【不幸な推し活Vol.1】愛じゃなくて「痛み止め」だった。私が1年で200万円溶かした地獄の記録
「えっ……
だれ!?」
画面に映っているのは、私にとって
配信アプリの中での1番最後の推し、ともくん。
だけど……
8ヶ月ぶりに見た彼は、私の知っている顔じゃない。
整形しすぎて、全然違う顔になっていた。
しかも、不自然な顔になっていた。
私は、ともくんの顔と声が好きだったのに。
ううん。
ともくんの顔と声は「どちらかと言えばタイプな方だった」だけだから、
驚きはしたものの、実は言うとそれほど大きなダメージはないのかもしれない。
正直に言うと、
もともと「ストレートど真ん中」と言えるほどタイプだったわけじゃない。
普通、推し活でも恋でも
「気がつけば夢中になっていた」
というイメージが一般的にはあるのかな、と思う。(たぶん)
自分でも気がつかないうちに好きになって
「ダメだ」
とわかった頃には、もう後戻りができなくなっていた……
みたいな感じ?
でも、私にとって過去最高に不幸な推し活はそうじゃなかった。
これは、ホス狂いでも不倫でも、不幸な推し活でも……
身を滅ぼすほどの沼の入り口は
意外と自分でわかっているものなんじゃないかな、と思う。

何度も
「これ以上、足を踏み込んではいけない」
「今ならまだ引き返せる」
その自覚がありつつも
「今夜で最後」
「このイベントだけ応援したら、辞めよう」と
結局は目先の誘惑に負けて
その積み重ねで、
やがて本当に取り返しがつかなくなる。
実際はこのパターンが多い気がするし、かく言う私もその1人です。
きっと、彼のことは長くは推せないし、彼を推しても幸せにはなれない。
だけど、今この瞬間だけでも私に優しくしてくれるなら、もう彼を推してしまえばいいや。
そんな気持ちからのスタートだったことを覚えています。
配信アプリの中での推しは3人いるけれど、
この3人の中で、
ともくんだけは本当は別にそこまで好きではなかった。
だけど、短期間で1番お金を注ぎ込んだのはともくんだった。
1年とちょっとくらいの期間で200万円くらい貢いだと思う。
ともくんと出会ったとき、私にはすでに借金があった。
それまでの推し活で作った借金や
ビジネスの高額コンサルに申し込んだものの、回収できずに毎月の支払いだけが残っていた。

だけど、正直
ともくんを推さずに
この時点で、配信アプリをやめて
慎ましく生活することができたら、任意整理はせずに済んでいたと思う。
まだ、取り返せるところにいたのに……
取り返そうとして、やっぱりうまくできなかったら……
それがこわかった。
だって、私はこれまでの人生ずっと
こうやって逃げてきたから。
誰か助けて……
1人じゃ無理だよ……
でも、助けてくれる人なんていなかった。
信じられなかった。
高額セミナーをやっているインフルエンサーの言葉も
会社の人たちも
たまに彼氏っぽいフリをしてくるセフレも
数少ない友達のことも
家族でさえも
どうせ、私のことをわかってくれる人なんて誰もいない。
だけど、
本当に世界で1番信用できないのは、誰よりも自分自身。
私なんかに、なにもできるはずがない。
こんなはずじゃなかったのに…
ともくんを配信アプリで見つけた頃の私には
本当はそらくんという別の推しがいた。
過去3人の中でも、私はそらくんが1番大好きだったと思う。
でも、そらくんは
真剣に将来を見据えてそろそろ真面目に就職するということになり、
急に配信アプリを卒業してしまった。
これは私にとっても配信アプリを辞める絶好の機会だったけれど
やめられなかった。
だって、
私の居場所は配信アプリ以外、どこにもなかったから。

会社の人間関係は最悪すぎて、毎日行くのが苦痛。
9年続けている仕事だけれど、
本当はもう入社して2〜3年くらいで、辞めたくて仕方なかった。
辞められなかった。
だって
私が今の会社を続けることをママが望んでいるから。
私は30歳くらいまで、正社員になったことがなかったんです。
ずっと、アルバイトだったり、契約社員だったり、派遣社員だったりして……
安月給なうえに安定していない働き方をしていました。
30歳でようやく
「私はたぶん結婚できないだろうな。そろそろ真面目に就職しよう」
と、今の会社に入社したんです。
今の会社は一部上場企業の化粧品会社。
勤務先は百貨店のコスメカウンター。
内定が決まったとき
ママは泣いて喜んでくれた。
入社時研修に行く日、駅まで送ってくれたときも
研修から帰ってきた私を迎えにきてくれたときも
お仕事用の黒いパンプスを一緒に買いに行ったあの日も
初めて、会社の制服を着ている私を見た瞬間も
ママは嬉し泣きをしていた。
「何回、泣くねん」
と、思っていたけれど……
それだけ、私がママに心配をかけさせてしまっていたんだ。
いい歳して、ずっと実家にいて結婚しそうにない。
就職もしていない。
そんなどうしようもない私を、ママはずっと心配してくれていたんです。
だから、私が今の会社で正社員として働けるようになったとき
少しはママを安心させることができたんだと思います。
だからこそ
「会社、辞めたい」
が、ママに言えなかった……。

このまま今の会社で毎日嫌な思いしながら、
クソつまらない人生で一生を終えるんだろうな。
本気でそう思っていました。
そんな生活をダラダラと7年も続けていたある日、
そのクソつまらない毎日よりも、
もっと辛いことは突然、起こりました。
ママの余命宣告。
「腰が痛い」と言って病院に行ったママ。
「もう歳だもんなぁ」
家族全員が、ママ本人さえもそんな風に軽く思っていたんです。
だけど、病院の先生から
「今すぐ大きな病院でちゃんと検査してもらった方がいい」
と紹介状を書いてもらうことになりました。
【診断結果】
膵臓癌のステージ4。
すでに肝臓、胃腸、背中にも転移していて手術は不可能。
余命半年。
できる治療は、抗がん剤で少しでも癌の進行を遅らせるか、緩和ケアか。
目の前が真っ暗になりました。

治療方針や今後の生活のことをめぐって家族の意見は割れ、
毎日が苦しくて、悲しくて、現実を受け入れられませんでした。
そして何より、私を精神的に追い詰めたのは、
「これで本当に、今の会社を絶対に辞められなくなった」
という事実でした。
毎日行くのが苦痛で、人間関係も最悪な会社。
でも、私が正社員になったことをあんなに泣いて喜んでくれたママが、余命わずかなのに、「会社を辞める」なんて絶対に言えない。
安心して天国に行ってほしいから、
私は毎日、吐き気を堪えながら会社に行くしかなかった。
逃げ場が、完全に塞がれました。
息ができないほど苦しい毎日。
どうしようもない現実の重圧。
そんな、心が完全に壊れる寸前の限界状態だった私が、
唯一息継ぎをできた場所。
それが、「配信アプリ」であり、「ともくんへの課金」だったのです。
私が1年ちょっとでともくんに貢いだ200万円。
それは、彼への「愛」ではありません。
ママの病気も、地獄のような会社も、自分の惨めさも。
すべてを忘れさせてくれる「痛み止め(麻薬)」の代金でした。
なぜ、「好きでもないとも君への課金」が痛み止めになるのか。
配信アプリは、
現実でボロボロになった人間を、いとも簡単に「特別扱い」してくれます。
ここから先は、私が200万円を溶かすまでに陥った「脳内のバグ」と、運営や配信者が仕掛ける「沼らせる仕組み」について、当時のリアルな心理状態とともに解剖していきます。
同じように「苦しい現実」から逃げるために推し活をしている方に、どうか届きますように。
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