第3回:冥王星獅子座時代—— 「理想」の強制と、歴史に残る最大の悲劇
冥王星は獅子座へーー「国家規模の狂気」へ
1937年、世界が再び大きな戦争へと向かう中、冥王星は「王のサイン」である獅子座に足を踏み入れました。
獅子座は、自己表現、誇り、生命力、そして「自分が世界の中心である」というヒーロー性を象徴するサインです。本来、クリエイティビティや個人の輝きを司るこのエネルギーが、冥王星という破壊的・究極的なパワーと結びついたとき、優生思想はついに「国家規模の狂気」として爆発しました。
「共同体を守るために異物を排除する」という蟹座の論理が、「より良いものを掲げる」「誇示する」という、獅子座的な物語へと変わります。
強い国、優れた民族、理想的な身体、模範となる人間像。
選別は、もはや後ろめたい判断ではありません。それは堂々と示すべき理想となったのでした。
「選ばれし者」というドラマの演出
獅子座は、物語の「主役」でありたいという欲求を持ちます。この時代、優生思想はもはや教養としての統計学でも、身内を守るための防衛策でもなくなりました。
ナチス・ドイツの「アーリア人こそが世界の主役であり、最も美しい種である」というプロパガンダに象徴されるように、強烈な自己肯定のドラマへと塗り替えられていきます。
「理想的な人間」を設定し、それ以外の存在を「背景」どころか「不純物」として徹底的に排除する。獅子座の持つ「自己を輝かせるための情熱」が、他者を否定することでしか自らを証明できないという、最悪の形で発揮されてしまったのです。
「理想」という名の強制
獅子座は火の不動宮であり、「自分の意志」を曲げない頑固さを持ちます。 「こうあるべきだ」という理想像が一度固定されると、そこから外れるものは容赦なく切り捨てられます。
双子座時代に「ラベル」を貼られた人々、蟹座時代に「排除」の対象となった人々は、この獅子座時代に「絶滅の対象」となりました。
断種法に基づき各国で次々と実行された強制不妊手術、「T4作戦」に代表される障害者への安楽死政策、そしてホロコースト。これらは「完璧で美しい世界を創る(クリエイトする)」という歪んだ獅子座的創造性の果てに行われた、命の選別でした。
権威の絶対化と「物語」に魅了された国民
獅子座は「太陽」を支配星に持ち、絶対的な権威を象徴します。この時代、カリスマ的な指導者の「意志」が神格化され、それが科学や倫理を完全に凌駕しました。
多くの国で、この時期に断種法や優生法が強化・実行されたのも、国家が「国民の生死を司る絶対的な王」として振る舞った結果と言えるでしょう。
けれど冥王星獅子座時代の優生思想は、恐怖だけで人を動かしたわけではありません。むしろ、誇りや希望を与えました。
私たちは選ばれた存在だ
より高い理想に近づいている
この国は特別だ
獅子座的なエネルギーは、人々の自己肯定感を刺激します。
だからこそ、多くの人がこの物語に魅了されたのです。
まとめ
獅子座は、「私」と「象徴」が重なるサインです。
この時代、国家はひとつの人格のように語られ、個人はその一部として位置づけられました。
国家の誇りは、個人の誇り
国家の理想は、個人の理想
ここで優生思想は、個人の価値と国家の価値を強く結びつける役割を果たします。国家の理想に適合することが、そのまま「生きる意味」につながっていきました。
そして獅子座の火が燃え尽きたあと、人類は「命の選別」がもたらす究極の結末を目撃することになりました。
あまりにもドラマチックで、あまりにも残酷な惨劇。
1950年代半ば、冥王星が乙女座へと移動する頃、世界は「現実にどう後始末をつけるか」という、緻密で倫理的な再構築の時代へと向かうことになります。
次回、「第4回:冥王星乙女座時代 —— 悲劇への反省と、公衆衛生・管理社会による『調整』」へと続きます。
