血が途絶えるまで…
それは、譲られたのではない。
押し付けられたのだーー
六十代になった今も、私は母から譲り受けた西洋人形を手放せずにいる。
いや、正確に言えば譲られたのではない。押し付けられたのだ。
幼い頃、家には人目に触れない隠し部屋のような空間があり、そこには人形と、古びたテーブルや椅子が置かれていた。
私はどうしても、その人形を好きになれなかった。
母も、可愛がるというより機嫌を損ねないために淡々と接しているように見えた。
子供心に、部屋の空気は重く、何かが潜んでいる気配があった。
夜になると、かすかな金属音や、人形が微かに動くような気配を感じることもあった。
母は決して口にしなかった。
だが、私には分かっていた。この人形は、ただの玩具ではないと。
母の死の間際、人形は当然のように私の元に来た。
供養に出そうとしたこともある。
しかし、まるで自ら戻ってきたかのように、また家に現れる。
理由を問いただそうとしたことは一度だけある。
その時、母は発狂したように暴れ、目が血走り、狂気に満ちた声で叫んだ。
「皆、逃げられない。血が途絶えるまで… …」
その言葉を聞いた瞬間、私は凍りついた。
恐怖で体が固まり、夜の静寂の中、人形がじっとこちらを見つめているように感じた。
時は流れ、私には孫もいる。
血は途絶えないだろう。
それでも、人形は生き続け、渡され続ける。
私が死んだ後も、孫の手元に届くのだろう——
その影はゆっくり、確実に忍び寄ってくる。
夜になると、ふと視界の隅に人形の顔がちらつく。
その瞳が、ほんのわずかに笑っているように見えた。
何か囁かれるような、不吉な予感が胸を締め付ける。
私は知っている。
これからも、この人形は渡り続け、
決して逃れることはできないのだ——
血が途絶えるその時まで…
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