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「鍵のない夢を見る」辻村深月

第147回直木賞受賞作。
辻村さんはなんて振り幅が広い作家さんなんだろう…と思う。

「かがみの孤城」や「ハケンアニメ!」「スロウハイツの神様」など学校や仕事現場を舞台にした心温まる作品たちもあれば、「ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。」や「盲目的な恋と友情」など女たちの、生々しい感情や人間くさい部分を抜き出して描くドキドキした作品もある。

今回の「鍵のない夢を見る」は後者の方で、
何度も頷いたり唸ったりしながらあっという間に読んでしまった。

女はどうしてこんなにもダメな男に惹かれてしまうんだろう、と思う。思いつつ、心の隙間にスッと入ってきたその時の優しさや、ちょっと他の人とは違う怪しい魅力に引き込まれる気持ちも分かる気がする。この絶妙な加減が「この主人公たちは全然だめだ!」と言い切れず、うっすら共感さえしてしまいそうになる。それが怖い。そして面白い。

短編集で、色んな立場の人たちが出てくる。
既婚者、未婚者、子供、母親。
どれも面白かったけど、個人的には「石蕗南地区の放火」が印象的だった。
合コンで知り合った冴えない男と放火現場で再会する女の話だ。30代の結婚に対する気持ちや周囲の目、自意識と理想と現実が絡み合っていく様子はとてもリアル。
まるで誰かの心を覗き見しているような感覚は、辻村さんの作品ならではだと思う。

とても良かった。そしてまた他の作品も次々と読みたい作家さんだと改めて思った。

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