加熱するポルトガルサッカークラブ経営への外資参入。1・2部全36クラブの買収状況とトレンドの背景とは?
はじめに
近年のサッカー界では、マルチクラブオーナーシップ(MCO)モデルが急速に普及しています。この流れの中で、ポルトガルのクラブが海外投資家から特に高い関心を集めています。ここ数カ月だけを見ても、ポルトガル1部リーグの3クラブで外国資本による買収や出資が報じられ、海外資本の経営参画がさらに注目を浴びています。
日本との関連も見逃せません。「オノデラグループ」が「オリヴェイレンセ」の経営に参画したのに続き、日本人中心の投資ファンド「ACA Football Partners(ACAFP)」がマデイラ島に拠点を置く「ナシオナル」の運営会社(以下、「SAD」)の株式を取得することが報じられました。
本稿では、ポルトガルリーグにおける外国資本の動向を体系的に整理します。現地メディアの見解も取り入れながら、なぜポルトガルのサッカークラブが海外投資家にとって魅力的な投資先となっているのか、その背景を詳しく解説していきます。
2025年6月28日追記:
本記事の内容は、2025年5月18日時点の情報となります。サッカークラブ経営のオーナーシップは日々刻々と変化します。例えば、本記事でご紹介した「ナシオナル」の買収はその後6月28日に、現地メディアが「破談」になった旨を報じました。
新しい報道が出るたびに都度本記事の内容を更新することはいたしません。日々のアップデートについては筆者のXでご紹介しておりますので、興味がある方はぜひフォローいただき、最新情報をモニタリングください。「#ポルトガルサッカー経営への投資加熱🔥」というタグを設定し、確認できた報道ベースで外資参入の動向をアップデートしています。
ポルトガルクラブへの外資参入状況
2024-25シーズン1部リーグ全18クラブ
まず、2024-25シーズンのポルトガル1部リーグ(プリメイラ・リーガ)に所属する18クラブについて、各クラブの外国資本の参画状況を以下に整理します。オーナー企業や人物名、国籍、保有比率など公開情報から判明する範囲でまとめます。(2024-25シーズン最終順位順)
■スポルティング – ソシオ(クラブ会員)主体で経営されており、外国資本は確認できません。
■ベンフィカ – 詳細は後述しますが、直近になって米国資本が5.24%の株式を取得したと報じられました。
■ポルト – ソシオ主体で経営されており、外国資本は確認できません。
■ブラガ – 中東カタールの政府系投資ファンドでパリ・サンジェルマンのオーナーでもある 「カタール・スポーツ・インベストメンツ(QSI)」が29.6%を保有しています。2022年時点の情報では、ブラガが36.99%、QSIが29.6%、ロンドン拠点の「サンダウン・インベストメンツ」(ブラジル系)が17.04%、その他が16.37%とされています。
■サンタ・クララ – ブラジル人実業家ブルーノ・ヴィシンチン氏が55.8%の株式を保有しており、筆頭株主となっています(2022年買収)。
■ヴィトーリア・ギマランイス – アストンビラ(英)のオーナーグループである「Vスポーツ」(米国・エジプト系資本)が29%を保有しています。
■ファマリカン – イスラエル人大富豪イダン・オフェル氏率いる「クオンタム・パシフィック・グループ」が85%を保有しており、筆頭株主です。同氏はアトレティコ・マドリーの株主でもあります。
■エストリル・プライア – 米国の投資グループ「MSPスポーツキャピタル」が2019年から経営権を握っています。MSPはNBAフェニックス・サンズのオーナーでもあるジャーム・ナジャフィ氏らが率いるファンドで、近年欧州サッカーにも積極投資しています。
■カーザ・ピア – 米系投資ファンド「MSDキャピタル」(ロバート・プラテック氏)が筆頭株主としてクラブを経営しています。プラテック氏はスペツィア(イタリア)やスナユスケ(デンマーク)のオーナーも務めた米国人投資家です。
■モレイレンセ – 詳細は後述しますが、米系投資会社「ブラック・ナイト」が株式の62.5%(最大70%)を取得予定であり、2025年5月末の総会で承認待ちの状況です。
■リオ・アヴェ – ギリシャの海運王でありオリンピアコス(ギリシャ)およびノッティンガム・フォレスト(英)のオーナーでもあるエヴァンゲロス・マリナキス氏が80%の株式を保有しています(2023年買収完了)。なお、同氏は株式取得に際し、2,050万ユーロ(約33億円)で債務を一掃することを約したとされています。
■アロウカ – 地元企業家のカルロス・ピーニョ会長が経営を主導しており、外国資本は確認できません。
■ジル・ヴィセンテ – 外国資本は確認できず、伝統的に地元経営陣がクラブ運営を担っていると推察されます。
■ナシオナル – 詳細は後述しますが、シンガポール系投資グループ「ACA Football Partners」へのSAD株式60%の売却が株主総会で承認されており、過半数株が外国資本に移る予定です。
■エストレラ・アマドーラ – 元フランス代表パトリス・エヴラ氏が参加する米国テック企業「MYFCグループ」がSAD株式の90%を取得しています(2023年買収)。同クラブは近年下部リーグからの躍進を果たし、外資の後押しで1部復帰を果たしました。
■AVS – ブラジル人実業家ルーベンス・タカノ・パレイラ氏がオーナーです。パレイラ氏はブルスキ(ブラジル)も傘下に収めており、多角的にサッカークラブへ投資しています。
■ファレンセ – 外国資本は確認できず、伝統的に地元経営陣がクラブ運営を担っていると推察されます。
■ボアヴィスタ – 2020年に元F1チームオーナーでもあるルクセンブルク系投資家ジェラール・ロペス氏が約51%の株式を取得し筆頭オーナーとなりました。ロペス氏はリール(フランス)を一時保有したことでも知られます。
ナシオナル、モレイレンセ、ベンフィカの詳細状況
続いて、特に直近数ヶ月で動きのあったナシオナル、モレイレンセ、ベンフィカの外資参入状況について、より詳細な情報をまとめます。
■ナシオナル(CD Nacional) – ナシオナルはSAD株式の60%をシンガポール拠点の投資グループ「ACA Football Partners」へ売却する契約を締結し、2025年4月21日の臨時総会で承認を得たと報じられました。報道によると、売却額は1,300万ユーロ(約20億円)で、4月末と8月末に650百万ユーロずつの2回に分けて支払われます。契約には追加で10%の株式を2026年末までに売却できるオプションも含まれ、行使されれば計70%をACA社が保有することになります。なおナシオナル側は、スタジアム等のインフラやアカデミー組織は引き続きクラブ保有とする条件も盛り込んでおり、ACA社には主にプロチームの「運営権」を売却する予定です。
■モレイレンセ(Moreirense FC) – 米国投資グループ「ブラック・ナイト・フットボール・グループ(BKFG)」からの出資受け入れを協議しており、2025年5月31日に臨時総会で審議・投票が行われると報じられました。クラブの発表によると、BKFGに対してSAD株式の62.5%(最大70%)を譲渡する議案が提示されています。BKFGはプレミアリーグのAFCボーンマスのオーナーであるビル・フォーリー氏が率いるファンドで、ロリアン(フランス)やハイバーニアン(スコットランド)、オークランド(ニュージーランド)にも出資しているMCOです。報道によると、モレイレンセとBKFGは基本合意に達しており、米国側代表としてフォーリー氏が出資を主導すると報じられています。仮に総会で承認されれば、モレイレンセはクラブ創設以来初となる外資の受け入れとなります。あわせて、スタジアムと新練習場の敷地を30年間にわたり賃貸する契約や、クラブ保有資産の一定期間売却禁止条項なども審議される予定です。
■ベンフィカ(SL Benfica) – ポルトガルを代表する名門にも、ついに外国資本の動向が報じられました。2025年5月14日、米国の投資グループ「レノア・スポーツ・パートナーズ (LSP)」がSAD株式の5.24%を取得したことが開示されました。LSPは米国人投資家ジャン=マーク・チャプス氏とエリオット・ヘイズ氏が代表を務める投資ビークルで、同社傘下のLSP Lisbon (Scotland) LtdおよびLSP Lisbon LLCを通じて5%超の株式を取得した形です。そのちょうど1週間前にはベンフィカ前会長ルイス・フィリペ・ヴィエイラ氏が保有していた3.28%分の株式が競売にかけられており、その落札分を含めて株式を買い集めたものと見られています。ベンフィカは自クラブ株の優先買取権侵害の可能性があるとしてこの売却に異議申し立て中ですが、事実上クラブ史上初めて外国資本が発行株の5%超を握る事態となりました。もっとも、依然としてベンフィカはクラブ会員主体で約70%の議決権株式を維持しており、支配権への影響は限定的です。
外資未参入の1部クラブ
上記より、現時点で外国資本の参画が確認できない1部リーグのクラブは、以下の5クラブとなります。
スポルティング、ポルト、ジル・ヴィセンテ、アロウカ、ファレンセ
※ナシオナルも株式の正式譲渡完了までは外資未参入ということになりますが、売却承認済みとの報道より上記から除外しています。また、モレイレンセとベンフィカは、前述のとおり特筆事由があるため除いています。
1部リーグ全18クラブのうち、現時点で13クラブ、すなわち7割ものクラブの株式過半数を外国企業が保有することになります。ポルトガルサッカークラブへの海外投資家からの関心が熱を帯びていることが伺えるでしょう。
2024-25シーズン2部リーグ全18クラブ
続いて、2024-25シーズンのポルトガル2部リーグ(セグンダ・リーガ)に所属する18クラブについて、各クラブの外国資本の参画状況を以下に整理します。(2024-25シーズン最終順位順)
■トンデラ – 2025年2月、スペインの投資会社「エリーテ・ヘスティオン・イ・アドミニストラシオン」が、SADの過半数株を取得し筆頭株主になったことが発表されました。一方で、旧オーナーであるジルベルト・コインブラ氏(ポルトガル)も一部経営に残るとされています。
■アルヴェルカ – オーナーであったリカルド・ヴィシンチン氏(※前述のサンタ・クララのオーナーであるブルーノ・ヴィシンチン氏の父親)は2025年2月、スペイン人及びブラジル人が中心となる投資グループに、自ら保有する株式75%相当を売却すると発表しました。報道によると、売却額は800万ユーロ(約13億円)とされています。なお、同グループには、現役選手であるヴィニシウス・ジュニオール(レアル・マドリー)も参画しており、ポルトガル国内でも大々的に報じられました。
■ヴィゼラ – 中華系カナダ人であるエドマンド・チュウ氏が代表を務める「SECA」社が2017年から同クラブに投資しており、それ以降、過半数以上を保有する主要株主として経営に関与しています。
■ベンフィカB – ベンフィカの育成チームであり独自の資本構成はなし。ベンフィカの資本関係については、前述のとおりです。
■トレエンセ – 外国資本は確認できず、伝統的に地元経営陣がクラブ運営を担っていると推察されます。
■レイリア – 2025年3月、同クラブの大株主ナヴディープ・シン氏(英)から、米国の投資ファンド(※具体的な固有名詞は不明)が過半数を超える株式を取得する契約が完了したと報じられました。すでに米国資本が経営に参画していると推察されます。
■シャヴェス – 現オーナーのフランシスコ・ジョゼ・カルバーリョ氏(ポルトガル)は2025年2月時点で株式譲渡を否定しています。引き合い自体はあるものの、外資参入は交渉段階にとどまるものと推察されます。
■フェイレンセ – ナイジェリアの実業家クンレ・ソナメ氏が、2015年10月にSAD株式の70%を取得し筆頭株主となっています。
■フェルゲイラス – 外国資本は確認できず、伝統的に地元経営陣がクラブ運営を担っていると推察されます。
■アカデミコ・デ・ヴィゼウ – 「ホブラ」社(ドイツ)が2021年8月にSAD株式の51%を取得。残りはポルトガル人オーナー(旧株主)が保有しているとされます。
■ペナフィエル – 外国資本は確認できず、伝統的に地元経営陣がクラブ運営を担っていると推察されます。
■マリティモ – 現オーナーであるカルロス・アンドレ・ゴメス氏(ポルトガル)らが株式を保有しています。2025年3月時点で英国の投資グループがSAD買収交渉中と報じられましたが、現状正式決定には至っていないものと見られます。
■レイションイス – 2024年8月、ブラジルの名門「フラメンゴ」がSADの筆頭株主を務める運営会社「プレイ・フェア」の過半数株式(56.66%)を1,000万ユーロ(約16億円)で取得する交渉が報道されましたが、その後、フラメンゴ側の会長選の影響で交渉が中止されました。それ以降、レイショインスに外資参入があった報道は確認できません。
■ポルトB – ポルトの育成チームであり独自の資本構成はなし。ポルトの資本関係については、前述のとおりです。
■ポルティモネンセ – 主要株主はテオドロ・フォンセッカ氏(ブラジル国籍でありながら長年ポルトガルで活動するエージェント)で、現時点では外国資本は参画していません。2024年7月には中国大手「スーニングループ」が8,000万ユーロ(約130億円)で買収交渉中との報道もありましたが、実現したという報道は確認できません。
■パソス・デ・フェレイラ – 2025年3月、同クラブの新会長ルイ・アブレウ氏は、ブラジル人実業家ギリェルメ・ベリタンニ氏率いる「グルーポ・スクアドラ」がSAD株式75%を800万ユーロ(約13億円)で取得することを発表しました。
■オリヴェイレンセ – 2022年11月、横浜FCを傘下に持つ日本の外食大手「オノデラグループ」がSADの過半数株を取得し、子会社化しました。
■マフラ – 2023年8月、ミッティラン(デンマーク)を傘下に持つデンマークの投資会社「ハートランド」がSAD株式の80%を取得し筆頭株主となりました。
UDレイリアへの外資参入が正式に決定しているとすると、2部リーグは18クラブ中9クラブ、つまり50%が外資傘下ということになります。おそらく収益性の観点から1部リーグに比べると少数ですが、2023年~2025年という直近3年間での買収が多く、ここでもポルトガルクラブ投資の過熱トレンドが見て取れるでしょう。
外資参入が相次ぐ背景:ポルトガルが買収ターゲットとなる理由
近年ポルトガルクラブに外国資本が集まる背景には、ポルトガル市場がサッカークラブ投資に適した魅力的な経営環境であることがあります。以下、「Football Benchmark」が発行したレポートを参照しながら、主要な要因を整理します(より詳細な情報はぜひとも当該レポートをご参照ください)。
買収価格が比較的割安である
ポルトガルクラブは欧州主要リーグに比べ市場規模が小さいため評価額(=買収コスト)が低く、投資対象として手が届きやすいことが要因のひとつとして挙げられます。Football Benchmarkの調査によると、近年はビッグ3を除く1部クラブの年間収益規模は、平均で1,000万ユーロ(約16億円)前後に留まっているとされ、これは他国トップリーグと比べると低水準であり、買収コストが比較的安価である要因になっています。実際に、上位クラブ以外の1部中位~下位クラブであれば数千万ユーロ規模で買収可能とされる案件も多く(前述、ポルトガル1・2部全36クラブの投資状況一覧のとおり)、比較的少額の投資でクラブの経営権を取得できるチャンスがあります。「ポルトガルクラブは、飽和状態でコストの高い市場に比べ、少ない初期投資で高いリターンを狙える」(Football Benchmark)と指摘されるとおり、投資効率の良いエントリーポイントとなっています。
巨額な移籍金収益が見込まれる
ポルトガルクラブ経営の大きな特徴は、選手の売買による「移籍金」を重視するモデルでしょう。ポルトガルは「ヨーロッパ有数の選手供給地」として知られ、ベンフィカ、スポルティング、ポルトといった強豪は、世界的に有名なアカデミー組織を保有し、定期的に欧州トップリーグ(特にTier1である5大リーグ)に人材を供給しています。実際に、Football Benchmarkの調査によると、2018/19〜2024/25までの7シーズンでポルトガル1部18クラブが計上した移籍金収益の合計は、毎年4億ユーロ(約650億円)を超え(コロナ禍を除く)、2022/23シーズンにはピークとなる6億1,600万ユーロ(約1,000億円)に達しました(ただし、約70%はビッグ3、残り30%が他中小クラブによるもの)。特にベンフィカは近年、ジョアン・フェリックス(1億2,700万ユーロ)やエンソ・フェルナンデス(1億2,100万ユーロ)など、ほぼ毎シーズン巨額の移籍金で主力を売却し、ビッグ3以外でもポルティモネンセの中島翔哉(3,500万ユーロ)やブラガのヴィティーニャ(3,200万ユーロ)などの例も存在します。こうした移籍金は、人口約1,000万人の小さな国家であり、多額のチケット収益やグッズ収益が見込まれない中、クラブ経営における主要な収益源となっています。下位クラブであっても若手を安く発掘・育成し高値で転売することで黒字化を図るケースが多く、小規模投資で旗艦クラブの人材供給源として収益を上げるというMCO戦略とも親和性が高いビジネスモデルと言えます。
有望なポルトガル語圏出身選手を寛容な外国人枠のもとバリューアップできる
ポルトガルはブラジルを筆頭にアンゴラ、モザンビーク、カーボベルデ等の旧ポルトガル植民地と歴史的・言語的な結びつきを持ち、これが人材供給面で大きな強みとなっています。実際に、Football Benchmarkの調査によると、現在のプリメイラ・リーガ各クラブの主力選手を見ると、ブラジル人が全体の18.4%を占め、ランキングトップ10にはカーボベルデ(2.1%)とアンゴラ(1.6%)も含まれるなど、外国籍選手の中でもポルトガル語圏出身者の数が突出しています。ポルトガルクラブは南米・アフリカの原石を安価で獲得して自国で磨き、転売益を得る選手供給地として機能しているわけです。加えて、外国人枠の制度面でも、非EU圏選手の登録に制限がなく、他国リーグより非EU圏の有望株を受け入れやすいというメリットも挙げられます。また、「EU圏外の選手獲得に制限がないことは、国際的なタレント獲得で大きな競争優位となっている」(Football Benchmark)ため、スカウト面でも有望市場とみなされています。ちなみに、外国人の就労ビザの観点でも、オランダやベルギーなどと比べると、Tier2リーグの中では取得に要する最低賃金が格安である点もメリットになっています。
MCO戦略との親和性が高い
上記のような移籍金を主とするビジネスモデルやポルトガル語圏ネットワーク、外国人が就労しやすい制度面により、ポルトガルクラブはグローバルなMCO経営の一角として理想的な立ち位置を確保しています。実際に、Football Benchmarkが引用したUEFAの調査によれば、2024年時点で世界342クラブが何らかのMCOに属していますが、ポルトガルはビッグ5リーグ外では米国・ベルギーに次いで傘下クラブ数が多い国です。投資家側から見ると、ポルトガルクラブをMCO傘下に収めることで自前の育成ルートを確保し、他リーグの旗艦クラブへ人材供給する「ステップアップ先」として活用できる利点があります。特にブラジルなどから直接Tier1リーグへ移籍させるよりも、一旦ポルトガルで欧州に適応させてから転売する方が、高い費用対効果が見込めるため、欧米のビッグクラブや投資ファンドが続々とポルトガルクラブに食指を伸ばしています。「342クラブがMCOに属する時代において、ポルトガルマーケットは強固な人材育成エコシステムと魅力的な参入コスト、企業寄りの規制環境により、投資家にとって最も魅力的な環境の一つ」(Football Benchmark)と評されています。
放映権の分配見直し、UEFA大会への出場機会など制度面によるクラブ価値向上が見込まれる
ポルトガルリーグでは2027/28シーズンからテレビ放映権の分配傾斜の見直しを予定しており、従来はビッグ3に偏っていた分配が中小クラブにも手厚くなる見通しです。この改革により、中位以下のクラブでも放映権収益の増加が期待できるため、経営の安定化やクラブ価値の向上が見込まれます。さらに、ポルトガルはリーグ順位とカップ戦優勝により、毎年最低5クラブが欧州のカップ戦(チャンピオンズリーグ、ヨーロッパリーグ、カンファレンスリーグ)への出場権を得られます。特にビッグ3以外にも獲得機会がある4枠目・5枠目として、中位クラブにもUEFA大会に出場して収益を増加させるチャンスがあります。勝ち進めば多額の賞金や国際的な露出が見込まれるため、クラブ価値の向上に繋がります。
さいごに
なぜ近年ポルトガルクラブに対する外国企業からの投資が過熱しているのか。その答えは、世界的なブームとなっているMCOトレンドの中でも、特に小さな投資(中小クラブであれば数千万ユーロ(数十億円))で買収しやすく、その割には、一度の移籍で買収額をリクープし得る多額の移籍金収益やUEFA大会でのビジネス機会等が見込まれ、かつ、2027/28シーズンからの制度改革による将来的な放映権収益の増加が見込まれ、エグジット時のキャピタルゲインも含めた大きなリターンに繋がるという評価が高まっているため、と結論付けられそうです。
参考文献
ポルトガルクラブへの投資過熱の背景
Investing in Portuguese football: a prime spot for Multi-Club Ownership? - Football Benchmark
1部リーグ各クラブへの投資状況
Luxembourg-Spanish investor takes majority in Boavista football unit – ECO News
Nacional com luz verde para concretizar negócio com grupo de investimento
Moreirense: sócios vão votar entrada de fundo na SAD | Abola.pt
AG para decidir entrada do dono do Bournemouth na SAD do Moreirense | Abola.pt
Americanos detêm mais de 5% da SAD do Benfica | Abola.pt
2部リーグ各クラブへの投資状況
Grupo espanhol assume posição acionista maioritária na SAD do Tondela - Tondela - Jornal Record
Dr. Ricardo Vicintin vende participação – FC Alverca SAD
Vinicius leads investment group in takeover of Portuguese club Alverca
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