【映画レビュー】ローライフ
アメリカで制作された作品だけど、メキシコの荒削りな映画って雰囲気で、素人臭さもあるし技巧的なところもある面白い作品。
メキシコに隣接する治安の悪そうなアメリカの街。引退した覆面レスラーは、その街で恐れられるヤバいマフィアのボスに使われている。しかし覆面レスラーはキレると手がつけられなくなるタイプで、仕事に失敗してボスに見捨てられ、妊娠中の妻ともケンカをしてしまう。そんなどん詰まりの状況で、とある事件が起こる話。
まず、びっくりするほどグロい。少なくとも私がここ数年で見た映画の中で、一番グロいと思った。かなりグロ耐性がないとキツいと思う。
ストーリーもわりとグロいと言うか、コメディ要素少なめでマフィアの揉め事を描いている感じなのでエグみがある。覆面レスラーのセカンドキャリアを楽しく眺める映画ではなく、リアルな社会の辛さが描かれている。だからちょっと社会派な作品なのかもしれない。
色んな視点からひとつの事件へと繋がっていく描き方が上手い。個人的には複数視点で同じ時間軸を描くような映画はあまり好きじゃないのだけど、この映画に関しては良いなと思った。ぜんぜん違う話をしていると思っていたら上手く全部が繋がっていって、新しい情報が付加されていくのが良かった。
主人公の覆面レスラーは、感情移入できるようなタイプではない。悪い人間ではないのだろうが、とんでもない奴ではある。彼を中心として色んな事が起こるというよりは、色んな事が起こる場にたまたま彼がいて巻き込まれる感じで、あまり主人公感がない。ルチャリブレ(プロレス)の盛んなメキシコでは覆面レスラーはヒーローみたいな扱いで、彼も人気者だったのだろうという事情を知らない日本人にとっては、難解に感じる部分もあるだろう。
そんな彼の恩人らしい(どんな経緯で恩人となったかは描かれない)マフィアのボスは血も涙もないめちゃくちゃヤバい奴で、サイコパスのように行動原理を理解できないのも意味がわからなく感じてしまう部分かもしれない。
全体的に完璧な善人みたいな人がおらず感情移入しにくいけど、まさかオマエの事を一番良い奴だと思う事になるとは……みたいな奴を最後には応援してしまうのがちょっと面白い。
ちなみに、この映画は『パルプ・フィクション』的だと評されているらしい。さすがに『パルプ・フィクション』は良い映画すぎて比べるレベルにないと思うのだけど、似ている部分はある。特に別視点の関係なさそうな出来事が繋がっていく感じとかは、わりと共通している。ただまあ映像のオシャレさとか会話の面白さとか登場人物の魅力とか、そういうものは無いのでかなり雰囲気の違いを感じてしまう。グロ表現とかも、タランティーノ作品はやりすぎて笑ってしまうような感じだけど、本作はマジでただグロいって感じだし。
あまりエンタメ化されていないリアルなグロさと、映画らしいテクニカルな部分が混ざり合っている感じが荒削りと表現したくなるような、ちょっと変わった匂いの作品で面白かった。
『ローライフ』 2.5
