泡だて器特許係争「平成28年(ワ)第12807号」(その7)
7.私見
(1)判決について
本件訴訟のポイントは、本件発明の構成要件B(この容器本体の上端側中途部に載置又は係止され下方に移動することが規制されてなる・・・蓋体)が、実施例に記載されたような容器本体内部の上端側中途部に蓋体を載置又は係止する構成だけでなく、容器本体外部の上端側中途部に蓋体を載置又は係止する構成も含むと解釈できるか否かでした。
判決では、まず、本件明細書中に蓋体の一部が容器本体外部に設けられる構成が開示も示唆もされていないことをはっきりさせました。続いて、蓋体の一部が容器本体外部に存在する場合、必然的に蓋体が容器本体の上端部をまたぐ形となって自ずと蓋体が下方に移動することが規制されることになるので「下方に移動することが規制されてなる」という文言は不要である、つまり蓋体が容器本体内部に存在するから「下方に移動することが規制されてなる」と規定する必要があった、と述べて被告製品は構成要件Bを充足しないと判断しました。
(2)訴訟について
ア 被告製品は蓋体が容器本体の開口をまたいで塞ぐ構成なので容器本体の上端が蓋体の天面部に当接しているのかと思いましたが、イ号物件説明図の中央断面図によると容器本体の上端は蓋体の天面部ではなく側壁部に当接していました。したがって、本件特許発明は文言上被告製品と一致すると言えます。被告は特許無効の抗弁をせず、構成要件の非充足しか主張していませんでした。進歩性欠如等を主張するのに適した先行技術文献が見つからなかったのかもしれませんが、かなり難しい状況だったのではないかと思います。
イ 原告は均等論を主張しませんでした。本件特許は審査段階で出願当初の請求項1(構成要件B含む)の進歩性が否定され、進歩性が肯定されていた従属項である請求項2を独立項(新請求項1)とすることで特許となりました。したがって、構成要件Bについて均等を主張した場合、均等侵害の第一要件はクリアできそうです。均等侵害のほとんどがこの第一要件の壁をクリアできずに終わることを考えると均等侵害を主張しても良かったように思います。もっとも、均等侵害を主張するとその構成要件は充足しないことを自ら認めていると捉えられるので不利に働くという考え方もあるようです。
本件についてはここまでです。
