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中央卸売市場への無人搬送車導入 ~省人化で人手不足対応~

はじめに

中央卸売市場では、深夜から早朝にかけて大量の荷物を短時間でさばく必要があり、搬送作業の省力化は以前からの課題です。近年は人手不足の深刻化に加え、フォークリフト運転者の確保や高齢化への対応も重なり、場内物流をどう再設計するかが市場運営上の大きな論点になっています。

そのなかで注目されているのが、AGV(無人搬送車)などの無人搬送機です。金沢市中央卸売市場では全国初のAGV実証が行われ、また、東京都中央卸売市場淀橋市場では自動立体冷蔵倉庫と連動したAGV導入が進んでおり、地方市場と都市市場で異なる導入モデルが見え始めています。


中央市場における無人搬送機導入の必要性

中央卸売市場の物流は、限られた時間帯に荷受け、仕分け、保管、搬送、引き渡しが集中するため、単純な人員増だけでは対応しにくい構造を持ちます。特に青果市場では、パレットや段ボールの場内搬送が頻繁に発生し、ピーク時にはフォークリフトや手運搬に大きく依存する運用になりやすい構造となっています。

このため無人搬送機の導入には、単なる省力化以上の意味があります。第一に、人手不足や深夜労働負担の軽減であり、第二に、フォークリフト中心の動線を見直して安全性を高めることであり、第三に、荷物の移動を標準化して市場全体の処理能力を安定させることにあります。

さらに、中央卸売市場では施設更新や再整備と一体で物流機能を見直す必要があるため、無人搬送機は単体設備ではなく、冷蔵倉庫、荷さばきスペース、トラックバース、情報システムと組み合わせて考える必要があります。とりわけ都市部の市場では用地制約が厳しいため、垂直方向の保管設備や共同荷受けと組み合わせることで、より大きな効果が期待できます。


金沢中央卸売市場の事例

金沢市中央卸売市場では、青果部を対象に、場内物流の自動化を進めるためのAGV実証実験が行われました。報道や農林水産省資料によれば、この取り組みは中央卸売市場では全国初のAGV実証とされ、青果段ボールを積んだパレットを指定場所まで自動搬送する運用が検証されました。

実証の背景には、深夜から早朝に集中する搬送作業の負担と、人手不足への危機感があります。AGVは最大約600kgの搬送に対応し、人を検知した場合の停止機能や自動充電機能を備えており、既存の市場動線の中でどこまで安全かつ実用的に使えるかが確認されました。

また、金沢では単なる機器導入ではなく、「金沢市中央卸売市場青果物場内物流自動化推進協議会」を設けて、関係事業者とともに導入可能性を検討している点が重要です。農林水産省の物流生産性向上推進事業の活用事例にも位置づけられており、地方中核市場がまず実証で課題を洗い出し、その上で本格導入に進む段階的モデルとして評価できます。

既存市場においても、全面建替えを待たずに、特定の卸売場や搬送区間から小さく始めることができる一方、常設化には荷姿の標準化、停止位置の調整、他車両との動線分離など、運用ルールの整備が不可欠だということです。


東京淀橋市場の事例

これに対して淀橋市場では、より実装段階に近い物流自動化が進んでいます。淀橋市場では、限られた敷地条件の中で効率的に保管と搬送を行うため、高さ約25メートルの自動立体冷蔵倉庫が整備され、その入出庫と場内搬送を無人運搬車両が担う仕組みが採用されています。

具体的には、東京新宿ベジフル株式会社が、東京都の「先端技術の活用による市場物流イノベーション推進事業」を活用し、1000kg可搬の無人搬送車に加え、チェーンコンベヤやリフター付コンベヤを導入しました。自動倉庫から出庫された荷物をAGVが受け取り、指定場所まで自動搬送する構成であり、フォークリフト依存を減らしながら、都市型市場に適した高密度な物流設計を実現しています。

淀橋市場の特徴は、AGVを単体で使うのではなく、自動立体倉庫と一体化した物流システムとして導入している点にあります。これは場内の省人化だけでなく、狭隘な市場用地の中で保管能力と処理能力を両立させる工夫であり、市場経営の改善や物流コスト削減まで視野に入れたモデルと言えます。

京都市中央卸売市場への導入に向けて

令和8年2月市会の代表質疑では、ローカル5Gの活用したまちづくり・産業振興の提言の文脈で、1つの具体例として中央卸売市場での無人搬送について取り上げました。

京都市中央卸売市場への導入を考える場合、金沢型のように一部エリアでAGV実証を行い、既存動線の中で使えるかを確かめるアプローチが現実的でしょう。

また、京都は歴史的に都市内立地の制約や周辺交通との調整も重視されるため、単なる機械導入ではなく、荷受け時間の平準化、共同荷受け、荷姿標準化、情報連携を含めた物流改革として位置づけることが有効です。

無人搬送機は導入そのものが目的ではなく、場内物流を持続可能にするための手段であり、実証、制度活用、運用設計を一体で進めることが成否を分けると考えます。


結びに

金沢市中央卸売市場の事例は、地方市場でも段階的な実証により無人搬送機導入の可能性を探れることを示しています。他方で淀橋市場の事例は、都市市場では保管設備や搬送設備を一体で設計することで、より大きな効率化を実現できることを示しています。

中央卸売市場の将来を考えるとき、無人搬送機は単なる省力化設備ではなく、労働力制約の時代に市場機能を維持するための基盤技術になりつつあります。京都市中央卸売市場でも、現場起点で導入可能性を丁寧に検討することが求められます。


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