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個人情報保護法が変わる。あなたの仕事、大丈夫ですか?─ 2026年改正「3つの変化」を、働き方別に読み解く

「個人情報保護法が改正された」と聞いて、どう思いましたか。

「大企業の話でしょ」「うちは関係ない」
─そう感じた方ほど、実は要注意かもしれません。

2026年5月26日、「個人情報の保護に関する法律等の一部を改正する法律案」が衆議院本会議を通過しました(個人情報保護委員会、2026年4月7日閣議決定)。
今後は参議院での審議・採決を経て、施行時期が正式に確定する見込みです。

今回の改正は、一言でいうと「AIに使えるデータを広げる代わりに、違反したときの罰を本気にする」法改正です。

では、あなたの仕事にはどんな影響があるのか。
まず「自分がどのタイプか」を確認するところから始めましょう。

あなたはどのタイプ? まず自分のケースを確認する

下の表を見て、自分に近い働き方を探してください。

自分のタイプが見つかりましたか? それでは、今回の改正の中身を読み解いていきましょう。

第1章 今回の改正、何が変わるのか


今回の法改正には、大きく3つの柱があります。

柱1:AI研究開発に使えるデータの範囲が見直される──「要配慮個人情報の同意不要化(一定条件)」

これが今回の改正で最も注目すべき変化です。

「要配慮個人情報」とは、病歴・犯罪歴・人種・思想信条・社会的差別につながる属性など、特にセンシティブな情報のことです。
これまでは、この種の情報を取得・利用するには原則として本人の同意が必要でした。

今回の改正で、「統計の作成」や「AI研究開発や統計利用」など、個人が特定されない利用目的に限り、本人同意なしで収集・第三者提供が可能になる仕組みが導入されます(個人情報保護委員会・改正案概要より)。

一言でいうと:「一定条件のもとで、個人が特定されない形に加工されたデータについては、AI研究開発や統計利用をしやすくする方向に制度が見直される」という話です。

ただし、ここに大きな注意点があります。
どの程度の加工が必要か
どこまでが許容されるか
の具体的な基準は、今後の省令・政令・ガイドラインで確定する予定です。つまり現時点では、判断の根拠がまだ存在しません。

「法律が変わった=匿名化すれば自由に使える」ではないのです。

柱2:生体情報への権利強化──「特定生体個人情報と利用停止請求」

顔の特徴データ、指紋、声紋など「身体の一部の特徴に係る情報」について、新たな権利が認められます。

改正案では、本人が
違法性がなくても利用停止を請求できる」
仕組みが導入されます(個人情報保護委員会・改正案概要より)。

一言でいうと:「法律違反じゃなくても、顔認証データの使用を『やめてください』と言える権利が生まれる」ということです。

顔認証入退室管理、
タイムカードの指紋認証、
来客者の顔認識システム
─これらを導入している事業者は、本人から請求を受けたときに「止められる体制」が必要になります。

柱3:罰則が本気になる──「課徴金制度の新設」

これまでは個人情報の違反があっても、対応は「注意・指導・勧告」が中心でした。
今回の改正で、違法な取扱いによって利益を得た事業者に課徴金の納付を命じる制度が新設されます(個人情報保護委員会・改正案概要より)。

一言でいうと:「悪いことをして儲けたなら、その利益を国に返しなさい」という制度です。

なお、課徴金制度は、単純なミスや軽微な違反すべてを直ちに対象とするものではなく、悪質性や不正な利益取得など、一定の要件を前提とした制度設計になる方向で検討されています。

ただし「知らなかった」では済まないのが法律の世界です。
備えは早いほど、対応コストが低くなります。

第2章 なぜ「諸刃の剣」なのか──チャンスとリスクの構造


この改正を、私は「諸刃の剣」と表現しています。なぜそう言えるのか、構造的に整理します。

チャンス側:日本のAI開発が動き出す

これまで日本企業は「個人情報が含まれているからデータを使えない」という壁に何度も当たってきました。
技術力はある。
でもデータが使えない。
だからAI開発で海外に差をつけられてきた、という面があります。

今回の特例によって、適切な管理下であれば要配慮情報を含むデータでも研究・開発に活用できる可能性が広がります。
中小企業でも、AIベンダーへの委託業務がやりやすくなる場面が出てくるでしょう。

リスク側:「知らずに踏む地雷」が増える

一方でリスクは3層あります。

リスク①:基準がまだない
特例の適用条件は省令・政令待ちです。今「どこまでが合法か」は、誰にも正確にはわかりません。

リスク②:委託先経由の巻き込まれリスク
自社が直接データを扱っていなくても、クラウドサービスやAIツールのベンダーが対象データを学習利用していた場合、委託元の企業にも責任が及ぶ可能性があります。
「ツールを使っているだけ」では済まない場面が出てきます。

リスク③:課徴金は中小企業こそ怖い
大企業には法務・コンプライアンス部門があります。
でも中小企業・個人事業主にはない。
違反リスクへの気づきが遅れる分、気がついたときのダメージが相対的に大きくなります。

第3章 タイプ別・今すぐできる準備


ここからは、第1章の表で確認した「自分のタイプ」別に、具体的な行動を整理します。

タイプA:個人事業主・フリーランスの方へ

いちばん最初に確認してほしいこと

使っているAIツール(ChatGPT、Claude、Gemini等)の利用規約を開いて、「学習利用への同意」に関する記述を探してください。
多くの方が、気づかないまま同意しています。

顧客の名前・メールアドレス・相談内容をAIに入力している場合、それはすでに個人情報の取り扱いです。
「どのツールに、何を入れているか」の一覧を作るだけでも大きな前進です。

タイプB:士業・専門職の方へ

要配慮個人情報の扱いを再点検する

税務情報、医療情報、家族構成、収入
─これらは今回の改正で最もセンシティブな扱いを受ける情報です。
クラウド会計ソフト・電子カルテ・顧客管理システムを使っている場合、そのベンダーの個人情報保護方針が改正後の基準に沿っているかを確認することをお勧めします。

また、課徴金制度の導入により、
「業務委託先が違反していた場合の委託元の責任」
についても、今後の省令で詳細が定まっていきます。
専門家団体の動向を定期的にチェックする仕組みを作っておきましょう。

タイプC:小規模事業者(EC・実店舗)の方へ

使っているサービスの「第三者提供」規定を確認する

ECカートシステム、顧客管理ツール、チャットbot──これらのサービスは、顧客データをどう扱っているでしょうか。
サービスの「プライバシーポリシー」「利用規約」の中に「第三者への提供」「AI学習への利用」という記述がないか、今一度確認してください。

利用規約の隅にある
「提供されたデータは統計的処理のうえ、サービス向上のため利用することがあります」
という一文、見覚えはありませんか? 

実はこの一文が、今回の改正でより重要な意味を持つようになります。

「プライバシーポリシーが改正に対応していない古いまま」という事業者も少なくありません。
自社サイトに掲載しているプライバシーポリシーの更新も必要になります。

タイプD:教育・保育・子ども関係の方へ

生体情報の利用は特に慎重に

顔認証での出欠管理、保護者確認のための顔認識システムを導入している、または検討している場合、今回の「本人による利用停止請求権」が直接関わります。
未成年の場合、保護者が代理で請求する形になりますが、
「止めてと言われたら止められる体制か」
を今のうちに確認しておきましょう。

タイプE:中小企業の経営者・総務担当の方へ

3点の社内棚卸しから始める

①どこに、どんな個人データがあるか(クラウド・紙・PCローカル)
②顔認証・指紋認証などの生体情報を使っているか
③委託しているクラウドサービス・AIツールの事業者名と、そのプライバシーポリシーの最終確認日

この3点を一覧化するだけで、自社のリスクの輪郭が見えてきます。

第4章 「まだ決まっていない」からこそ、今動く意味がある


施行時期や詳細ルールは、今後の政令・省令・ガイドラインで段階的に確定していく見込みです。
「まだ時間がある」と感じるかもしれません。

でも、30年間IT業界で見てきた経験から言うと、制度の詳細が固まってから動いても、間に合わないことが多いのです。
省令・政令・ガイドラインが出てから初めて
「うちはどうすればいいのか」
と動き始めると、対応コストが一気に高くなります。

今の段階でできることは「完璧な対応」ではありません。
「自社がどんな個人情報をどこに持っているか、把握しておくこと」
─これだけでいい。

それが、2年後に慌てないための最大の準備です。

技術の進歩と個人のプライバシー保護。
この2つのバランスを取り続けることは、これからも私たちの社会の大きなテーマであり続けます。

法律は変わっても、「人の情報を大切に扱う」という本質は変わりません。


▼ あわせて読みたい

・AIツールを安全に使うための基礎知識
・個人情報・セキュリティを体系的に学びたい方
→ AIガバナンス・ラボ 企業向け講座(https://yumemitai.jp)


▼ あなたの職場・現場では、どうですか? 「使っているAIツールの利用規約、実は読んでいなかった」「こんな点が気になった」──あなたの気づきや疑問を、ぜひコメント欄で教えてください。同じ悩みを持つ方の参考になります。

本記事は2026年5月時点の情報に基づいています。改正法案は参議院審議中であり、施行時期・省令・政令の詳細は今後確定する予定です。最新情報は個人情報保護委員会(ppc.go.jp)でご確認ください。

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