今日という日
「何でこんな日に生まれたかなあ」
大学の先輩はいつもそうぼやいていた。
「夏休みで友達にも祝ってもらえないし、貰えたとしても終戦記念日じゃな」
クリスマスが誕生日の甥っ子は、クリスマスに負けた気分だと言っている。
元旦に生まれた友達も、お年玉と誕生日のお祝いを一緒にされるから損した気分だといつも言う。
私の誕生日はごくごく平凡で普通の日だ。
取り立ててめでたい日でもなく、悲しい日でもない。
小学校に上がったころから8月の6日と9日はテレビの前に座らされて、鐘の音と共に黙祷するよう母に言われていた。
8月15日はお昼から1分間の黙祷をさせられた。
「今日はなんで?」
そう聞いた私に
「日本が戦争に負けた日だからよ。たくさんの人が亡くなったの。ゆみちゃんの叔父ちゃんもビルマで死んだんだよ」
そう伯母ちゃんが教えてくれた。
その時はビルマがどこにあるか知らなかった。
伯母ちゃんより歳が一回り下だったという、叔父さんの写真は見たことがある。
白い馬に乗った軍人さんだった。
伯母ちゃんは戦死した弟の話になるといつも泣いた。
今年の8月15日は義母の新盆と、娘と義弟の誕生日祝いを一緒にした。
夫の親族は誕生日はいつも、義母の家に集まってお祝いをしていた。
せっかく新盆で親戚が集まるなら、延期していた娘と義弟の誕生日の祝いを一緒にしようということになった。
義母は、孫や息子たちの誕生日を毎年祝うのを何よりも楽しみにしていたから。
今、集まった親族をそれぞれ送り出し、このnoteを書いている。
朝から支度で忙しくて、心の中で黙祷した時には
正午を過ぎていた。
伯母ちゃんは怒っているだろうか。
今日という日は我が家にとって、義母の新盆で、家族の誕生日を祝った日だった。
そして終戦の日だ。
嬉しいことも楽しいことも、悲しいことも辛いことも、みんな忘れずに覚えていたい。
