「子どもの貧困率11.0%」の陰で、母子世帯の82.1%が生活苦 数字の改善だけでは見えない子育て家庭の実態
厚生労働省が公表した2025年国民生活基礎調査によると、前回公表値と比べると、子どもの相対的貧困率は11.5%から11.0%へ0.5ポイント低下しました。また、相対的貧困率全体も15.0%となり、前回の15.4%から低下しています。
一見すると改善しているように見えますが、同調査では「生活が苦しい」と回答した世帯の割合が51.3%から55.4%へ上昇しており、実際の生活実感とは大きな乖離が見られます。
さらに、ひとり親世帯の貧困率は44.7%と、前回の44.5%から微増しています。約2世帯に1世帯が貧困状態にあり、状況は改善していません。
キッズドアは、今回の結果について「子どもの貧困率の低下=子どもの生活の改善」と受け止めるべきではないと考えます。
1.子どもの貧困率は下がった。しかし生活は苦しくなっています

今回の調査では、
相対的貧困率 15.4% → 15.0%
子どもの貧困率 11.5% → 11.0%
となりました。
しかしその一方で、「生活が苦しい」と回答した世帯51.3% → 55.4%と増加しています。
また、子どもがいる世帯で「苦しい」と回答したのは61.5%。母子世帯では82.1%の人が「苦しい」と回答しています

つまり、統計上の貧困率は低下しているにもかかわらず、多くの家庭の生活実感はむしろ悪化しているのです。近年の急激な食料品価格の上昇、光熱費の高騰、住宅費や教育費の増加を考えると、生活実態は決して「改善」とは言えません。
キッズドアが日常的に接している子育て家庭からも、
「食費も光熱費も上がったが、収入は増えない」
「子どもの学用品や部活動の費用が払えない」
「物価高騰で生活費が足りず、食事を減らしている」
といった声が継続的に寄せられています。
2.なぜ実態と数字は食い違うのか
相対的貧困率は、社会全体の等価可処分所得の中央値の半分を貧困線として算出される指標です。そのため、社会全体の所得分布の変化には敏感ですが、食費、光熱費、家賃、教育費など、子育て家庭が実際に負担している生活コストの増加を直接反映するものではありません。
今回、貧困率がわずかに低下した一方で、「生活が苦しい」と回答した世帯は増えており、相対的貧困率だけでは子育て家庭の生活実態を十分に捉えきれないことが示されています。

2025年調査では、
単独世帯 35.4%(過去最高)
高齢者世帯 31.9%(過去最高)
児童のいる世帯 16.7%(減少)
となりました。
子どものいる世帯は全世帯の2割を下回り、高齢単身世帯が急増しています。
その結果、社会全体の中央値を基準とした相対的貧困率は、子育て家庭の生活実態を反映しにくくなっている可能性があります。
実際には、学校生活に欠かせない制服や体操服、学用品、部活動の費用、物価高騰による食費の増加や、家賃等の値上がりなどもあり、子育て家庭の負担は大きくなっています。
これだけ子どものいる世帯が減少し、単身世帯、高齢者世帯の比重が増える中で、従来の相対的子どもの貧困率では、経済的に苦しい子どもの実態を見誤って、その対策が後手になってしまうことを危惧します。
3.改善していないどころか、より深刻な「母子世帯」
今回の調査で最も深刻な結果の一つは、ひとり親世帯の状況です。
ひとり親世帯の貧困率は、44.5%(2021年)→44.7%(2025年)となり、わずかではありますが上昇しました。
これは、大人が2人以上いる世帯の貧困率6.7%と比較すると約7倍の水準です。

さらに生活意識調査では、
「生活が苦しい」と回答した割合が
全世帯 51.3% → 55.4%
母子世帯 75.2% → 82.1%
へ増加しています。
つまり、日本社会全体が苦しくなるなかで、母子世帯はさらに厳しい状況に追い込まれていることがわかります。
4. 母子世帯は、所得が伸びても生活改善につながっていません
今回の調査では、2024年の1世帯当たり平均所得金額は、全世帯で575.2万円、児童のいる世帯で857.3万円、母子世帯で345.3万円となっています。
前回と比較すると、母子世帯の平均所得も328.2万円から345.3万円へと増加していますが、その増加額は約17万円にとどまります。一方、児童のいる世帯全体では785.0万円から857.3万円へ、約72万円増加しています。 [mhlw.go.jp]
つまり、母子世帯の所得は名目上増えているものの、もともとの所得水準が低く、児童のいる世帯全体との格差は依然として大きいままです。母子世帯の平均所得345.3万円は、児童のいる世帯全体857.3万円の約4割にすぎません。 [mhlw.go.jp]
さらに、物価高騰により、食費、光熱費、家賃、学用品費、部活動費など、子どもを育てるために必要な支出は増え続けています。所得がわずかに増えても、それ以上に生活費が上がれば、生活実感としては「改善」ではなく「悪化」になります。
実際に、生活意識調査では、母子世帯で「生活が苦しい」と回答した割合は75.2%から82.1%へ上昇しています。所得が少し増えても、生活の苦しさはむしろ強まっているのです。


5. おわりに
子どもの貧困率11.0%という数字は、なお約9人に1人の子どもが貧困状態にあることを示しています。しかも、今回の調査から見えてくるのは、貧困率のわずかな低下とは反対に、子育て家庭、とりわけ母子世帯の生活実感が悪化しているという現実です。
必要なのは、相対的貧困率の変化だけで「改善」と判断することではありません。食費、光熱費、住居費、教育費など、子どもを育てるために必要な支出を踏まえ、子育て家庭の実質的な生活水準を把握することです。
キッズドアは、子どもの貧困対策を一時的な給付や福祉の問題にとどめるのではなく、すべての子どもが学び、進学し、将来を切り開くための社会的投資として位置づけるべきだと考えます。子どもたちの未来を守るために、母子世帯をはじめとする困窮子育て家庭への継続的な所得支援、教育費負担の軽減、食料・物資支援、学習・体験機会の保障を早急に強化する必要があります。
※本稿は厚生労働省「2025(令和7)年 国民生活基礎調査」の公表データおよびキッズドアが実施した困窮子育て家庭アンケート調査をもとに作成しています。記事中の見解は認定NPO法人キッズドアの分析・提言です。
