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血に染まったダイヤモンド。シエラレオネでの資源の呪い

「ブラッド・ダイヤモンド(紛争ダイヤモンド)」とは、内戦や武力衝突の地域で採掘・取引され、それを売って得たお金が武器購入や軍事行動などの戦闘資金に利用されるダイヤモンドのことを言う。

1991年から2002年まで続いたシエラレオネ内戦では、反政府勢力RUF(革命統一戦線)が国の東部・南部にあるダイヤの主要産地を支配した。

この内戦で、5万人以上(*1)が命を落としたとされている。

歴史的背景

1991年 – 内戦の勃発

隣国リベリアの支援を受けた反政府勢力RUF(革命統一戦線)がシエラレオネ政府への反乱を開始し、ここから約11年間にわたる内戦が始まった。

RUFがダイヤの鉱山を占拠し、政府軍はその鉱山を奪い返そうとして戦争が激化し、周りの地域は大きく治安が悪化した。

RUFはダイヤモンドの原石を採掘、輸出して莫大な資金を得て、武器を買い、政府軍との戦闘を続けた。

国連の報告によれば、RUFによるダイヤ取引は年間およそ2,500万ドルから1億2,500万ドルの規模だったと推定されている(*2)。

1999年 – ロメ和平協定(失敗)

1999年のロメ和平協定では、和平の条件としてRUF指導者フォデイ・サンコーに副大統領の地位とダイヤ鉱山の管理権を与える条項が盛り込まれた。しかし、この譲歩にもかかわらず反乱は収まらず、戦闘は続いた。

国連PKO(UNAMSIL)や西アフリカ諸国(ECOWAS)の介入によって一時的に情勢は落ち着いたものの、2000年になるとRUFが再び攻勢を強め、状況は再び悪化した。

2000年 – 国連制裁

2000年7月5日、国連安全保障理事会は以下の内容の「決議1306号」を採択。

  • シエラレオネ政府が管理しない原石ダイヤの輸入禁止(=紛争ダイヤ禁輸)

  • 武器禁輸

  • 反政府勢力幹部の渡航禁止

この決議の採択は、国際社会がシエラレオネ内戦とダイヤの関係に強く介入する契機となった。

また、米国も2003年に「クリーン・ダイヤモンド取引法」(CDTA)を成立させ、ダイヤ取引の監視を強化した。

2001〜2002年 – 戦争終結

国連PKOの努力にもかかわらず情勢が悪化すると、2001年に英国軍が「パリサー作戦」で介入し反政府勢力を制圧、シエラレオネの首都フリータウン奪還に成功。英国軍の介入によってRUFは大きく弱体化し、和平に向けた動きが急速に進む。

その後、当時のシエラレオネ大統領 アフマド・テジャン・カッバ率いる政府は、治安の回復と武装解除の進展を受けて、2002年1月18日に内戦終結を正式に宣言。

2003年 – キンバリー・プロセスの発足

2003年1月1日、国連総会でキンバリー・プロセス認証制度(KPCS)が正式運用を開始した。内容は以下。

  • 加盟国は粗ダイヤの輸出入には政府発行の証明書が必須

  • 加盟国は認証のないダイヤは一切輸出入不可

粗ダイヤ:採掘されたままの加工されていない天然のダイヤモンド原石のこと。研磨・カットされた宝飾用ダイヤは「カットダイヤ」という。

当初の成果として、キンバリー・プロセス導入後は紛争ダイヤの国際市場流通量が大幅に減少し、加盟国経済の安定化にも寄与したと評価されている。

2003年以降

シエラレオネは現在、キンバリー・プロセスに加盟して合法ダイヤ産業の立て直しを進めている。しかし、キンバリー・プロセスでは、採掘時の強制労働の禁止や環境破壊を防ぐ内容を含んでいないので、その点への批判もある。

また、キンバリー・プロセスがあっても、ダイヤモンドの原石は持ち運びが容易なため、簡単にシエラレオネから密輸出できてしまう問題もある。(*3)

被害

子ども兵士の動員

内戦期にはRUFも政府軍も子ども兵士(主に7〜14歳)を大量に徴用し、内戦全体で推定1万〜1万4000人の子ども兵が戦闘に駆り出されたとされる。RUF兵の40〜50%が子どもで構成され、「Small Boys Unit(少年部隊)」では最大80%が7〜14歳であったと報告されている(*4)。

これらの少年・少女兵は、マリファナやコカイン(「brown-brown」と呼ばれるコカイン混合火薬を含む)などの薬物を強制的に摂取させられ、恐怖心を麻痺させた状態で戦闘や略奪に動員された。Human Rights Watchは、RUFに徴用された子どもたちが「薬物投与や死の脅迫により残虐行為への加担を強いられた」事例を記録している(*5)。

特に少女兵への性的暴行は深刻であり、元子ども兵士の少女の44%がレイプ被害を報告している。多くの少女が「bush wife(ブッシュ・ワイフ)」として指揮官に性奴隷化された。Physicians for Human Rightsの2003年調査によれば、内戦中に推定25万人の女性・少女(女性人口の約33%)が性的暴力の被害を受けたとされる(*6)。

RUFの凄惨な戦法

RUFは、住民の支持を得る気がほぼなく、「恐怖によって支配する」ことを戦略として採用していた。RUFは"Operation No Living Thing"(生きているものは何も残すな)や"Operation Pay Yourself"(略奪作戦)といった恐怖作戦を組織的に展開し、多数の村人が家財を奪われた。紛争中に約250万人が避難を余儀なくされている(*7)。

RUFの残虐行為には以下のようなものがあった:

  • 民間人を捕らえ、自分たちへの支持者かどうかに関係なく無差別に殺害した

  • 手足の切断を組織的に実行し、被害者には切断された手足を持って政府に「メッセージ」を届けるよう命じた。切断の理由として「投票させないため」「ダイヤモンドを採掘できなくするため」「命令に従わなかった罰」などが報告されている

  • 見せしめとして、被害者に自分の切断方法(銃殺か、ナタか、焼殺か)を「選ばせる」など、恐怖を最大化する手法を用いた

ダイヤモンド鉱山地域では特に暴力が集中し、鉱夫がダイヤモンドの隠し場所を明かすよう拷問された事例も報告されている(*8)。

また、RUFは兵士や民間人の身体に「RUF」の文字を刻む行為を行った。これは熱した銃剣、カミソリ、割れたガラスなどで胸や背中に刻まれ、逃亡を防ぐ目的があったとされる。この傷跡を持つ者は、逃亡しても政府軍や民間人に敵と見なされ殺される危険があった(*9)。

映画化

2006年公開の映画『ブラッド・ダイヤモンド』は、1999年のシエラレオネ内戦終盤を舞台にしたレオナルド・ディカプリオ主演の映画。

映画の発表前後から世界的に注目が集まり、「ダイヤ購入が殺人への資金援助になる」といった論調でメディアが連日取り上げた。

監督エドワード・ズウィックは「観客の心に意識を生み出したかった」と語り、映画を通じて紛争ダイヤモンドの問題を広く一般に伝えることを目指した。主演のレオナルド・ディカプリオもGlobal WitnessやAmnesty Internationalと連携し、消費者に紛争ダイヤでないことの認証を求めるよう呼びかけた(*10)。

一方で、映画はダイヤモンド産業から強い反発も招いた。業界団体のWorld Diamond Council(世界ダイヤモンド評議会)は、映画公開前から1500万ドルを投じてPR・教育キャンペーンを展開。WDCの弁護士は「映画を観る人々には、これが過去のことだと理解してほしい」と述べた(*11)。

また業界側は、ズウィック監督に対し、映画の冒頭に「キンバリー・プロセス」について言及し、シエラレオネ内戦はすでに終結していることを示す断り書きを入れるよう求めた。しかし制作側はこれを拒否。ズウィック監督は「業界ロビーから指示を受けるのが適切だとは思わなかった」と述べた(*11)。

資源の呪い

シエラレオネは豊富なダイヤや鉄鉱石など資源に恵まれる一方で、その富が経済発展に結びつかない「資源の呪い」状態に陥っている。

シエラレオネでは、ダイヤモンドは年間約1億2500万ドル規模(2006年時点)の重要な輸出品だが、その収益は政府や国際商人に集中し、鉱山地域の住民にはほとんど還元されていない(*12)。

例えばコノ地区では70年以上にわたる採掘歴にも関わらず、電力や舗装道路などの基礎インフラ整備が進まず、住民の生活は貧困から抜け出せていないと報告されている(*12)。

ダイヤモンドと石油の違い

「資源の呪い(Resource Curse)」とは、豊富な資源が逆に汚職や紛争・経済停滞を招き、国の発展を妨げてしまう現象である。

ダイヤモンドは資源の呪いの典型例とされるが、同じような資源に石油がある。

実際、石油をめぐって以下のような紛争が起きている:

  • スーダン(ダルフール):石油利権が武器調達と民族弾圧に利用

  • ナイジェリア(ニジェール・デルタ):石油企業と政府に反発する武装勢力の暴力化

  • イラク:石油資源をめぐる政治不安・武装勢力の台頭

  • リビア:油田の支配権をめぐる内戦

では、石油とダイヤモンドの違いは何だろうか。

最大の違いは、「持ち運びのしやすさ」である。石油は液体で重く、リッター単位で大量に扱う必要がある。採掘・輸出には国家レベルのインフラが必要で、流通はほぼすべて国際管理下に置かれている。

一方、ダイヤモンドは小型で高価なため、1つからでもポケットに入れて持ち運べる。人さえいれば単独で採掘・取引でき、闇市場が発達しているため追跡が難しい。

ダイヤモンドは紛争資金へと「すぐに変換できる」点が、石油とは異なる。


参考資料

(*1) Sierra Leone Measures Terror In Severed Limbs - The New York Times

(*2) War and Peace in Sierra Leone: Diamonds, Corruption and the Lebanese Connection - ReliefWeb

(*3) The Fight Against Blood Diamonds Continues - TIME

(*4) Revolutionary United Front - Wikipedia

(*5) Coercion and Intimidation of Child Soldiers to Participate in Violence - Human Rights Watch

(*6) Sexual Violence - Physicians for Human Rights

(*7) Sierra Leone Country Report on Human Rights Practices 1997 - U.S. Department of State

(*8) Mutilations of Civilians in Sierra Leone - Médecins Sans Frontières

(*9) Seven Questions: A Chat with Blood Diamond Director Ed Zwick - Foreign Policy

(*10) Industry Braces for Blowback from Blood Diamond - NPR

(*11) Human Rights Watch World Report 2001: Sierra Leone

Sierra Leone Civil War - Wikipedia

Blood diamond - Wikipedia

Los Angeles Times

Sierra Leone Diamonds - University of Bath

International Peace Institute

The Kimberley Process - Global Witness

Guinea Human Rights Practices 1999 - Human Rights Watch

Child soldiers in Sierra Leone - Wikipedia

Sierra Leone 1998 Report - Human Rights Watch

Crystallizing opinion


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