【毎週ショートショートnote】告りびと(442字)
「つまり、死神ね」
夕暮れの交差点で彼女は言った。
僕は、死人から抜け出した魂に死を告げる「告りびと」の仕事をしている。「死神」と言われるのは心外だが、わかりやすく表現すればそうなる。
「学校の帰り道、君は前方不注意のトラックと衝突したんだ」
高校二年生の女の子は、堰を切ったように泣き出した。
「死神さん、何とかならないの。心残りがあって」
「死は取り消せない。ただ、突然死には救済措置がある。一つ可能な範囲で願いを叶えよう」
可哀想に感じ、特別な提案をしたのだった。
次の日の教室。涙を堪える男子生徒がいた。
「想いが伝わった。ありがとう、死神さん。いや、──先生」
そう言って、彼女は満足そうに消えていった。
僕は今朝、職員玄関から入り、事故現場で拾った告白の手紙を彼の下駄箱に入れたのだった。
手紙を渡せず下校した途中に事故に遭うなんて、何と悲しい巡り合わせだろうか。まさか自分の学校の生徒だったとは。せめて心残りがないようにと祈る。
こんな「告りびと」になるのもたまにはいいだろう。
(了)
たらはかに(田原にか)さんの企画に参加させていただきました。
*この記事は、以下の企画に参加しております。
