お金の適材適所 ― お金にも「居場所」がある
お金は、置く場所によって育ち方がまったく変わる。
これは比喩でもなんでもなく、わりと文字通りの話だ。同じ1万円でも、タンスに眠らせておけば1万円のままだし、成長している会社の株に姿を変えれば、数年後には1万5000円になっているかもしれない。逆に、衰退している市場に置いてしまえば、5000円に目減りすることだってある。
お金そのものに力はない。力を持っているのは「居場所」の方だ。
種と土の話
植物を育てたことがある人ならわかると思う。同じ種でも、肥沃な土に植えれば芽が出て育つし、乾いた痩せた土に植えれば、いつまでたっても発芽すらしない。
種自体の性質は変わらない。変わるのは土だ。
お金もこれと同じ構造をしている。お金という「種」は、置かれた場所の栄養を吸って育つ。その栄養にあたるのが、業績であり、需要だ。
「居場所」を4つに分けてみる
お金の置き場所は、大きく4つに分類できると思う。
① 安全な場所 ― 銀行預金 増えないが、減らない。土でいえば、種を保管しておく倉庫のようなもの。育てる場所ではなく、待機させておく場所だ。生活防衛資金はここに置いておくのが正解になる。
② 平均点の場所 ― インデックス投資 市場全体という、無数の土地をひとまとめにした「大きな畑」に種をまくイメージ。どの区画が特別に肥沃かはわからないが、畑全体としてはならして見れば緩やかに育っていく。これは「世の中の需要の総和」に薄く広く根を張る置き方だ。
③ 尖った場所 ― 個別株・成長企業 特定の、栄養豊富な土地を選んで種を植える置き方。その会社の業績が良く、生み出すものに需要があれば、他の場所よりも大きく育つ可能性がある。ただし土地選びを間違えれば、当然育たない。
④ 荒れた場所 ― 衰退産業・供給過剰の市場 どれだけ手をかけても育ちにくい土地。悪い土地というより、そもそも作物に向いていない土地、という方が近いかもしれない。
「業績が良い」「需要がある」の正体
ここで少し立ち止まって考えたいのが、「業績が良い」「需要がある」というのは、そもそも何を意味しているのか、ということだ。
業績が良いというのは、その会社が生み出しているものに対して、対価を払ってでも欲しいと思う人が十分にいる、ということの結果でしかない。
需要があるというのは、もっと直接的に言えば「求められている」ということだ。
つまり突き詰めれば、お金が増える場所とは、他人に求められている場所なのだと思う。お金は、価値を求める人の集まる場所に自然と吸い寄せられていく。インデックス投資が長期的に緩やかに育ちやすいのも、「世の中全体の需要」という、誰にも止められない大きな流れに乗っているからだ。
適材適所は「お金」だけでなく「置き方」にも言える
ここまで置き場所の話をしてきたが、大事なのは「全部のお金を同じ場所に置く必要はない」ということだ。
生活費・すぐに使う予定のあるお金 → ①安全な場所
数年は使わない余裕資金 → ②③の育つ場所
生活防衛資金まで①の場所を離れて②③に置いてしまうと、いざという時に困る。逆に、何十年も使う予定のない資金を①に置きっぱなしにしておくのは、育つ機会をみすみす逃しているとも言える。
適材適所というのは、「良い場所を探す」ことだけでなく、「そのお金の役割に合った場所を選ぶ」ということでもある。
おわりに
お金をどこに置くかを意識するようになると、お金は勝手に働き始める。
種をまいたら、あとは土が育ててくれる。私たちにできるのは、どの土に、どのくらいの種をまくかを選ぶことだけだ。
需要、業績。それらはすべて「その場所がどれだけ求められているか」を示すサインでしかない。お金の適材適所を考えるということは、結局のところ「世の中で何が求められているか」を見つめ直すことなのかもしれない。
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