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熊本地震のさなかに気づいた、「防災情報」に足りていないもの

まず、熊本にいらっしゃる方、ご家族やご友人が熊本にいらっしゃる方へ。
この記事を書いている今も、余震が続いていると聞いています。
不安な夜を過ごされている方、揺れの中で怖い思いをされた方、ライフラインや交通機関の状況が分からず落ち着かない方も多いと思います。
心からお見舞い申し上げます。
どうか、ご自身とご家族の安全を最優先にしてください。

この記事は、その渦中で私が実際にAIと一緒に手を動かした記録です。

結論から言うと、今回の地震には間に合いませんでした。
それでも筆を取ったのは、実際に動いたからこそ見えた
「多言語対応からこぼれ落ちる人たち」と
「情報を探す行為自体がバッテリーを削る」という2つの大きな課題を、失敗ごと記録して残す意味があると思ったからです。


第1章 「何かできないか」と思った、その日のうちに


地震発生から1時間くらいの間、私は
「公的機関や会社は決裁に時間がかかる。でも個人なら、個人の責任の範囲でもっと速く動けるのではないか」と考えました。

東日本大震災以降、さまざまな防災対策が進んできましたが、一個人として困ったこと、こうだったらいいと思った経験から、何かできることはないだろうか?と。

具体的に浮かんだアイデアは2つです。

  • デマ・誤情報の即時ファクトチェック

  • 外国人住民・観光客向けの多言語情報変換

AIと相談を進める中で、
①の「AIが真偽を判定する」仕組みは、命に関わる場面での誤判定リスクがあまりに大きすぎると気づき、方針転換しました。
「判定する」のではなく、「一次情報(気象庁・自治体・NHKなど)へのリンクを、迷わず・速く見つけられる形で並べる」
—これなら個人の責任でも今すぐ形にできる、と判断しました。

第2章 「15言語」という公的機関の壁


気象庁や観光庁監修の防災アプリ「Safety tips」は、すでに15言語に対応しています。
日本語、英語、中国語(簡体字/繁体字)、韓国語、スペイン語、ポルトガル語、ベトナム語、タイ語、インドネシア語、タガログ語、ネパール語、クメール語、ビルマ語、モンゴル語。
技能実習生の多い国々は、実はこの枠にしっかり入っています。
行政の多言語対応は、決して怠慢ではありません。

けれど作業を進めるうちに、この枠から静かにこぼれ落ちている人たちの存在に気づきました。
カレー店を営むインドの方々。
日本に避難してきたウクライナの方々とロシア語話者。
そして・・・観光で日本に来ていて、たまたま被災するドイツ人観光客のような人たちです。

かつて東日本大震災のとき、観光で訪れていたドイツ人の親子が、地震直後に仙台へ向かおうと乗り込んだタクシーで津波に巻き込まれ、命からがら避難所にたどり着いたものの、遠い異国の地で頼る人もなく途方に暮れていたという話がありました。
(その後、善意の人々のバトンリレーによって無事に帰国できたそうです。※東北学院大学「東日本大震災 東北学院1年の記録『ヨハンナ・シュピールベルクさん一家』」より。
東北学院大学「東日本大震災 東北学院1年の記録」)。
あの親子のような人が今の熊本にいたら、どこを見れば正しい情報にたどり着けるでしょうか。
そして、もし、自分が海外にいて、このような災害に合った時にスマホを手にして、翻訳機能も探して・・・格安SIMだったり、通信が安定しない中、どうする?と考えました。

行政が15言語という「決められた枠」で動くのは仕組み上当然のことです。だからこそ個人なら、「今回はこの国の人が多い」という現場のニーズに応じて、ヒンディー語、ロシア語、ウクライナ語、ドイツ語を機動的に追加できる。
これは決裁スピードの差というより、そもそも担える役割が違うのだと思います。

第3章 バッテリーと通信という、見落とされがちな制約


もう一つ、作業しながら痛感したことがあります。
既存の防災サイトの多くは「今の状況表示」に特化しており、それ自体は正しい設計です。
けれど被災した本人からすると、状況を確認するためにあちこち検索している間に、バッテリーは減り、通信も不安定になっていきます。

東日本大震災のとき、「車でのスマホ充電がガソリン—つまり命綱—を削る行為だと後から気づいた」という経験があります。
情報を探す行為そのものが、限られた貴重な資源を消費してしまうのです。

だからこそ、
「ここさえ見れば、様々な公式情報に一発でたどり着ける」
という軽量で簡潔な入口が、各地に分散してあらかじめ用意されていたなら……。これが今回、手を動かしながら一番強く感じたことでした。

第4章 結局、間に合いませんでした


多言語リンク集自体は数時間で形になりました。
しかし、GitHub Pagesでの公開設定や有効化の待ち時間があり、今回の地震の初動には間に合いませんでした。

備えていたつもりでも、いざという時には間に合わない。
これは正直、とても悔しい体験です。

けれど、行動を起こさなければ「間に合わなかった」という悔しさすら生まれません。
構想を持ち、実際に動かしたからこそ、
「ホスティングの事前準備」
「コスト暴走の防止」
「判定はせず一次情報に絞るという設計思想」
といった、次に活かせる具体的な課題が見えました。

実際に公開したページはこちらです。

👉 [熊本地震 公式情報リンク集](※https://chikako921.github.io/Kumamoto_disaster_links/

日本は地震の多い国です。
今回の初動には間に合わなくても、この災害の今後の対応、そして次の災害にはきっと間に合わせたい。

できれば、今回の仕組みをベースとして、各地の有志がそれぞれの地域の「軽量で最新情報へすぐ繋がるリンク集」を作っていけるような流れができたら最高です。
情報がひとつの場所に集中するのではなく、各地のサーバーに分散して存在していれば、通信網が狭まったときでも閲覧しやすくなります。

一人でできることには限りがあります。
それでも、この仕組みを各地域で作る人が少しずつ増えれば、日本全体の防災情報はもっと強くなると私は思っています。

個人でもできることをやりたい—それが、3.11のときに受けた国内外からの支援への、私なりの恩返しになると信じているからです。

第5章 「操作は消える、判断は残る」


これは、私が今執筆しているKindle本のテーマそのものです。

AIというツールの「操作」は、時代とともにどんどん空気のように馴染んで消えていきます。
かつてソリティアでマウス操作を覚えたように、検索コマンドの打ち方も、今のプロンプトの書き方すらも、いずれ誰も意識しなくなるでしょう。

けれど、「何を優先し、何を捨て、どう動くか」という判断だけは、時代を超えて残り続けます。

3.11のとき、通信が絶たれた被災地で人々が迫られていたのは、まさにこの「判断」でした。

今回、AIという強力な「右腕」を得た私たちが、個人の責任で何を作り、何を公開し、何が間に合わなかったのか
—この失敗の記録もまた、次の誰かが動くときの「判断の材料」になればと願っています。

こうした「一次情報への案内板」が、各地方であらかじめ用意されて、皆が、あ、あそこにあったよね、まとめサイトと思い起こせる社会を目指して。
まずは自分の失敗も含めて公開しました。

みなさんの街には、こうした「一次情報への案内板」はありますか?
あるいは、今回のような場面で「これがあればよかった」と思ったものはありますか? ぜひコメントで教えてください。

👉 [熊本地震 公式情報リンク集]

(※https://chikako921.github.io/Kumamoto_disaster_links/
もし、よろしければ、熊本にいらっしゃる方、お知り合いがおられる方などにご紹介いただけたら嬉しいです。
日本語はもちろん、12言語に対応。
地震関係などの情報や、役所などの情報、JRや飛行機関係のページもリンクしました。
公的サイトが対応していない言語の方には、その最初のページに、その旨を書き、英語のサイトなどを利用してみることをお勧めしています。


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