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黄金背景とは何か 〜光を描くということ〜What Is the Gold Background?— Painting Light —

私の作品には、黄金背景が多く用いられています。
なぜ黄金なのかと聞かれることがありますが、
それはきっと、
内面からあふれる光を表現したいという想いからなのだと思います。


私がテンペラと出会ったとき、最初に学んだのは
油彩とテンペラを組み合わせた混合技法でした。
油性の油彩と、水性のテンペラ絵具を、
薄いベールのように何層も重ねていくその技法は、
まるでビロードのような光沢を生み出し、
画面から静かに放たれる色彩の美しさに、深く魅了されました。


やがて私は、
イコンや初期ルネサンスの聖画に見られるような金箔表現に惹かれ、
天上の美しさを描きたいと思うようになりました。

油彩テンペラ混合技法の中で金箔を扱ってみましたが、
思うように内側から光るような輝きにはならず、
どこか拭いきれない違和感が残りました。


もっと、内側から光り輝くような黄金を表現したい。
その想いから探し続け、
私は「黄金背景テンペラ古典技法」にたどり着きました。


この技法では、油性の材料は一切使わず、
卵黄メディウムと顔料のみで描いていきます。
色を一つひとつ自分で作るという作業は、
チューブから絵具を出すことに慣れていた私にとって、
最初は戸惑いの連続でした。
けれど、卵と水から色を生み出していくその過程は、
どこか原始的でありながら、
中世から受け継がれてきた
「絵を残したい」という純粋な祈りに触れる時間でもありました。


板の上に幾層にも色を重ねていく工程の中で、
私は次第に、
そこに流れる静かな精神性と、
祈りのような美を感じるようになりました。


黄金背景は、赤ボーロという粘土と膠を混ぜた下地を
幾層にも塗り重ねた後に金箔を施し、
メノウ棒で丁寧に磨き上げていきます。
その一つひとつの工程には、
イコンの画家たちの祈りや、
ルネサンスの画家たちが積み重ねてきた歴史が宿っているようで、
自然と身が引き締まる思いになります。


磨き上げられた金箔は、
まるで天上の光のように、静かに、そして確かに輝きます。
それは単なる装飾ではなく、
目に見えないものの存在を感じさせる、
神聖な光です。


私はその光を、
魂の光だと感じています。


人は誰もが、内側に光を持っている。
けれどその光は、ときに見えなくなってしまうこともある。
だからこそ私は、
その光を思い出すための絵を描きたいと思うのです。


黄金背景は、
その光を象徴するものです。


その後、金箔の表現は、
和紙と組み合わせたり、
日本画の技法である砂子筒を取り入れたりと、
さまざまな変化を重ねながら広がっていきました。


それでも変わらないのは、
光を描きたいという想いです。


もし作品を通して、
その静かな光を感じていただけたなら、
それ以上に嬉しいことはありません。
 
 
 
私の作品には、よく「黄金背景」が使われています。
初めてご覧になった方からは、
「なぜ金なのですか?」
と聞かれることも少なくありません。
けれど私にとって、この黄金は
装飾ではなく、“意味”そのものなのです。


黄金背景は、ルネサンス以前の宗教画に多く用いられてきた技法です。
そこに描かれていたのは、
目に見える現実ではなく、
“神の世界”や“永遠”でした。
つまり黄金は、
この世界を超えた「光」を表すものなのです。


私がテンペラ画を描き続けている理由も、
この「光」にあります。
卵テンペラという古典技法は、
幾重にも薄く絵具を重ねていくことで、
内側から発光するような透明な輝きを生み出します。
そこに金箔を施すことで、
現実の光とは異なる、
静かで永遠性を帯びた光が立ち上がります。


それは、強く主張する光ではありません。
どこまでも静かで、
けれど確かに存在している光。
祈りの中で感じるような、
目には見えないけれど確かにあるもの。


私はその光を、
「魂の光」だと感じています。


人はそれぞれに、
内側に光を持っていると思います。
けれど日々の中で、
その光を見失ってしまうこともあります。
だからこそ私は、
絵の中にその光を描きたいと思うのです。


黄金背景は、
その光を象徴するものです。


それは遠い世界のものではなく、
本来、私たち一人ひとりの中にあるもの。


もし作品を通して、
その光を感じていただけたなら、
それ以上に嬉しいことはありません。


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