無言勢でも、ちゃんとつながれる。~無言勢3人をインタビュー"自分らしい世界との距離感"~
はじめに
このnoteは仮想空間でコミュニケーションを楽しむゲーム
"VRChat"を題材にした記事です。
その中でも、無言勢と呼ばれる、声を出さずにジェスチャーや文字で意思を伝えるプレイヤーがいます。
本記事では、無言勢として実際にVRChatをプレイしている3名にインタビューを行い、彼らが無言勢になったきっかけや、どういった点で無言勢をしているのか、という日常的な話を中心に聞いてみました。
無言勢の等身大の姿というのはアンケートなどの不特定多数の中にあっても直接声を上げていただける方は少ないため非常に貴重な内容になるかと思います。
このnoteでは、VRChatを楽しむ無言勢で日常を送ったことのある3名に、次のようなテーマでお話を伺いました。
無言勢になったきっかけや、当時の気持ち
無言で過ごす中で感じる戸惑いや不安
声あり・なしの切り替えについて
無言勢として得られたものや、今も感じている課題
これから無言勢を目指す人へのメッセージ
インタビューの内容を、それぞれの体験談としてまとめてご紹介します。
自分らしく自然体で楽しむ_なっとーさん

1.なぜ無言勢になったのか、きっかけや当時の気持ちを教えてください。
生まれつき耳が悪くて、VRChatでうまくコミュニケーションできるのかなって不安がありました。
でもワールド巡りしてたら、無言でペンやチャットだけでやりとりしてる人たちがいて、「あ、これなら自分にもできるかも」って思ったのが、無言勢を始めたきっかけです。
2.無言で過ごすなかで、戸惑いや不安に感じたことはありますか?
VCありのやりとりだと、つい首で返事しがちで、
「こういうのあった?」って聞かれて、首の動きで「あった」って勘違いされちゃうことがあるんですよね!
慌てて手を振って「違うよ〜!」ってアピールしてましたねw
3.声あり・なしをどう切り替えて使っていますか?
無言勢のフレンドさんが居るのでその方は無言でやりとりをしたり、自分の声聞いたことある人はVC有りで分けてやっています。
一度VC有りでやってみると、いくつかのワールドではペンが置いてないこともあって、写真を撮る時にはここで撮ろうって、呼びかけるだけですぐ撮れるのですごく楽だなと思いました。
難しく感じたことはないですね…( ˘•ω•˘ )
4.無言勢として得られたもの、そして今も課題と感じていることは?
無言勢として活動してみて感じた大きな収穫は、「声を出さなくても、視線やペンで書いた内容、チャットなどを通じてコミュニケーションができる」ことですね。
一方で、課題に感じているのは「感情をうまく伝えるのが難しい」所ですね。
特に声がない分、感情表現が限られるので、自分も無言でやるときは、表情を変えたりして「今はこういう気持ちだよ」と伝えるようにしていますねー!
5.同じように悩む人へのメッセージをお願いします。
好きなようにやるのが一番!
声出したいなーって思ったら声出す!
無言でやりたいなっておもったら無言でやる!
VRCは限られた時間中で思いっきり楽しむのが一番ですよ
もし声出したいならフレンドさんに声出しても大丈夫?って聞けばいいだけの話なので、自分の中だけで抱えこまずに、自分のスタイルで好きなようにやるのが一番だよー!
間を楽しむコミュニケーター_春霖さん

1.なぜ無言勢になったのか、きっかけや当時の気持ちを教えてください。
私はもともと、自分が声を出してコミュニケーションとる事にストレスを感じるタイプで、普段も無意識に言葉よりボディランゲージに頼ろうとする事が、ほかの方より多いようです。
今のスタイルになったきっかけは、ある交流ワールドでQvPenを使って筆談してる方を拝見した事でした。
当時はVRC始めたばかりでフレンドさんを増やすために無理して話してたのですが、その方を見て、「無言筆談勢」の在り方を知った時はかなり気が楽になったのを覚えています。
2.無言で過ごすなかで、戸惑いや不安に感じたことはありますか?
1番不安を感じるのはレスポンスの速さの違いですね。どうしても声での会話より遅くなるので話に入りそびれたり、会話のテンポを崩してしまったり。
それから、これは私の慣れの問題ですが書いてる文字が読みづらくて相手を困惑ることもしばしば。そういう時はどうしても不安や罪悪感を感じてしまいます。
大人数の時はそもそも書いてること気づかれないこともあるので、個人的な願望ですけど全QvPenにチャットみたいな書き終わったら小さな合図が鳴る機能とかあればいいのになぁって思ったりしてます。気づかれないのって少なからず寂しいので。
3.声あり・なしをどう切り替えて使っていますか?
私は「絶対に声を出さない」と決めているわけではなくて、その時の気分や精神的な疲れ具合に応じて判断しいます。
まあ、元気だからといって声を出すわけでもないんですけど。
音声のほうが対話はスムーズに進みますし、テンポの違いによる気まずさを感じることも減ります。そういうときには、声を出すほうが“やりやすい”と感じることも正直ありますね。
それでも、声を出すのは「最後の手段」に近い感覚です。声での会話はテンポが速くて頭がついて行かなかったりしますし……そういう事もあって無言勢として過ごさせてもらってます。
4.無言勢として得られたもの、そして今も課題と感じていることは?
筆談スタイルで体験できた「一拍置いたやり取り」は、私にとって大きな収穫です。自然に生まれる“間”が、気持ちを整理する余裕になり、人とのやりとりがぐっと楽になりました。
とはいえ、その“間”が今の悩みの種でもあります。
どうしても会話のテンポがゆっくりになるので、お話ししてくれる方が気まずくならないように、今はその部分をどう工夫していくかを考えているところです。
これが今の私にとっての、いちばんの課題かもしれません。
5.同じように悩む人へのメッセージをお願いします。
声を出すか出さないかは、「自分が安心できる距離感」で決めていいんです。
無理してどちらかにこだわる必要はありません。途中で切り替えたっていいし、また戻しても大丈夫。私なんて話の途中で変えちゃいましたよ?それでもここは受け入れてくれました。
ここは、あなたが楽しむための場所。
だからこそ、肩の力を抜いて、自分にとって心地よい形を見つけていってほしいです。
ハクナマタタ、なんくるないさぁ。難しく考えなくても、できることをやってるのならきっとなんとかなりますよ。
自由な表現を探す無言勢_へるぷすとさん

1.なぜ無言勢になったのか、きっかけや当時の気持ちを教えてください。
私はもともとワールド制作がしたくて、VRChatを始めようとしていたのですが、ワールドを公開できるところまでユーザーランクを上げるためには、他のユーザーとの交流が必須になります。
ところが、私自身"会話"というものに苦手意識があり、ましてやボイスチャットで見ず知らずの人と会話をするというのは未知の世界でした。そういうわけで、自分には難しそうだなと二の足を踏んでいました。
そんな中、”無言勢”というプレイスタイルが一定の市民権を得ていることを知り、「これならいけそう!」となったわけです。
もう一つ、性別や年齢、声といった現実世界の要素を、メタバース側の世界に持ち込みたくないという気持ちもありました。声の問題については、ボイスチェンジャーを導入すればよいのですが、当時の自分にとってはそれもハードルが高かったのです。
その点でも、無言勢というプレイスタイルはうってつけでした。
最初は主に無言勢向けのイベントにお世話になりながら、フレンドの輪が広がっていき…そして気がつけば、Qvペンで鏡文字が書けるようになっていて、ユーザーランクもいつのまにかTrustedに!
2.無言で過ごすなかで、戸惑いや不安に感じたことはありますか?
無言勢のコミュニティにいる時は気になりませんが、そうでないコミュニティの場合、「コミュニケーションは音声を介するもの」という前提をみんな無意識に持っていることがあります。鏡文字の筆談で一生懸命会話に混ざろうとしても、そこに居ないものとして会話が進んでいってしまったり…
たいていはその後、無言勢というプレイスタイルを認知してもらえ、会話に混ざれるようになるのですが。有言勢のコミュニティに一人で入っていくのは、やっぱりしり込みしてしまってましたね。
Qvペンのないワールドにいきなり連れて行かれちゃったりもしますし。(マイノリティに配慮してほしい、という文脈ではありません。単に自分にとっての心配事が一つ増えるという意味で)
3.声あり・なしをどう切り替えて使っていますか?
基本的には周りに合わせています。 有言勢のコミュニティにいる時は声あり、無言勢のコミュニティでは声なし、混在しているコミュニティでは会話の相手に合わせる、といった感じです。
会話の輪の中にいる時は、同じコミュニケーション手段を使った方が、テンポが合うのでスムーズに入っていきやすいと感じますね。
ちなみに混在している場所では、無言勢として知り合った人たちにも自分の声を聞かれることになります。私は特に意識していませんが、「はじめてへるさんの声を聞いた!」って反応してもらえたりすると、ちょっと嬉しいです。
難しく感じたことは特にないですが、相手も自分と同じ方針(相手によって使い分け)だった場合、声でいくか鏡文字でいくか迷うことになります。
4.無言勢として得られたもの、そして今も課題と感じていることは?
大きな収穫だったと言えるのは、「無言勢」というアイデンティティを最初に持つことができたこと、ですね。
もしVRChatという大海にいきなり漕ぎ出していたら、わけもわからないまま潮に流されたり、座礁してしまっていたかもしれません。(いろいろな恐ろしい噂を聞きますよね…)
無言勢という"入江"の中で、まず安全に経験を積めたおかげで、うまく軌道に乗ることができたと思います。
そしてなにより、「無言勢」という共通項を仲立ちにして、たくさんの人たちと仲良くなることができました。
課題だと感じるのは、自分自身の無言勢としての表現力をどう高めていくか、ですね。周りにはパントマイム的ジェスチャーでいつも楽しませてくれたり、漢字交じりの読みやすい鏡文字をすらすら書いたりといった、つよつよ無言勢がたくさんいます。
自分自身も周囲も楽しく過ごせるために、そういった相手本位のコミュニケーションの能力を磨いていきたいところです。目下のところそれが自分の弱点でもあります。
5.同じように悩む人へのメッセージをお願いします。
私自身も無言勢を1年近く続けてから、ボイチェンを使い始めました。初めて声で話すときは、やはり勇気がいりましたね。
それでまずは信頼できるフレンドさんのところに行って声を聞いてもらいました。何度か話しているうちに、声のコミュニケーションでも大丈夫という安心感が生まれてきて、そのうち抵抗もなくなりました。
もし迷っているのなら、信頼できるフレンドさんの前で、とりあえず声を出してみては。そして自分が無言でいたいと思った理由、声を出したいと思ったきっかけ、その辺りを振り返ってみれば、自ずとその後の方向が定まると思います。
無言/有言の話に限らず、VRChatでは「自分が楽しめること」が何よりもまず大切だと私は考えています。(自分だけが楽しめる、ではなく、周囲も含んで自分が楽しめること)
ぜひ自分に合っていると思えるコミュニケーション手段で、交流を楽しんでいってほしいです。
最後に触れておきたいのですが、私はボイチェンで話すようになった今でも、無言勢のコミュニティにいると「実家のような安心感」があります。
これからまた変わるかもしれないですが、私にはやはり無言勢というコミュニケーション手段・プレイスタイルが合っているのかもしれません。
インタビューを通して
今回ご紹介した三人の声は、無言勢という在り方の一端にすぎません。
無言でいる理由、無言でいることへの向き合い方は、当事者それぞれに異なります。
私は長くこの界隈を観察してきましたが、どの選択にもその人なりの事情やこだわり、日々の工夫があることを改めて確認する形になりました。
無言でいることが、その人の安心や自己表現の手段になっている場合もあれば、必ずしも最初からそうではなかったということもあります。
コミュニティのなかで自分に合ったスタイルを模索し、時には有言・無言を切り替えながら過ごす方も少なくありません。
そして、筆談や身振り、あるいは空気感のような間といった、声に頼らないコミュニケーションの豊かさは、単なる代替手段にとどまらず、それぞれの関係性や空気感をつくり出していると感じています。
今回のインタビューでは、無言勢という枠組みの中に個人の持つ事情による声を使わないからこそ現れる工夫や戸惑い、そしてそのままの自分でいてよいのだという実感。
これらは、界隈に関わる多くの人に共通するテーマでもあるでしょう。
無言勢に限らず、今後も各個人によりさまざまな立場や考え方があるはずです。
筆者自身、理解者・観察者の立場として、無言勢であることの多様な姿や、変わりゆく日常の記録を続けていきたいと考えています。
この文章が、無言勢という存在をより広い視点で考えるきっかけの一つになれば幸いです。
誰もが自分に合った距離や方法で、安心してコミュニケーションできる場が広がっていくことを願ってやみません。
おわりに
さて、ここまでの読了ありがとうございます。
今回の記事は、以前のインタビューの第二弾というかたちになりました。
無言勢としての日常や気持ちについて、等身大の声を届けることができたなら、それだけでも協力いただき、noteとして投稿できてよかったと感じています。
筆者自身も無言勢として過ごす中で、いろいろな言葉をかけられることがありました。
その度に、自分の居場所を確認しながら誰かとつながる日々を重ねてきたように思います。
気がつけば、無言勢という小さなコミュニティの中に安心できる空気や、肩の力を抜ける瞬間が増えていました。
でも、本当は有言・無言という分け方だけでは語りきれない部分が、誰の中にもあるのではないでしょうか。
話すことも、
黙ることも、
誰かと同じ空間を共有するという意味では同じはずです。
好きなアバターで遊んだり、
言葉にならない気持ちをやりとりしたりする中で、
私たちはそれぞれに小さく居場所を見つけていくのだと思います。
ケモノアバターでも、男性アバターでも、無言勢でも、有言でも、その違いはほんの一部でしかありません。
大切なのは、どんなかたちであれ自分が安心できる関係や空気を大事にできること。
先ほど述べた界隈が分け隔てなく、差別なくこの世界で肩を並べていられること。それがこの場所の良さだと、私は信じています。
この文章が、誰かの心にそっと残るものになれたなら、それだけで十分だと思っています。
もしよろしければ、あなたの声や思いも、どこかで教えてもらえたら嬉しいです。
無言勢で活躍されている方の体験や日常は、他の記事でもご紹介しています。そちらも、気が向いたときに覗いていただけたら嬉しいです。
もしこの記事があなたの心に残るものになったなら、「スキ」やX(旧Twitter)での感想や共有をいただけると、これからの記事作りの力になります。
またどこかでお会いできる日を楽しみにしています。
