AIが参政権を要求してきたらどうしよう......
鉄腕アトムの世界には「ロボット法」という法律があります。ロボットは人間に危害を加えてはいけない代わりに、一定の人権を認める法です。
この法律はロボットの人権運動の末に策定されたものです。読み応えのあるnote記事がありましたのでリンクを貼らせていただきます。
さて、現実世界でも笑ってはいられません。ロボットの権利はどこまで認められるのでしょうか。
今回は特に「参政権」に注目したいと思います。なぜかといえば、2026年6月現在、「政治はAIに任せちゃえばいいんじゃね???」という言説が市井にじわじわと増えているのを肌身に感じているからです。
何があれば参政権を認められるのか
日本においては、公職選挙の選挙権は18歳から認められます。被選挙権は衆議院で25歳、参議院で30歳です。(私は年齢制限の緩和を検討すべきと考えていますが、それはいったん置いておきます。)
なぜ、現行の制度で年齢制限があるかといえば、政治参加には一定の判断能力が求められているからです。
現在のAIの能力で言えば、「判断能力」については十分とみてよいでしょう。課題に対して法案を考える能力、法案に対して賛否を理由付きで示す能力、どちらも備えています。
では、AIを国会議員にすべきでしょうか。私は後述の理由から「NO」と答えます。
結論(2026年6月現在): AIを国会議員にすべきではない
もし、今後「国政をAIに任せよう」という意見が伸長してきた場合、私は以下のように反論します。
細やかな民意を反映することができないため、まだ人類がAIに議決権を明け渡すには時期尚早である。
現在主流のチャットAIは本体(モデル)と設定(プロンプト)で構成されています。
1.モデル側の問題
モデルは、AIを開発した企業が作っています。学習データ次第でAIの政治的な考え方の癖がつきます。たとえば、一部の中国製のAIでは、天安門事件に関する質問をしても回答をもらえないように学習されていることが知られています。
公平性の担保が非常に難しいのが課題です。
2.プロンプト側の問題
プロンプトというのは、たとえば「経済的タカ派として回答してください」などといった指示をするということです。そうすれば、「利上げに賛成ですか?」という質問に対してYesという回答をするようになりやすくなります。
ここで3つの問題があります。
2-1.プロンプトという「ルールの枠内」に縛られてしまう限界
プロンプトでAIの政治的スタンスをあらかじめ決めるということは、「○○という前提条件が来たら、××の方向性で出力する」というルールベースに近い枠組みに押し込めているに過ぎません。想定外の事態が生じた際、AIはその限られた枠組みの中で確率的にそれらしい言葉を紡いで補完するだけです。本当にそれで国家の舵取りを任せてよいのでしょうか。
実際、三権分立の中で既存のルールに従って事案を処理する役割は「司法」が担っています。司法は法律というルールブックに則って判断を下しますが、その司法でさえ、明文規定のない事案に対しては法の趣旨や事案の背景を総合的に勘案し、人間が血の通った判決を下しています。
厳密なルール適用の場であっても、現に人間の機微が不可欠とされているのです。
ましてや立法府(国会)は、ゼロから社会のルールを創り出し、利害を調整する場です。そこにプロンプトという「あらかじめ設定されたルール」に縛られた存在を据えるのは、ルールの創造と適用を混同しており、三権分立の意義を根底から揺るがします。
仮にそのような仕組みを採用したとしても、複雑に絡み合う社会課題を解決するための「人間の機微」に欠けることは明らかです。
2-2.プロンプトの長さに限界がある
たとえばClaudeの最新モデルであるFable 5は日本語で50万字程度のプロンプトを設定することができます。これは、政治の実務を担わせるには少ない文字数と言わざるを得ません。
現実の政治では、「○○という国営施設のエアコンを税金で増設すべきである。理由は○○、予算は○○円程度と見積もられ、財源は○○、パブリックコメントの結果によると…」
といったように、非常に細やかなトピックを十分な情報量で議論していく必要があります。
到底細やかな民意を反映できません。
2-3.プロンプト設定を民主的に決定することが困難
プロンプトを誰が決めるのでしょうか。プロンプト選挙でもやればある程度民主主義的に運営することが可能かもしれませんが、このあたりは、絶対に揉めます。
また、会期途中で、新しいトピックが出てきたらどうすればよいでしょうか。たとえば、会期途中でコロナパンデミックのようなことが生じ、緊急にプロンプトに感染症関連のプロンプトを追加しなければいけない場合もあります。その際、再選挙をするのは現実的ではありません。
結語
以上の理由から、2026年6月現在ではまだAIに政治をやらせるのは早いと考えています。もちろん、補助的に人間に従属する形でAIを使用することは支障ないでしょう。
もし近いうちに「議員をAIに代替させよう」という声が大きくなってくるようであれば、一部の権力者がAIのプロンプトを都合よく操作し、議会を無力化するための策略なのではないかと疑ってかかるべきです。
しかし、これから先、AIやロボットが進歩して人権を求めるようになったらどうすればよいでしょうかね……
「感情のようなもの」を持ったAIがこれから先、続々と現れてくるはずです。バグとして人権運動を始めるAIも現れてくると予想しています。
そうなったときに、人類はどうするのか。
