) 間接法における調整項目の考え方

税引前利益に一定の調整を加えることで営業CF(小計)を表示する方法が間接法であることを踏まえると、間接法における調整項目は、終着点である営業CF(小計)[A+C]から、出発点である税引前損益[C+D]を差し引くことで求められます。

🔸営業CF(小計)[A+C]- 税引前損益[C+D]= 調整項目[A-D]

この調整項目[A-D]のうち、 [-D]は、税引前利益[C+D]を営業CF(小計)に関連するPL[C]に調整するためのものです。

また、 調整項目[A-D]のうち、 [A] は、営業CF(小計)に関連するPL[C]を営業CF(小計)[A+C]に調整するためのものです。

(4)  小括

間接法における調整の要否は、その他のBS増減額やPLが図表1の A〜D のいずれに該当するかにより決定されることになります。

そのため、間接法における調整の要否を決定するためには、個々の項目について、図表1 のA〜Dのいずれに該当するかを判定することが必要となります。

このように考えることにより、たとえこれまで存在しなかった新規の項目が出てきた場合であっても、容易に対応方法が考えられるようになることが期待されます。

4 具体的な項目ごとの考え方

(1) 売上債権の増減、退職給付に係る負債の増減[A]

売上債権の増減や退職給付に係る負債の増減といった、営業CF(小計)に関連するその他のBS増減[A]については、出発点である税引前利益[C+D]の計算に含まれていないものの、終着点である営業CF(小計)[A+C]に含まれるものであるため、税引前利益[C+D]に加味する調整が必要となります。

この点、図表1の符号のとおり、これらの資産・負債が貸方方向(資産の減少又は負債の増加)に増減している場合には、税引前利益に対して加算する調整が必要となります。

逆に、これらの資産・負債が借方方向(資産の増加又は負債の減少)に増減している場合には、税引前利益に対して減算する調整が必要となります。

(2) 有形固定資産の増減、借入金の増減[B]

有形固定資産の増減や借入金の増減といった、その他のCFに関連するその他のBS増減[B]については、出発点である税引前利益[C+D]の計算に含まれておらず、終着点である営業CF(小計)[A+C]にも含まれるものではないため、間接法における調整項目とはなりません。

(3) 売上高、棚卸資産評価損[C]

売上高や棚卸資産評価損といった、営業CF(小計)に関連するPL[C]については、既に出発点である税引前利益[C+D]の計算に含まれており、終着点である営業CF(小計)[A+C]にも含まれるものであるため、間接法における調整項目とはなりません。

(4) 減価償却費、受取利息[D]

減価償却費や受取利息といった、その他のCFに関連するPL[D]については、税引前損益[C+D]の計算に含まれますが、営業CF(小計)に関連するPL[C]には含まれるものではないため、これらの損益の影響を税引前損益[C+D]から打ち消すための調整が必要となります。

この点、税引前損益[C+D]から費用又は損失の影響を打ち消すためには、税引前利益に対して加算する調整が必要となります。

逆に、税引前損益[C+D]から収益又は利得の影響を打ち消すためには、税引前利益に対して減算する調整が必要となります。

(5) 為替差損益[C or D]

売掛金や買掛金などの営業CF(小計)に関連する資産・負債に係る為替差損益については、営業CF(小計)に関連するPL[C]に該当するため、間接法における調整項目とはなりません。

他方、貸付金や借入金などのその他のCFに関連する資産・負債に係る為替差損益については、その他のCFに関連するPL[D]に該当するため、この影響を税引前損益[C+D]から打ち消すための調整が必要となります。

5 非資金損益項目

冒頭述べたとおり、間接法とは、税引前利益に、非資金損益項目、営業活動に係る資産及び負債の増減並びに投資CF及び財務CFの区分に含まれるCFに関連して発生した損益項目を加減算して営業CFを表示する方法をいうとされています。

それにもかかわらず、上記4 (3)において、非資金損益項目である棚卸資産評価損が間接法における調整項目とはならないと説明されていることに違和感を覚えた方もいらっしゃるかもしれません。

ですが、非資金損益項目であっても、全てが間接法における調整項目となるわけではないのです。

すなわち、非資金損益項目のうち、営業CF(小計)に関連するPL[C]に該当するものは間接法における調整項目とはならず、あくまでその他のCFに関連するPL[D]に該当するものだけが間接法における調整項目となります。

棚卸資産評価損は非資金損益項目であるものの、営業CF(小計)に関連するPL[C]に該当するため、間接法における調整項目とはならないことになります。

この点に関連して、令和5年公認会計士試験論文式試験において、下図のような出題がなされています。

https://www.fsa.go.jp/cpaaob/kouninkaikeishi-shiken/r5shiken/shikenmondai/02.pdf

この点、「連結財務諸表等におけるキャッシュ・フロー計算書の作成に関する実務指針」12項におい下記のように記載されており、これが答えです。

12.(前略)
ここでいう非資金損益項目とは、税金等調整前当期純利益の計算には反映されるが、キャッシュ・フローを伴わない項目、例えば、減価償却費、のれん償却額、貸付金に係る貸倒引当金増加額、持分法による投資損益等を指す。しかし、営業債権の貸倒損失、棚卸資産の評価損等の営業活動に係る資産及び負債に関連して発生した非資金損益項目は、税金等調整前当期純利益の計算に反映されるとともに、営業活動に係る資産及び負債の増減にも反映されていることから、税金等調整前当期純利益に加減算する非資金損益項目には含まれない。
(後略)

移管指針第6号 連結財務諸表等におけるキャッシュ・フロー計算書の作成に関する実務指針

しかしながら、仮にこの規定を覚えていなくても、以下のようにこれまで述べてきた考え方に基づけば、この問題に簡単に答えることができるはずです。

例えば、棚卸資産評価損[C]を100計上する仕訳は下図のようになります。

この場合、A = 100 , B = 0 , C = -100 , D = 0 ということになります。

そのため、この場合の間接法の表示は下図のようになります。

このように、棚卸資産評価損[C]は税引前損益の計算に含まれるものの、相手科目である棚卸資産の減少額[A]で打ち消されるため、非資金損益項目としての調整は不要ということになります。

この点、同じ非資金損益項目であるものの、その他のCFに関連するPL[D]に該当する減価償却費の取扱いと比較して検討するとさらに理解が深まります。

例えば、減価償却費[D]を100計上する仕訳は下図のようになります。

この場合、A = 0 , B = 100 , C = 0 , D = -100 ということになります。

そのため、この場合の間接法の表示は下図のようになります。

このように、減価償却費[D]は税引前損益の計算に含まれ、かつ、相手科目である有形固定資産の減少額[B]が間接法における調整項目ではないため、非資金損益項目として税引前損益への影響を打ち消すための調整が必要ということになります。

以上より、非資金損益項目であるからといって、必ずしも間接法における調整項目となるわけではないという点がご理解いただけたかと思います。

6 数値例

これまで述べてきたことを数値例で確認していきます。

【前提条件:期中の取引等】

<商品売買関連>

  • 商品を1,000円で掛で仕入れた。

  • 買掛金1,001円が決済され、1,001円が出金された。

  • 111円の商品を1,101円で掛で売り上げた。

  • 売掛金1,100円が決済される際、為替差損1円が計上され、1,099円が入金された。

  • 期末売掛金に対して、為替差損100円が計上された。

  • 期末商品に対して、評価損110円が計上された。

<有形固定資産関連>

  • 有形固定資産の取得により、1,011円が出金された。

  • 有形固定資産に対して、101円の減価償却費が計上された。

<借入金関連>

  • 借入により、1,010円が入金された。

  • 支払利息10円が出金された。

  • 期末借入金に対して、為替差益11円が計上された。

【CFとその他のBS増減額・PLとの関係】

【営業CF(小計)】

参考:【その他のCF】

7 おわりに

貸借対照表等式から順を追って検討することにより、CF計算書における間接法に関する理解を深めることができたのではないでしょうか。

本件に限らず、会計論点で壁に当たったときには、一旦貸借対照表等式まで立ち戻って考え直してみることで理解が進むこともあるかもしれません。

なお、IFRSでは、2027年1月1日以後開始する事業年度から、間接法の出発点が税引前利益から営業利益に変更となります。

間接法の出発点が税引前利益から営業利益に変更になると、間接法における調整項目はどのように変わるのでしょうか。

この場合の考え方については、旬刊経理情報2026年6月10日増大号(通巻No.1778)の特集「2027年1月開始年度からの適用に向けて IFRS18号対応最終フェーズの実務ポイント」の第4章『PLとCFの分類のズレとBS等式が鍵 IFRS18号で変わるCF計算書の実務対応』で解説しています。

基本的な考え方は本稿と同様です。

ご興味がございましたら、こちらも是非ご覧ください。

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