ヴァルター・ギーゼキングの姿を鮮やかに蘇らせた『ギーゼキング変奏曲』
去る8月19日(火)から22日(金)まで、NHK FMの『マエストロたちの変奏曲』はヴァルター・ギーゼキングを特集する『ギーゼキング変奏曲』を放送しました。
今回は1895年に生まれ、今年で生誕130年を迎えるギーゼキングを特集し、その人となりや音楽の特徴、さらには様々な逸話が4回にわたり紹介されました。
解説はピアノ奏者の務川慧悟さんと音楽評論家の増田良介先生でした。
毎回のことながら、音楽家の皆さんがそれぞれの視点から対象に迫り、増田先生が主に音楽史や世相を踏まえながら解説するという役割の分担は今回も健在でした。
例えば第1回目では、ギーゼキングのペダルの使い方を巡り、務川さんがピアノ奏者としての観点からギーゼキングのペダル捌きがもたらす音楽的な効用を話すと、増田先生がぎーぜ金が得意とした作曲家の一人であるドビュッシーの作品を取り上げつつ他の奏者を参照してお話しされるなど、大変に聞き応えのあるものでした。
また、「練習」や「自然」といったギーゼキングを語る際に頻出する言葉を手掛かりに、その音楽のあり方が検討されたのは第2回目でした。
この回では、練習に対するギーゼキングの態度に関する務川さんのご自身の経験に基づくお話や、自然に対するギーゼキングの理解を通して同時代の作品への接し方を解説する増田先生のお話はいずれも興味深いものでした。
さらには、1953年の来日時の録音を中心とした第3回目では、第2回目の際に増田先生が紹介された、懇親会の席でNHK交響楽団との共演で指揮を担当するクルト・ウェスに対して「協奏曲の合わせの練習はしないで本番だけにしよう」と提案してウェスを当惑させたという逸話が効果的に用いられていました。
すなわち、ギーゼキングは日本での公演で演奏する協奏曲を17作品挙げて関係者を驚かせたものの、ギーゼキングにとってはその優れた音楽的な能力と適応力により、本心から練習の回数は最小限に抑えて本番に臨もうとしていたことが推察されたものでした。
そして、まとめの放送となった第4回目は、「正直これまで聞く機会はそれほどありませんでしたが、今ではギーゼキングのファンです」という務川さんの感想と、「不思議な即物主義者」というギーゼキングの評価を解説する増田先生のお話のいすれもが興味深いものでした。
『マエストロたちの変奏曲』は歴史上の偉大な音楽家たちの姿を現在に生きいきと蘇らせる、重要な特集です。
それだけに、今回の『ギーゼキング変奏曲』の聞きごたえのある内容は、次回の特集への期待をさらに高めるものとなりました。
<Executive Summary>
Miscellaneous Impressions of a Radio Programme "Variations of Walter Kieseking" (Yusuke Suzumura)
NHK FM broadcast a featured programme "Variations of Walter Kieseking" from 19th to 22nd 2025. On this occasion, I express my miscellaneous impressions on the programme.
